小説 | 英語教師
大学を卒業してすぐに英語教師となった。海外留学の経験はない。しかし、英語が好きで、高校生のときから災害ボランティアの活動を通じて、英語を使う機会を持ってきた。英語学習はもっぱら日本国内に限られていたが、言いたいことは英語で話せたし、相手の話すことも聞き取り理解することができた。
英語の勉強なんてどこでも出来るものだ。留学しなければならないわけでもない。高校までに、意志疎通に必要な英文法はすべて日本で学ぶことが出来る。あとは、その知識を活性化して普段から使うことを心がけていればよい。それが私の信念だ。
このような境地にたどり着いたのは、ネットで見かけた記事に依るところが大きい。
「洋書一冊をまるまる暗記することは、海外留学数年の学習に匹敵する」
目からウロコだった。
ネイティブでさえ読み通すには苦労する本をまるまる覚えておけば、学習になるだけではなく、自信にもなる。文法を学んだ上で、本を丸暗記しておけば、英文を自ら生成していくことが可能だ。
私は本をまるまる暗記するという、誰にもでも実践可能な学習法で、英語だけでなく、フランス語、ドイツ語、ロシア語、ラテン語などあらゆる言語を習得していった。
私は赴任した高校で人気者になった。
「先生!私の書いた作文を英語に翻訳してください」
「先生!ぼくの作文はロシア語にしてください」
生徒からどんな依頼を受けても、ほんの数秒の時間さえあれば、私は即座に翻訳してみせた。
「先生!あたしの作文をグルジア語に翻訳してください!」
記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします