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きゅん♡とならない話。(私のオカンは毒親か#5)


筋トレの偉大さを知る。


オカンの毎朝の筋トレは続けているが、暑くなってきたせいもあり、休みを挟むようにした。すると、プールへ行くモチベーションも減ってしまった。泣こうが叫ぼうが鬼のような筋トレをし、どんな山を登ったと聞きたくなるくらい心拍数を上げ、その後しばらく動けなくなり「さむいさむい」と遭難したようにミノムシになっている日の方が、午後自らプールに行き泳いでくる。

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マジ。



やはり朝の運動はその後のモチベーションを上げ、一日をさわやかにする力があるようだ。本当は早朝散歩をして欲しいが、そこまでつき合えないし、プールに行けと言うと「私の知っているコーチがみんなやめてしまって、誰も私のことを見てくれない」と色ボケで返してきて、こちらを絶句させる。

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理想。


いくつになっても人の目は大事だし、身だしなみに気を遣うことをやめてはいけない。冬の買い物は大体パジャマ、コートを着れば分からない、という自分を省みて夏は面倒だと思う毎日の私。色ボケ上等、朝の筋トレを継続し新しい水着を新調してやろうと思う。

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現実。(兄が買ってくれたディップスタンド。家族公認の鬼トレ)


さて、誰も、私でさえも全く興味のないオカンの恋愛話の続きである。


今回の登場人物。

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オカンは妹の夫に恋をした。(生涯)


オカンの妹(叔母)はこれまた私と同じように、なぜ同じ遺伝子のはずなのにこうも違うのかとうなだれる容姿だった。自分の姉は誰もが認める美人なのに、とかなりのコンプレックスを抱えていたらしい。当たり前だ。かわいそーに。気持ちは痛いほど分かる。(叔母が私に言うセリフだが)


この世は美人が得をする。


一緒にいれば痛感する。まず同じ行動を取っても美人は優しく対応してもらえる。えげつないほど態度を豹変させる人もいる。となりに妹がいるにも関わらず鮨屋の店主はオカンにだけかなりのサービスを施し、妹のことを完全無視したらしい。大昔の話だとしても信じられない。でも事実だ。世の中そんなもんさ。ちゅらいな。

そこでオカンがだよ、妹をかばって怒ったりとか、その店を出て行けばいいものを、それもせずニコニコと受け入れていたのだから、妹からの恨みも倍になる訳だ。分かる。痛いほど分かる。オカンはそういう人。お人好しだからか知らんが、妹や娘が隣りで蔑まれているのに、気づかずにいつも笑っている。そこが私たちは許せないわけだ。

それでも妹(叔母)はオカンと仲が良い。しょっちゅう長電話をしてお互いを励まし合い、一緒にご飯を食べては慰め合っていた。生活に余裕が生まれてくると旅行にもよく出かけていたし、私も何度も連れて行ってもらった。叔母も私も同じだ。オカンに対して腹の立つことが山のようにあるが、オカンを嫌いになれずに大好きなままであった。


高卒だが大手銀行に就職し異例の出世をしたオカン。


これはオカンの最大の自慢話だ。何度聞かされたことだろう。オカンは毒親かと疑うのは、夫や姑の愚痴を幼少の私に浴びせてきたことに原因があると思い検証しているのだが、その恨み節の愚痴のなかに、自分の自慢話を上手いこと入れてきてもいた。



自分は決して美人ではない、美人だとは知らなかったと、身内以外は蜘蛛の子を散らすパワーワードを平気で言うオカンだが、大手銀行に就職が決まり初めての入社式で最前列のど真ん中に座ったら、社長の目にとまり人事部に配属されたという、いくら昔だからと言って調子にのんなよ話を散々子どもたちに聞かせていた。

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オカンは同じ話を何十回と繰り返し、それを三倍していることになる。


オカンはそうして大手銀行へ就職し上司から可愛がられていた2年後に、上場企業の事務職に妹は就いた。妹(叔母)はもんすごく計算が速くて、経理をしていたらしい。


その妹が大逆転を成し遂げた。


ここからオカンの悲劇は始まる。妹はその会社で出会った人と婚約をしたのだ。まだ殿方とまともなお付き合いをしたこともないのに、妹が先に婚約したオカンは相当焦ったらしい。確かにその時代では無理もない。しかも、だ。

妹に紹介された婚約者に、オカンは衝撃を受けた。


この世にこんな人がいるなんて(オカン談)。


その時の衝撃は相当なものだったらしい。妹の夫となる人は、背が高く恰幅もよく落ち着き払い、仕事に打ち込むインテリだった。話す内容も違えば、オカンの話にも静かに耳を傾けウィットにとんだ答えをくれる。今まで出会った男の人とは全然違う。こんな素晴らしい人がいるなんて。そしてこんな人と妹が結婚するなんて!!!!

オカンは地の底まで落ちた。まともに恋愛したことないしねー。


でも、ここからがすごいのだ。妹の夫は、お人好しの美人な独身のオカンを見つめて言ったのだ。     

「ぼくが必ずあなたにふさわしい男を見つけます」

キャ――――!である。もしこの話を友人から聞かされていたら、私はそう叫び小躍りしていただろう。しかし、いかんせん私は小学生だった。ただの耳年増になるくらいで当時はあまり理解できていなかった。

でもすごいことだ。美人パワーってすごい。オカンってすげえ、と改めて思い知らされる。フツーそんなこと、言う?妹の夫だよ?義理の弟にこんなこと言われて、しかも衝撃を受けるほどの初めて出会う素晴らしい殿方から、こんなこと言われたら、まんじりともしない夜が50日は続くし、100日後にはキュン死確実だ。

少なくとも私だったら天に召されて雲の上を歩くだろう。

でも、オカンは違った。オカンはその後クソ男と結婚をする。そう、妹の夫を裏切ることになるのだ。


誰も興味がないのに、つづく。


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