あかん。オカンにきゅんとしてもーた。(私のオカンは毒親か#4)
涙目で言うから。
今朝、オカンの家に行くと(現在、隣りに住んでいる)朝の連続テレビ小説を見ていた。唯一オカンが欠かさず見ている番組である。そこでオカンは私を見上げて言った。
きゅんとしてまう。
あかんあかん。きゅんとしている場合ではない。ここでは、オカンが毒親かどうかを検証していく場なのに。
私はチラ見程度でも大体の話の流れは理解できるし予想もつくが、オカンは全く覚えられないし顔の区別もついていないようで、ただただ大昔からの習慣でテレビをつけ、チャンネルを合わせて見てしまっている。認知症になってからは特にボ――ッとテレビを眺めているだけだ。昔はよく映画を観たりドラマを録画して涙していたのに、今は違う意味の涙を浮かべ訴えてくる。
「少し見ない間に、テレビで見る人が皆な知らない人になってしまった。」
いやいやいや、私よりテレビは見てるけどね。でもそうだな、何年か後には私も同じことを言うのだろう。認知症の人は記憶することが出来ない。連続ドラマなど理解できないのもあたり前かもしれない。そんな切ない思いを巡らせる殺傷能力の高いオカンの一言が、私をきゅんとさせた。
だからって検証はやめないからね。
ここでまたオカンに引っ張られる訳にはいかないので、泣こうが喚こうが、筋トレをさせ(筋肉を)いじめ抜いておいた。
さて、
オカンはダメ男と二度も結婚し、一度目なんて夜逃げして裁判を起こし離婚したと言う、割と壮絶な離婚劇を繰り広げたのだが、二度目の結婚(私の父親)でも、相当なダメ男、しかも悪魔のような姑つきを選んだ。
そしてその愚痴や恨みをこんこんと場所も日時もこちらの事情もお構いなしに私にぶつけてきたのだが、それ以外のことも全て私に話す人だった。母親と娘によくある関係だが、それこそ親友のように経験したことや日常に起きたささいなこと、そして恋愛までもな―――んでも話す関係であった。
異常な母娘関係
今思うと、異常だったと思う。特に恋愛話については。
だってね、オカンの恋愛話は悲惨6割失敗4割という、決して甘くもロマンもない、同情しか湧かない話ばかりだった。それを小学生が聞かされているわけだ。もう、橋田寿賀子ワールドを脚本無しでやり遂げたという感想しかない。まさに美人の無駄遣い。それを無垢な私にべらべらとしゃべるオカンと、真面目に聞いていた私は、異常としか言いようがない。
ここで、オカンの恋愛話に出る台詞のトップ3を発表すると。
第3位 「自分からは好きにはなれない。好きと言われたら可哀想になって好きになってしまう」
第2位 「みな私を遠目から見て来るだけ」
いや、みなさん、腹立つのは分かります。おまけにこれ美人が言うもんだから余計に蹴りを一発入れたくなりますが、次がもっとすごいんです。
第1位 「そもそも自分が美人だなんて一度も思ったことがなかった。もっと自信を持っていれば良かった」
はい、閉じないで下さい。いや閉じられても仕方なしのセリフですが、聞いてやって下さい。私はもうこれ小学生の頃から聞かされているので。嘘つけと言いたくなりますが、オカンは自分の母親から一度も美人と言われたことがないらしく、美人だとは気づかなかったそうです。へー(゚⊿゚)
80才になっても変わらない。
オカンは80を過ぎても、認知症になっても、上記の言葉を繰り返す。ロクな恋愛もせず、自分から恋い焦がれることもなく、ある日偶然に会った高校の同級生に熱く言い寄られて、結婚してしまった。それが一人目の旦那でありダメ男であり、働かず帰って来ずオカンの貯金を吸い取った男である。
ここでオカンは兄たち二人を抱えて夜逃げをするのだが、実は始めは一人で家を飛び出した。1才の長男と乳飲み子の次男を置いて。自分だけ。ひどいよな。まあ、言い訳として同居する舅と姑が息子たちを取りあげ、オカンにほとんど触らせなかったらしい。
それでも息子を置いて出て来た鬼畜母となりかけたのであるが、オカンは一カ月も経たず耐えられなくなり、やはり子どもを取り戻したい!と決意した。そこで相談したのが、妹の夫である。
ここでやっとご登場だが、オカンの妹の夫(私からすると伯父)は、一流企業の社長まで登りつめた人だ。若い頃から貫禄があり、親戚一同そう簡単に話しかけられない、家族からも尊敬の念を一身に受けたすごい人だった。
そしてオカンは、実は、この妹の夫に恋をしていた。生涯ただ一人、想い続けた人が妹の夫だったのだ。
また長くなってしまった。次回は、一見「ロマンス満載やないですか」というオカンの唯一の恋い焦がれた妹の夫との話を書こうと思う。でもまあ素敵なロマンスにならないのが、オカンなのだが。
それにしても、やはりここまで娘にあけすけに話すオカンは、やっぱり毒親なのだろうなあ。親の恋愛話はきゅんとならんもん。
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