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白河夜船(吉本ばなな・1989年)~向こうの世界とのはざまで

2004.03.19 Friday
タイトルどおり、うとうとと眠ってばかりいる女の子の話。

この人の作品には、よく「死後の世界に行ってしまった人」や「現実との狭間」が出てくる。いわゆる「奇妙な世界」に入り込んじゃった、みたいな話が多い。

この本には、「白河夜船」「夜と夜の旅人」「ある体験」の3つの中篇が収められている。
全部に睡魔に襲われている人と、酔っ払いが出てくる(笑)
覚醒していない状態にあるときの人間は、はからずも、あの世との境の扉を開いてしまっているのかもしれない。

主人公は不倫の恋をしている。相手の妻は植物状態。
いつか2人が一緒になれるとしたら、それは妻が亡くなるときなのだろうか。意識のない女性を裏切り、死を望むことは彼女を罪悪感にさいなむ。

追い打ちをかけるような親友の死。

現実から逃げるように、主人公はひたすら眠り続ける。

強い悲しみや、どうしようもない無力感に襲われたとき、底の見えない深い苦悩の沼に落ち込むとき、人はどこかに逃げ場を探そうとするのかもしれない。

わかりやすいのは、お酒や薬物に逃げること。それと同じように、眠りに逃げ場を求める。でも、逃げてもどうにもならない。

どんなに苦悩しても、朝日は昇り、紫に空を染めて日は沈む。

どんなに苦悩しても、花は咲き、鳥は春を告げて高らかに鳴く。
どんなに苦悩しても、美しいものを見れば、心が震える。
それが生きると言うことだから。


この本、いろんなバージョンがある。ベネッセのハードカバー、単行本、角川文庫、新潮文庫、幻冬舎の電子書籍。

これは角川文庫版のカバー

コチラ文庫

出版社 ‏ : ‎ 新潮社 (2002/9/30)
発売日 ‏ : ‎ 2002/9/30
言語 ‏ : ‎ 日本語
文庫 ‏ : ‎ 194ページ

Kindleはコチラ

出版社 ‏ : ‎ 幻冬舎 (2013/10/26)
発売日 ‏ : ‎ 2013/10/26
言語 ‏ : ‎ 日本語
ファイルサイズ ‏ : ‎ 1142 KB
本の長さ ‏ : ‎ 151ページ

なんと、ハードカバーがまだ売っているのに驚き!

出版社 ‏ : ‎ ベネッセコーポレーション (1989/7/1)
発売日 ‏ : ‎ 1989/7/1
言語 ‏ : ‎ 日本語
ハードカバー ‏ : ‎ 211ページ

ベネッセでの文庫版(福武文庫)のカバーはコチラ

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