北朝鮮の工作員に間違えられて、海上保安庁に謝った話
こんばんは。
ふるさと納税が届き、12キロの鶏肉によって冷凍庫が占拠され、何も入らなくなりました。
どうしようこれ。。
今回は、投稿コンテスト応募作品です。
#想像していなかった未来
12年ほど前、私が17歳だった時の話。
当時私は、ヨット部というかなり珍しい部活に所属していて、夏休みの始めと終わりに1週間ずつ、泊まり込みの練習合宿をしていた。
夏、海、合宿。
青春エグゾディアは揃っているはずなのに。
この合宿は、青と夏とは程遠い、まさしく懲役1週間だった。
朝は5:30に起き、16:30まで紫外線の暴力に晒されながら、ひたすら海上練習。
練習が終わると、築40年のたこ部屋のような合宿所に帰って、ほぼ水のシャワーを浴び、夕食をとったあとはミーティングという名の2時間恫喝。
戦前か、戦後に置かれたのかも分からないような、不衛生極まりないきのこが生えそうな布団を敷いて、22:00には完全消灯。
ご飯は不味くて味噌汁の味がしないし、下級生は泣いて上級生は怒ってるし、今にも殺し合いが始まりそうな雰囲気が常に漂っていた。
いつかヨットに乗って、日付変更線の上で反復横跳びをするんだ〜という高い志をもって入部した私でも、この合宿は過酷だった。
事件が起きたのは夏休みの終わり、後半の合宿の最中だった。
普段合宿中は、「この地獄をなんとか1週間生き延びてやる!」それしか頭の中にないのだが、
大きな大会も終わり、次期キャプテンが内々定していた私は、比較的心に余裕があったからだろう。
恫喝2時間コースが終わった後に、「冷蔵庫の掃除をしよう!」と思い立った。
この冷蔵庫は、合宿中のご飯を作るための食材や、昼間の練習中に海上で飲むためのペットボトルを各自入れているのだが、中の不潔さは筆舌に尽くしがたかった。
ギリ、キャベツだったと分かる変死体。
賞味期限が5年前のマヨネーズ、ソース。
持ち主不明で放置されているペットボトル。
この辺はまだ綺麗な方で、元が何だったのか分からない暗黒物質が、冷蔵庫のそこここにこびりついていた。
いつもきったねーなと思いながら、ペットボトルを入れていた私も、改めて中を見て「お前…こんなに汚かったのか!」と戦慄した。
未知の暗黒物質を分別のしようもなく、手当たり次第ゴミ袋に放り込んでいくこと30分。
10Lのゴミ袋が大体埋まり、中のゴミとこびりついていた汚れも9割方綺麗になったところで、ふと気がついた。
このゴミどうやって捨てよう?
冷蔵庫に戻すわけにはいかないし、あのままだったら絶対病気になるし。。
考えても、妙案は浮かばず、時間はとっくに就寝時間を過ぎていた。
困り果てた私は、結局ゴミを海に投げ捨てることにした。(※絶対やってはいけません)
えっさほいさと岸壁までゴミ袋を運び、そこから海にゴミを投げ捨てる。これでゴミも海の底。冷蔵庫も綺麗になって、みんなハッピーだぜ。
と思ったのも束の間。
なんと捨てたゴミが浮いてきたのだ。
船もたくさん停泊している場所だったので、朝になってゴミが浮いてたら、問題になるかもしれない。
慌ててゴミを引っ張り上げ、仕方がないので艇庫の横にある茂みの中に不法投棄し直した。
アクシデントはあったが、これで部員の健康は守られた。めでたしめでたし。
時間も23:00を回っていたので、さっさと寝ることにした。
翌朝。
顧問の先生が「今日は練習中止だ。」と言った。
それを聞いて私たちは狂喜乱舞したが、続く言葉で私の顔色が変わる。
「ゴミを捨てたやつは、正直に名乗り出ろ。」
昨晩私がさっさと寝た後、顧問が夜間の見回りをした際にとんでもないものを見つけた。
岸壁から何かを引き上げて、引きずったような跡。
さらに茂みまで続く不審な足跡。
状況だけ聞くと、どう考えても北朝鮮の工作員が上陸して来たようにしか見えない。
すぐさま海上保安庁に連絡をして、深夜にも関わらず鑑識まで駆けつけ、見つけた不審なゴミ袋の中身に怪しいものがないか、よ〜く調べた結果
すぐそこで合宿してるおたくの学生さんが、茂みにゴミを捨てたんでしょう。
と事件を解決して帰って行ったそうな。
(ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。)
「今から海保に謝りに行くから車に乗れ。」
こうして私は、顧問にこっぴどく叱られ、海上保安庁の偉い方にごめんなさいしたのでした。
みんなの為に掃除したはずが、北朝鮮の工作員と勘違いされて海保に謝るという、#想像していなかった未来のお話でした。