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映画『アトランティスのこころ』

2007.03.17 Saturday

素敵な映画です。
『スタンドバイミー』(1986)『グリーンマイル』(1999)と同じ匂いのする映画だと評判の一人の少年の成長物語。

「幻の国(アトランティス)は大人になれば消える」という老人テッドの言葉通り、キラキラと輝く、二度とは戻れない儚い子ども時代を描きます。

わたしはちょっと違った視点から見てみました。わたしの心に残ったのはこの少女でした。 

ミカ・ブーレム演じるキャロル

わたしは主人公ボビーのガールフレンド・キャロルが、なんて素敵な女の子なんだろう、と彼女の言動のひとつひとつにしびれまくっていました。

まだ11歳の女の子なのに、ボビーをいたわり気遣う姿は、成熟した大人の女性でもかなわぬほどです。きっと未成熟なボビーの母親と対比させる意味で描かれているのでしょうが、それにしても素敵過ぎます。

初めてボビーにキスされたとき、最初は彼女はちょっと怒ったような様子。
でもボビーの
「キスしたいのかと思って・・・」
というちょっと子どもっぽい言い訳を聞いて
「もう一度キスして」
と自分からキスをねだります。

バツの悪い思いだったボビーの心はどんなに救われたでしょう。

そして、好きだと告白しようとするボビーの言葉をさえぎり
「わたしもあなたが好きよ」
と言うキャロル。

彼女はボビーが自分を好きなことなど、当然わかってるのです。そんなことをわざわざ男の人に言わせない。

少女が、そして大人の女性の多くが、いかに相手の気持ちを言葉で引き出そうとするか、そしてつまらない駆け引きのために自らの気持ちを伝えられずにいることか。

多くの恋愛本に書かれた言葉「男性に自分から好きだと言ってはいけない」
に振り回されている女性から見るとすれば、彼女のこの態度は実に潔くまぶしいほど。

もしかしたらそれは、純粋な少年少女の恋だからできること、なのかもしれません。

彼女のことは、映画の本筋からは、ちょっとずれてしまうので、このあたりで。

物語の本筋は、身勝手な母親と暮らす11歳の少年と、不思議な力を持つ老人との心の交流。

不思議な力を持ちながら、決して不気味ではなく、運命に翻弄されながらも、人生をあきらめず、人に対して温かい気持ちを持ち続けることを忘れない、そんな老人を、アンソニー・ホプキンスが素晴らしく演じています。

レクター博士とこの老人を、顔の表情だけで別人のように演じることができるのってすごいです。

DVDに収録されている彼のインタビューによれば、演技をすることとは、リラックスすることなのだとか。演じよう、と力が入ってしまっては、自然に演技をすることなどできない。

そう聞くと、それは数々の経験を経て円熟した末に到達できる段階なのかなぁという気がします。

ホプキンスによれば、今回競演したアントン・イェルチン(ボビー)も、ミカ・ブーレム(キャロル)も、すでにそれができているそうです。

自分が彼らの年頃には何もできない子どもだったのに、と率直な言葉でインタビューは締めくくられています。

ひと夏の経験で、少年から大人へなっていく、そんな物語は数多いですが、中でもこの作品は珠玉の名作であると言い切っても過言ではありません。

この作品は原作者のスティーブン・キングの少年時代をモチーフにしたものだとか。原作「アトランティスのこころ」は5つの中篇から成る作品で、その中の一部が映画化されたのが本編なのだそうです。いつか読破してみたいなぁ。 


『アトランティスのこころ』(原題: Hearts in Atlantis)はアメリカの作家スティーヴン・キングが1999年に発表した小説である。本作は5つの中短編より構成され、登場人物、場所、出来事などが密接に絡み合い、時系列上に進行してゆく。

本作は(キング自身も属する)ベビーブーマー世代のアメリカ人の人生について書かれている。

2001年に映画化。 映画は、原作の「1960年 黄色いコートの下衆男たち」、「1999年 天国のような夜が降ってくる」をメインプロットに用いている。

主人公のボビーは原作とは異なり、カメラマンになっている。また、『ダーク・タワー』に繋がる要素は全面的にカットされており、物語は作品の中で完結する。本編約101分。

米国ではMPAAによりRG-13(年齢制限はないが13歳未満の入場には保護者の厳重な注意が必要)の指定がかかっている。

アトランティスのこころ Hearts in Atlantis
監督      スコット・ヒックス
脚本      ウィリアム・ゴールドマン
原作      スティーヴン・キング
製作      ケリー・ヘイセン
製作総指揮    ブルース・バーマン
       マイケル・フリン
キャスト
テッド・プローディガン - アンソニー・ホプキンス(阪脩)
ボビー・ガーフィールド(少年時代) - アントン・イェルチン(田野恵)
ボビー・ガーフィールド(大人時代) - デヴィッド・モース(土師孝也)
リズ・ガーフィールド - ホープ・デイヴィス(藤貴子)
キャロル・ガーバー、モリー - ミカ・ブーレム(川上とも子)
音楽      マイケル・ダナ
撮影      ピョートル・ソボチンスキー
       アレン・ダヴィオー
       エマニュエル・ルベツキ
編集      ピップ・カーメル(英語版)
配給      ワーナー・ブラザース
公開      アメリカ合衆国 2001年9月28日
       日本 2002年5月18日
上映時間     101分
製作国      アメリカ合衆国 オーストラリア
言語      英語
製作費      $31,000,000


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