見出し画像

本日記『星を編む』

ぴろです。

トロントにいるときからずっと読みたかった本を読んだ。傑作の続編はやっぱり最高に傑作だった。こんなに満ち足りた気持ちになれる小説、なかなかない。まさに星を編むように綴られた物語。

正しさだけじゃ守れないものを包み込む強さ
それでも溢れたものを掬い上げる優しさ
それぞれの幸せのかたち、つながりのかたち

ハッピーなだけの物語では決してないのに、ずっと幸せな気持ちで読むことができた。

この本は、前作『汝、星の如く』に出てくる「北原先生」の過去について語られた1章、そして前作のその後について2つの立場から語られた2、3章で構成されている。

みんながこの本を読めば救われるのでは?と思ってしまうほど、リアルで、優しくて、あたたかいお話だった。そして、私たちが生きる上で大切な、対極の、ふたつのことを、いろいろな立場や角度から教えてくれるお話だと感じた。

まず人は「個」であるということ。恋人でも、夫婦でも、血が繋がっていても、私たち人ひとりひとりは「個」であるという不変の事実。だから自分の中にある尺度は自分にしか当てはまらないし、それを他の「個」に当てはめてコミュニケーションをとることは、往々にして人を傷つける。個と個の境界線が曖昧になってしまうと、人間関係は破綻する。完全なる他者理解、は不可能であり、理解できないものは理解できないものとしてそのまま受け入れれば良いのだ。

一方で、人と人はつながるということ。つながるということは「救い合う」ということだと私は思った。人は人を気づかないうちに救い、救われている。それは家族とか友達とか恋人とかそういう名称に関わらないものであり、存在そのものであったり行動であったり言葉であったりする。そばにいるのにつながれないこともあるし、そばにいなくともつながっていることもある。そしてつながりは時を超え、つづいていく。
今作は煌めく糸のような人のつながりを見せてくれるお話だ。つながりの糸は織りなされ、やがて星になっていく。そういう意味でのタイトル、『星を編む』なのかなぁと、私は思った。
星を編むことは、人生そのものだ。

自分の生き方はどこまでも自分のもので、選び決めるのはいつも自分であるべきだ、ということを訴えつづけてくれた前作『汝、星の如く』

そして、

愛はどこまでもパーソナルなもので、愛の形も、名前も、つながり方も、それぞれだということ。愛は不完全なもので、歪んでいて、どうしようもない。だったら、好きに愛せばいい、ということを語りかけてくれた今作『星を編む』

見上げればずっとそこにある星のような、人生の縮図のような、優しいお守りのような本だ。


ぴろ

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?