エッセイ | 前置詞の格支配と冠詞の役割
(1)「格」とは何か?
「格」とは、英文法で言うところの「主格」(~は)、「所有格」(~の)、「目的格」(~に、~を)の「格」のことです。
ドイツ語にも「格」があります。大まかに言うと、
「1格」(主格)が「~は」、
「2格」( 属格 [所有格] )が「~の」、
「3格」( 与格 [間接目的格] )が
「~に」、
「4格」( 対格 [直接目的格] )が
「~を」を表します。
つまり、英語の目的格は、ドイツ語の「3格」(与格)と「4格」(対格)を兼務していることになります。
さきほど、ドイツ語の「3格」が「~に」で、「4格」が「~を」と書きましたが、日本語の「~を」でも「3格」をとる動詞もあるので、3格が「~に」で4格が「~を」に当たるという説明は便宜的なものに過ぎません。だいたいは一致するのですが。
ところで、ドイツ語にも英語と同じように「前置詞」があります。
(2) 前置詞の格支配
英語の前置詞の場合、前置詞の後ろにおかれる名詞は基本的にすべて「目的格」です。「with him」とか「at me」のように前置詞の後ろにくるのは「him」「me」のように目的格だけですね。
それに対して、ドイツ語の前置詞の後ろにくる名詞は、「2格」「3格」「4格」のいずれかになります。
前置詞のあとにどの格が来るのかは、前置詞ごとに決まっていて、
「2格をとる前置詞」は「2格支配の前置詞」、
「3格をとる前置詞」は「3格支配の前置詞」、
「4格をとる前置詞」は「4格支配の前置詞」と呼ばれます。
このように、前置詞が決まった格をとることを「格支配」と言います。ドイツ語では、ひとつひとつの前置詞ごとに、どの「格支配」の前置詞なのか覚えなくてはなりません。
これだけ覚えるだけでも、英語に比べるとかなり厄介なのですが、さらに厄介なことには、ドイツ語には「3格・4格の前置詞」というものがあります。
ドイツ語の「格」の違いは、主に「冠詞」が担います。
たとえば、定冠詞(英語の「the」に相当する冠詞)は、
男性名詞ならば、der, des, dem, den、
女性名詞ならば、die, der, der, die、
中性名詞ならば、das, des, dem, das、
のように変化します。
(3) 3・4格支配の前置詞
3・4格支配の前置詞には、次のようなものがあります。
(*ここでは、3格を③、4格を④と表します)
in
③~の中で
④~の中へ
an
③~の際(きわ)で
④~の際(きわ)へ
auf
③~の上で
④~の上へ
unter
③~の下で
④~の下へ
おおよそ、3格が「~で」、4格が「~へ」と訳せます。
3格支配のときは、単に場所を表し、
4格支配のときは、動きを伴います。
Der Fisch lebt im Wasser.
(魚は水中に住む)
imは「in dem」の短縮形です。
この場合、「3格支配」。
Der Stein fällt ins Wasser.
(石は水の中へ落ちる)
insは「in das」の短縮形です。
この場合、「4格支配」。
英語の定冠詞「the」には「格の違い」を表す役割はありませんが、ドイツ語の定冠詞「der」「die」「das」には「格の違い」を表す役割があります。
結びに代えて
この記事では、英語とドイツ語を比較してみました。
英語とドイツ語とは、かなり近い言語です。
ドイツ語には「性の区別」や「格変化」があり複雑ですが、その代わり英語に比べると語順は比較的自由です。
逆に言うと、英語には「性の区別」「格変化」が乏しいため、語順が極めて重要になります。
英語では、代名詞を除けば格変化に乏しいため、格の違いを表す「語順」が死活的に重要だということです。
(参考文献)
「必携ドイツ文法総まとめ」(白水社)
「関口・初等ドイツ語講座(中巻)」(三修社)
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