マガジンのカバー画像

【薄い本】

13
エロ同人とかはよく俗に『薄い本』と言われます。 そして、僕の小説は文章の厚さが『薄い』です。 つまりは、ちょっとえっちな小説書いてます。と言ってもやっぱりえっちじゃないものの方が…
運営しているクリエイター

#ネガティブ

【薄い本】クロノスタシス

【薄い本】クロノスタシス

『帰るの?』

ブラのホックを止めている途中のハルカが訪ねる。

『明日も仕事だしね。とっても名残惜しいけど帰るよ。』

そう言って彼女の額にキスをする。

『嘘ばっかり。』

『嘘じゃないよ。じゃあ、行くから。風邪ひかないように早く服着なよ。というかパンツ先履きなよ。』

『ユウキが脱がせたあとどっかに投げたんじゃん。いっつも投げるんだから、もう。』

四つん這いで下着を探すハルカを尻目に、じゃ

もっとみる
【薄い本】タイムカプセル

【薄い本】タイムカプセル

------------

『10年後のぼくへ
ぼくは今、11才です。10年後のぼくに質問です。
今、何をしていますか?ちゃんとプロのサッカー選手になっていますか?小野といな本といっしょにグラウンドに立っていますか?
まあ仮にだめだったとしても、サラリーマンになって会社につとめていることでしょう。
たぶんしょうやとずっと遊んでいると思うけど、20才を越えているなら、2人でお酒とか飲んでいますか?

もっとみる
追いかけあう手

追いかけあう手

この記事はnoハン会2nd小冊子企画に寄稿したものです。

ふーっと息を吹きかけ、手をこすり合わせる。
しばらく歩いていると、はらはらと雪が降ってきた。今年は例年より少し早い降雪。
折りたたんでいた傘をさし、コートのボタンをキュッと閉める。
バーか何かの曲がりくねったストローのようなネオンにはまだ明りはなく、CLOSEDの看板が傾いている。店の前の交差点で、赤いライトを無心で見つめる。

そんな、

もっとみる
【#同じテーマで小説を書こう】Das Spiegelzimmer

【#同じテーマで小説を書こう】Das Spiegelzimmer

Das Spiegelzimmer(ダス・シュピーゲルツィマー)
『鏡の部屋』

・・・

目が覚めると、鏡の部屋にいた。
前後左右、天井も床も全て鏡。
右を向くと、俺と目が合う。ずっと遠くまで、向かい合う俺と俺が無限に続いている。見渡す限り俺がいる。俺が腕をあげると、俺が一斉に手をあげる。
素足でひたひたと、目の前の鏡に歩きだす。鏡越しにそっと自分に触れる。冷たい。ずっと右向きに横たわっていたの

もっとみる
【薄い本】Rote Stöckelschuhe (後編)

【薄い本】Rote Stöckelschuhe (後編)

Ein Mensch nicht von einem Wolkenkratzer herunterspringen, ohne sich zu verletzen oder zu Tode zu kommen.

※こちらは【後編】になります。必ず【前編】からお読みください。

・・・

飛べない。飛べない。飛べ、ない。
何故?あれだけ待ち望んだ瞬間だ。何故飛べない。

飛ぼうとした。しかし、ど

もっとみる