エッセイ | 止まらない言語の消滅 | 言語を学ぶ意味
はじめに
世界には何千という言語がある。かつて、世界にひとつだけの共通語があったらいいのに、と思ったことがある。例えば、世界中どこでもエスペラントあるいは英語が通じれば、コミュニケーションがスムーズになっていいのにと。
しかし、世界中で、英語化が進んで、少数話者しかいない言語が失われてくると、「もったいないな」と思うようになった。
止まらない言語の消滅
人間の使う言語というものは、どんな言葉であれ、一朝一夕にでき上がるわけではない。少数話者しかいない部族語のような言語であっても、長い時間をかけて形成された、人類の知的遺産である。
日本で使われている日本語は、まだ一億人以上の人に用いられているから、当分の間消滅することはないと思うが、日本国内においても「言語の消滅」は他人事ではない。
アイヌ語
言語というと、「フランス語」「ドイツ語」「○○語」のように、「国名+語」を想起するが、それだけではない。
例えば、アイヌ語は日本国内で話される言語だが、日本語とは異なる体系の言語である。アイヌ語も消滅が危惧される言語だ。
この記事(↑)によると、アイヌの人の中でも、アイヌ語を話せる人はわずか0.7%しかいないという。
金田一京助
アイヌ語は、多くの国語辞典の監修をつとめた金田一京助が研究した言語である。金田一は「ユーカラノ語法特ニソノ動詞ニ就テ」というアイヌ語研究で文学博士号取得を取得している。
出典はこの記事(↓)
一国一言語ではない!
日本という国には、日本語以外にアイヌ語という言語がある。しかし、ほぼ100%に近い人が日本語を使っているので、単一言語国家だと誤解しやすい。そして、どんな国でも、複数の言語が利用されているほうが普通だ。
例えば、南アフリカ共和国には、公用語に限ってみても、アフリカーンス語、英語、ツワナ語、コサ語、ズールー語、南部ソト語、北部ソト語、ツォンガ語、ベンダ語、スワジ語、南アフリカ手話、南ンデベレ語がある。
アパルトヘイトを終結させた、南アフリカ大統領・ネルソンマンデラの母語は、コサ語(↓)である。
言語の多様性
英語だけじゃつまらない!
英語は中学生の頃から好きな科目だった。今も英語の学習は細々とつづけているが、いまだに自由に使いこなせるレベルにはない。
英語すらマスターできていないのだが、所詮外国語は借り物の言語。完璧を求めていたら、いつまでたっても他の外国語は学べない。
そう思うようになってから、完璧は目指さず、いろいろな言語をかじったほうが面白いのではないかと思い始めた。
ネルソン・マンデラの名言
ところで、ビジネス目的に語学を学ぶならば、英語や中国語が現在の主流だろう。では、それ以外の言語は学ぶ意味はないのだろうか?
さきほど名前を出したネルソン・マンデラは次のような名言を残している。
If you talk to a man in a language he understands, that goes to his head. If you talk to him in his own language, that goes to his heart.
相手が理解できる言語で話しかければ、その人の頭に届く。相手の母語で話しかければ、その人の心に届く。