教育観は一日して成らず【訪問:常石ともに学園】
福山市は常石ともに学園に視察に行きました。
福山市立の小学校でイエナプランスクールの認定を受けて教育活動を展開しています。
低学年1〜3年、高学年4〜6年でクラスが構成され、対話、ブロックアワー、ワールドオリエンテーションなどでカリキュラムが構成されています。
授業の実際
実際の授業風景を見学しました。
低学年のとある教室では1、3年生が教室の両端で大人からインストラクションを受けています。その部屋の中央付近では2年生が各自の課題を進めています。
廊下に必要なものを取りに出たり入ったりする人がいて、そのそばではうつ伏せになってテキストを読んでいる二人組がいます。
また近くにはカウンター下のスペースでPCを使っている人がなにやら作成中。
一見したところでも様々な姿勢で様々な内容を様々な方法で学習する子どもと、それを支える大人や仕組みがあることが伺えました。
ブロックアワーの時間中に、特定の学年だけ取り出す必要がある授業は別の部屋を活用して進めています。
ハード
校舎はもともと使っていたものをリノベーションし、ふんだんな木材と、造船のまちの趣を生かした無機質さ、開放感がミックスされています。
教室には黒板がなく、インストラクション場面ではホワイトボードが使われています。
壁面もパステルカラーに塗られている部屋もあり、図書館は絨毯敷で長まれるスペースもありました。
職員室はフリーアドレスとなっていて、職員が特定の机を使用していません。
不便さについて質問している参観者もいましたが、対話が生まれるという利点や、不便な点は工夫することで解決するということでした。
対話そして対話
先日の見学先でも同様だったが、とにかく地域・保護者と対話を重ねてきた印象を受けました。
・新たな学校としてスタートすること
・特徴的なカリキュラムを導入すること
・通知表を始め、抜本的に見直すことがあること
などなど、一方的な「説明」でなく、「対話」を重ねてきています。
時間をかけ、一足飛びにならずに準備を進めたから地に足がついた教育が実践できるし、子どもたちにも対話の文化を語りきれるのだろうと感じます。
教育環境を求めて移住
そしてやはりこちらも福山市に転居して子どもを通学させる方がいることがわかりました。
現在は動き出してまもないこともありますが、今後は定員を充足、抽選となってゆく未来が見えます。
働き方の柔軟さや流動性が増すほどこの流れは強まるはずです。
そして子どもの教育のために移住するという行動力のある保護者が地域に流入することは、その地域の産業やコミュニティにも新しい風が吹くことにつながることを改めて感じます。
福山市ではまだ把握するほどにはなっていないようでしたが、時間差でなんらかのムーブメントは起こるでしょう。
その意味でも学校経営や教師のあり方は今後の社会のあり方に強い影響を及ぼしているはず。
人事、教師教育、教員研修
とはいえ公立学校。
人事異動で創成期のメンバーがずっと留まることはできないし、他校、他地域から新たな職員が入ってくることからは免れないはず。
そこで、人事や教員の教育観形成について質問しました。
私としては、これまでの教師像からずいぶんことなる教師としての姿や振る舞いが求められると考えたからです。
しかし、質問をしたところ、校長先生が戸惑った表情。
曰く「特別なことをやっている意識はない」
福山市では2010年代中ごろから、福山100NEN計画の名で、全市を上げて目指す教育や子どもの姿を定めた〈基本理念〉を設定。
これに基づいて研修、学校づくりを推進してきたそうです。
常石ともに学園の学校運営は福山市の100か校のうちのひとつという位置付けで、そういう意味で「特別なことをしているわけではない」という言葉になったようです。
つまり職員が入れ替わることによるリスクをほとんど感じていないようなのです。
この点においては、教育委員会の方も校長も自信をもっていて、ローマのように、教育観は一日にして成らず、継続した実践、研修がものをいうのだなと実感しました。