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大丈夫


十七の時、プツンと音がしました。

真っ赤な滴が落ちました。

ふと手のひらを見ると、血だらけだったんです。

大丈夫、大丈夫。休んじゃいけない。
止まっちゃいけない。まだやれる。

そう言い聞かせながら私は、
棘でいっぱいの ささくれた胸を
無理やり撫で下ろしていた様なのです。

耳を塞ぎたかった。目を閉じたかった。

そうして世界から孤立して、
未来を切り放すことでやっと、
息をつないだ。おかしいでしょう。


そんな時、私を見つけてくれたのが彼。

血みどろの手を取って、握って、
じっくり待っていてくれたのが彼。

「隣にいるよ。」
「何も恐れることはないから。」
「僕の声を、まず聞いて」
「目を開けてごらん。」
「ほら、きれいだろう。」
そうして、棘をゆっくり溶かしてくれました。

私が何度暗い波に隠れても、
懲りずに見つけ出してくれるのです。

涙が溢れなくなるまで、そっと背中を温めてくれるのです。

急かすこともせず、甘やかすこともなく、
ただ彼のまま、彼として、彼を見せてくれるのです。

それがどれほど、エネルギーの要ることか。

忍耐強く、大きな愛で包んでくれたのです。

あたたかかった。感謝しています。

私も何か、お返しできるでしょうか。