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いつでもやり直せる

マンガ『島さん』がめちゃくちゃ良かった。

深夜のコンビニで働くおっちゃん・島さんが主人公。彼を中心に描かれる人間模様が、人間くさくて泥くさくて、やさしさに溢れていて、とにかくすんばらしい。このご時世も相まって、やたらと染みた。

この中に、「ヤネさん」というエピソードがある。善悪が揺らいでしまうような「どうしようもなさ」と、それをも包み込もうとしてくれるやさしさに心がかき乱されて、お気に入りのひとつだ。この話を読んで、「やり直す」ことがすごく難しい世の中を生きていることに気づかされた。

「何かを始めるのに遅いことはない」

なんて話をよく聞く。しかしこれはあくまで、何かをゼロから始めることについてであって、「何かをイチからやり直すこと」についてはまた別の話のような気がする。例えば、かつて失敗したりだとか、挫折したりだとか、タイミング的にやめざるを得なかったりだとか……そうして一度離れたものをまたやり直すのって、ものによるが、なんだかすごく難しいイメージがある。

それがナゼなのかを考え始めたら、国民性とか教育とか歴史とか世情の話になりそうなので避けるが、とにかく失敗や間違いをしてもやり直せる世の中であったらいいなあと思う。「うまく生きなきゃいけない」みたいな呪縛がなくなったらいいなって。なにせわたしもその呪縛がかかった人間のひとりだという自覚がある。だから、最後のほうの島さんやオーナーの言葉は、救いであり希望であり、願いでもあった。

『島さん』は、ままならない日々を包み込んでくれるやさしさに満ちた作品だった。うまくいかないこともどうしようもないこともあるし、失敗することなんて数えきれない毎日だけど、それでもまあ大丈夫だろう、もう少しがんばってみようかな、そんな風に背中を押してくれる作品だった。今を生きるわたしたちへの応援歌のような作品だった。

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