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13歳からの地政学|田中孝幸

以前、大村大次郎の「お金の流れでわかる世界の歴史」を読み、高校生の時に習った世界史や地理をお金という別の視点で見ると新しい解釈で学べる経験をした。
(↓文章もわかりやすくとても勉強になるのでおすすめ!)

そこで、”地政学”これまで仲良くなったことはない学問分野で世界を見直す本書に興味を持って読んでみた。

本書は13歳からというタイトルからも窺える通り、13歳の妹と高校生の兄が”カイゾク”という渾名の年齢不詳の片目眼帯のおじさんから地政学を教わるという内容だ。
カイゾクは地球儀を回しながらさまざまな地点を指差して中高生の二人に7回の講義を行う。時には国から世界をみてごらん、と地球儀に顔をくっつけさせてその国から世界を見渡すように促す。そのようにして兄妹は世界全体から見た国同士の関係性や、国の位置が現在の政治のあり方に及ぼす影響を考察していく。

13歳から、と銘打っているが一通り義務教育が終わっている大人が読んでもとても勉強になる本だった。

特に面白かったのが講義2日目の「中国が南シナ海を欲しがる理由」である。
その答えは、中国の領域には核ミサイルを保存するための潜水艦が他国の目を掻い潜りながら潜り続けるための大きな海がないから、である。
核ミサイルの保存場所が海であることをこれまで知らなかった。しかしカイゾクの説明を聞くとその理由があまりにも合理的で、これまで思いつかなかったのが情けないほどであった。
そしてこの章を読むと、恐ろしいことに日本が核兵器を持つべきである合理的な理由が見えてしまう。日本は大きな海に囲まれており、核ミサイルを保存し隠し続ける海が充分に存在する。原子力発電所は作れるのだから核ミサイルを作ることは容易である。常に潜り続ける高度な潜水艦を作る技術もあるだろう(以前JAMSTECに遊びに行った経験からの私見)し、海からミサイルを発射する技術も不可能ではないだろう。また外交的な理由からも日本が大国であり続けるために核兵器を持つことに意味が出てくる。。
日本は被爆国であるために核兵器を持つことを固辞しているが、世界中の大国が核兵器を手放さないのであれば自衛のために持つ意味はある、そのように思えてしまう。

他にもクリミア半島、朝鮮半島のような半島が大国に侵攻されやすい理由や、他民族国家であるアフリカが民主主義に向いていない理由、新しい国のアメリカがここまで発展した土地的な理由など、これまで考えたことのない視点で世界を見直し、未来を考えることができる本である。
文章も非常に優しく、ストーリー仕立てなのですぐ読めてしまう。
世界情勢が不安定な今だからこそ是非読んでみてほしい。
ウクライナ侵攻もまた違った視点で考察できると思う。


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