行きずりのタクシー運転手と、記憶から剥がれ落ちる女たち
「お客さん、どこから?」
東京から特急電車で1時間ほど離れた先の地方。
その町で一番大きな駅から乗った個人タクシーの車内で、
10歳ほど年上に見えるドライバーから話しかけられる。
「東京ですよ」
タクシーに乗った際に行き先を告げたイントネーションで、
東京から来たに違いないと期待していたようだ。
運転手が「待ってました」とばかりに東京の思い出話を始める。
「東京で働いてたんですよ、自分も」
「へぇ、どの辺で?」
「品川、日本橋、京橋…、
いろんなところにいましたね。
調理