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死の家のチェスの話
十二月を間近にひかえた今、私は人生の岐路に立っている。
「無人島に一冊だけ本を持っていけるとしたら?」
あなたはこの問いについて、真剣に悩み考えたことがあるだろうか?
もし一冊だけ自分自身で選べるとしたら、今の私なら「リーダーズ英和辞典」を選ぶことだろう。一冊だけしか選べないのだから、相当迷うだろうけれども。
しかし、考えてみれば、無人島に行かなければならない状況から想起するのは、裕福な人がソロ・キャンプするような状況ではなくて、なんらかの罪を犯して島流しされるような状況ではないだろうか?
だから、無人島へ持ち込める一冊は、私自身の自由選択の余地がないことだろう。
「無人島に一冊だけ本を持っていけるとしたら?」
この問いを聞くたびに思い出す本が二冊ある。
それは、「死の家の記録」と「チェスの話」という二冊だ。
「死の家の記録」は政治犯として服役中のドストエフスキーの体験に基づくノン・フィクション的な小説である。
監獄に持ち込むことを許可されたのは、聖書の一冊だけ。
「チェスの話」はツヴァイクが書いた物語。獄中で活字に飢えた主人公・Dr.B (ドクター・ベー)がやっとの思いで看守から盗んだ本が、チェスの定石をまとめた一冊だったという話。
監獄という場所は、社会から隔絶された空間。外部からの情報が遮断されているから内省的になりやすい。娯楽はほとんどないから、いろんな物事へ目移りすることない。だから、読書をするにはもってこいのところらしい。佐藤優さんの「獄中記」には、拘束されているときに読んだ本のリストが載っているが、実にたくさんの本を読んでいる。ドストエフスキーやDr.Bと比べたら、語弊はあるけれどもかなり恵まれていたように思う。
しかし。。。
「無人島に一冊だけ本を持っていけるとしたら?」
おそらく、私が無人島に行くときに読める本には選択肢はない。与えられた一冊を読むしかないことだろう。
その一冊が手垢にまみれた「エロ本」だとしたら?
私はそこからいったい、なにを学ぶのだろう?
どんな人生哲学を引き出すのだろうか?
何度読み返すことになるのだろう?
「手垢にまみれたエロ本が私の心の糧となりました」と言える日は、本当に来るのだろうか?
私は今、真剣に悩んでいる… …
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