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拝啓フョードル様💌


👸20代の頃のわたし👸

 拝啓フョードル様、ご無沙汰しております。あなたは今、天国で祖国ロシアの様子を、どのようにご覧になっていらっしゃいますか?
 あなたは、ナショナリスティックな側面も持ち合わせていらっしゃいましたが、祖国の現況をきっと苦々しくご覧になっていらっしゃるのではないかと忖度しております。


 私の20代は、あなた一色でした。あなたの「死の家の記録」に感銘を受けたのを皮切りに、「罪と罰」「白痴」「悪霊」「未成年」「カラマーゾフの兄弟」という五大長編小説を拝読しました。それだけでももの足りず、「貧しき人々」「虐げられた人々」「ステパンチコヴォとその住人」「賭博者」「永遠の夫」「」『作家の日記』、あなたの書簡、創作ノートに至るまで、あなたのすべての文章を拝読しました。

 あなたの作品には、癲癇のアウラの様子も描かれていますが、およそ人間が精神というものを持っている以上、みな病人なのではないか?、と思ってしまうほどです。

 20代の頃の私は、いつもあなたと同衾していました。あなたを抱きしめたまま、眠りに落ちてしまった夜は、枚挙に暇がないほどです。

 「大審問官」であなたがユゴーの「ノートラダム・ド・パリ」について語れば、ユゴーを探し、「作家の日記」でジョルジュ・サンドについて語ってくださったときには、岩波文庫の「愛の妖精」を購入したりしました。あなたはフランス語に堪能でしたから、バルザックの「ウジェニー・グランデ」も露訳されていらっしゃいますね。こちらはまだ、拝読していません。申し訳ございません。

https://www.naukajapan.jp/detail.php?id=206338 


 あなたの作品を、バフチンさんは「ポリフォニー小説」だと指摘されたことがありましたね。
 私は解説書を読む時間があるなら、原書(もちろん翻訳ではありますが)を読め!、という考えをもっています。
 しかしながら、フョードル様に関しては例外でした。
 外野がアレコレと語る「うわさ話」も放っておけず、江川卓(えがわ・たく)さんの「謎ときシリーズ」(新潮選書)のみならず、加賀乙彦さん、埴谷雄高さん、亀山郁夫さん、佐藤優さんの作品など、「ドストエフスキー」と名のつく書物を読み漁ってしまいました。


 あなたに惚れ込んだことは決して後悔などしていません。ですが、あなたの以外の作者のどんな小説を読んでも、あなたをしのぐ者などあろうはずもなく。
 私はあなたの作品を読んでしまってから、他の小説を読むことができなくなりました。

 あなたを目の前にしては、ノーベル文学賞作家の作品でさえ、小粒な陳腐な小説に見えてしまうほどです。

 あなたは巨大な作品群を残しました。そして、その謎解きは未だに完結しておりません。
 
 そういえば、「カラマーゾフ」の後編は本当に書くおつもりだったのでしょうか?
 「偉大な罪人の生涯」という後編を書く御見積りだったといううわさを耳にしましたが、もうご執筆されましたか?
 あなたの愛していたプーシキンさんとはお会いになりましたか?語らいましたか?
 ツルゲーネフさんと喧嘩なんて、なさっていませんよね?
 

 私にはまだ余生が残っておりますので、いますぐにあなたのもとを訪れることはできません。けれども、あなたとの再会を心待ちにしております。私が天国に行けたら、のお話ではありますが。



草々
山根あきこ👩
2024.8.13.記す


フョードルさん👸
大好き💕



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山根あきら | 妄想哲学者
記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします