なまえも夢みたいな町ユトレヒト
新千歳空港を出発して、羽田・香港と2回の乗り継ぎの末に、アムステルダムスキポール空港に着いたわたしはフラフラだった。
うっかり乗り継ぎ2回のフライトを予約してしまい、気づいた時には遅かった。そんなこと間違える?と思うかもしれないんだけど、本当は羽田を経由する予定はなく、新千歳ー香港ーアムステルダムで飛ぶ予定だった。間違えた理由はただぼーっとしていただけ。
今後行く先々で思い知ることになるが、わたしは肝心なところで詰めが甘い。
さて、ヨーロッパでヴィンテージアクセサリーの買い付けをして日本で販売しているわたしにとって、オランダは記念すべき初めての買い付け先になる。2018年5月のことだった。
ただいきなりの体調不良だしリサーチ不足ゆえに買い付け自体捗りそうもなかったので、切り替えて観光をめいっぱい楽しむことにしたのは正解だった。
わたしがオランダを訪れたのは2度目のこと。目立つ観光地やモニュメントは少ないけれど、おしゃれな雑貨屋やカフェがいちいち乙女心をくすぐってくる。店内も売っているものも建物もいちいちかわいいのだ。
買い付けは2018年の記憶ではあるけれど、思い出して綴ってゆこうと思う。今回はユトレヒト編です。
夢の町ユトレヒト
ユトレヒト。はっきり言ってこの名前だけでかわいい。ユで始まりトで終わるなんて反則級にかわいい。そんな名前の町が本当にあるのかと半信半疑だったが、果たしてその町はあった。
ユトレヒトはあまり主張せずさらりとした表情をしているくせに、気づいたら心が虜になってしまう、罪な町だった。
まず、町のいたるところにミッフィーがいる。
町中のサインがかわいい。
人々もさわやか
このように罪深いユトレヒトをたくさん集めて歩いていたら、やはり体調がよくないことに気づいてしまった。ただこの時点でまだ午前10時前。いったん無視をしてセントラルミュージアムへ向かってみることにした。
ここではモダンなダッチデザインの作品を楽しんだ。めちゃくちゃかっこいいので、日本でももっと人気があっていいのになあと思いつつ見学を楽しんだ。
館内は明るくて外のような清々しさ。平日の朝イチは人も少なく快適で、わたしは散歩をするようにゆっくりと歩みを進めた。
リートフェルトはユトレヒト出身で、ドイツまぼろしの芸術学校バウハウスを出ているデザイナー・建築家だ。
また、同じくユトレヒト出身でミッフィーちゃんの作者ディックブルーナさんの展示エリアには、日本からのメッセージなんかも展示されていてなんだかほっとする。
ちなみに、セントラルミュージアムの向かいにナインチェミュージアムという、ナインチェ=ミッフィーちゃんの博物館があるんだけど、こちらはどうやら小さい子どもたちが遊ぶ施設のようになっているらしい。
ミュージアムに向かうバスの中でも2歳くらいの子どもとお母さんが「ナインチェン。ナインチェン。」と歌うようにお話ししているのが聞こえてきて微笑ましかった。
お昼はミュージアムのカフェでサンドイッチをいただく。
美術館や博物館のカフェはだいたい店内の雰囲気も働いている人も良いので、とても信頼している。カフェだけなら入場料を払わなくても入れる場合が多いため、どこの町でも休憩場所に困った時はミュージアムのカフェをおすすめしたい。
続いて、見学を予約していたリートフェルトのシュレーダー邸へ向かった。
先ほど出てきたリートフェルトという建築家が建てたちょっとおもしろい家のことで、シュレーダー夫人とその子どもたちが住んでいた。ユネスコの世界遺産にも登録されてるようだ。(知らなかった)
1924年第二次大戦前の建物とは思えない、コンクリートに赤青黄の直線で構成されるモダンな外観。オランダの芸術運動デ・ステイルに代表される建築だそう。
シュレーダーさんちの子どもが、こんなヘンテコな家に住んでいることを恥ずかしく思って学校で隠そうとしていたというエピソードを聞いた気がする。いやいやめちゃくちゃかっこいいけどね。
特に二階の構造には感心した。大きな広い居間があるが、パーティションを設置すると3つの寝室に分けることができるという画期的なものだった。
また、一階のキッチンと二階をむすぶ食事用の手動エレベータも設置されており、外観のデザインだけでなく、実際に住む上での利便性がよく考えられた家だった。
ちなみに、事前に調べていた日本語のブログでは見学にカメラは持ち込めないと書いてあったので、カメラどころかスマホも全てコインロッカーに入れて見学に行ったら、他の見学者の人たちがバシバシ写真を撮っていて膝から崩れ落ちた。(いちおう著作権保護のために撮影は禁止されているらしいので、可否については現地でご確認ください‥)
見学には予約が必要。チケット予約はこちら。
https://tickets.rietveldschroderhuis.nl/nl/tickets
シュレーダー邸をあとにしたわたしは、ユトレヒトの町を散策した。
嗚呼ユトレヒトは夢のような場所だった。
5月、訪れた季節も良かったのだろう、おだやかな空気の中でひびく小鳥のさえずり、教会の鐘、太陽の光を浴びる人々、颯爽と駆け抜ける自転車。すべてが美しかった。
そんな、ふわふわした気持ちでアムステルダムに戻ったわたしは、本当にフワフワしていたらしい。Airbnbで予約していたお宅に着くと、熱があった。
宿泊先はみちこさんという日本人の女性がホストをしている宿で、アムステルダムから30分ほどの郊外にある。夜(とは言え10時近くまで明るい季節)、親切なみちこさんにバス停まで迎えにきてもらい、あたたかい飲み物をいただいてベッドに入ると、わたしはすぐにねむりについた。
それからこんこんと眠ってしまい、朝はとうぜん寝坊した。
ところで買い付けといえば朝早く活動してマーケットへ行く、というイメージがあるかもしれない。けど不精者のわたしは買い付けものんびりスタイルだ。
大規模なマーケットの立つ日など頑張って早起きをすることもあるけれど、基本的には動きたくありません、という体の要求には甘いわたしである。無理をすると楽しい気持ちも消えてしまうので、なるべく何でも我慢はしないように心がけている。
そういったわけでアムステルダムもだいたい寝過ごしていたら、そのかいあってか風邪は徐々に良くなっていった。
ユトレヒトは、心地よい空気のせいだろうか風邪をひいていたのに不思議と辛かった思い出はない。記憶の引き出しを開けると全てがふんわりとシャボン玉のように浮いてくる。まるで夢だったかのように。
ディック・ブルーナやリートフェルトのように色彩のはっきりしたデザインや、モダンなモニュメントが町中そこかしこに散りばめられているが、街自体は尖った印象がない。淡い緑が茂る公園や水の音、鳥のさえずり、木々が風に揺れる音、太陽を楽しむ人々‥そのコントラストこそがこの街を構成し、大きく優しく包み込んでいる。
そういえば東京に同じユトレヒトという名前の本屋さんがあって、アート系の本や作品を集めた、かわいいとかっこいいが凝縮したような店内だった。
本家(?)のユトレヒトもまさにかわいいとかっこいいにあふれる町だった。そこに住み心地の良さを連想させる自然の豊かさまでが調和し、ユトレヒトはわたしが住みたい町の5本の指にまで入ってしまっている。
アムステルダムはやはりもう少し都会でアヴァンギャルドな横顔もあるんだけれど、そこかしこを流れる運河の水や、木々のざわめきや明るい太陽の印象はかわらない。
次はそんなアムステルダムでの滞在を綴っていきます。風車を見たり、アンネフランクの隠れていた家へ行ったり、ハイネケンミュージアムへ行ったりしますよ。お楽しみに。
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