アースダイバー神社編
"由緒の古い有力な聖地には、このような『原宗教』『前宗教』『宗教』の三要素からなる多層構造が保存されている。そのため聖地学を実践するためには、多層構造を縦断することのできるアースダイバーの方法が必要なのである"2021年発刊の本書は地形ブームに貢献した人気シリーズ『神社編』
個人的には、思想家・人類学者の著者による、しかし厳密なアカデミックさより【ある程度のフィクション性を前提にした】自由さが魅力の本シリーズ。『アースダイバー』『大阪アースダイバー』と楽しみ、最新作の本書も手にとりました。
さて、そんな『神社編』と名付けられた本書は、まず第一部でオーストラリア・アボリジニーや、伊勢神宮を例に由緒の古い世界中の聖地には『原宗教』『前宗教』『宗教』の三要素からなる【多層構造が保存されている】とした上で(=なので、学ぶには諸分野を縦断して考えるアースダイバーの手法が必要)続く二部、三部では『縄文系神社』として、大日靈貴神社、諏訪大社、出雲大社、大神神社。『海民系神社』として、倭人の『はじまりの場所』対馬神道、稲作に関わる倭人グループのアヅミ族の神道として志賀神神社、穂高神社他、伊勢湾は神島のゲーター祭を自由自在に【フィールドワークの実践を通じて考察、物語っている】わけですが。
まず、少しでも歴史をかじった方なら周知の通り、過去より時代が新しくなるにしたがって文明が【右肩上がりに優れるわけではない】わけですが。本書ではそれを踏まえて考古学的に縄文文化と弥生文化を『土器の様式』で分けるのではなく『エネルギー様式の違い』縄文文化は『総量一定の循環型』弥生文化を『利潤・増殖型』として分けているのに目から鱗的に驚き、【新鮮な歴史の『眺め方』】として強く印象に残りました。
また『神社』というわけで、関西在住者としての先入観からか。てっきり奈良や京都の有名神社が出てくるのかと思いきや【大陸からの仏教伝来前】数万年前の『縄文の海』にイマジネーション豊かに想いを馳せる著者の視点には全く入っておらず(=触れられてもおらず)当初はこちらも意外でしたが、読み進める内にむしろ歴史の【余白を埋めてくれたり、新たに繋げてくれる】ような満足感を覚えました。
テレビ番組『ブラタモリ』のような地形散歩『まちあるき』好きな方、あるいは歴史や文明『聖地』考察好きな方にもオススメ。
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