小説 | 天才少女ルナの物語⑥
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発掘の終了予定の日が近づいてきた頃、私たちのチームのもとへジェイコブ博士がやって来た。
「ジェイコブ博士、お久しぶりです。はるばるお越しくださり、ありがとうございます」
「ソフィアさん、こちらこそありがとう。で、さっそくだが、ぜひ出土品を見せてほしいのだが」
ジェイコブ博士は相変わらずだ。研究のことしか頭にないようだった。
「こちらがルナが解読した出土品になります」
「あぁ、これが例の…」
ジェイコブ博士は、出土品の文字を凝視し始めた。
「これかぁ。写真で見たときより、ハッキリと見えるが、パッと見たら、単なる文様にしか見えないね。ところでルナちゃんはどこにいる?」
「あちらで遊んでいます」
私はルナがいる方へ視線を向けた。
「ルナちゃんを呼んでくれるか?ぜひ直接ルナちゃんとお話してみたい」
ジェイコブ博士は本当に対等に話せる相手でなければ話しかけたりしない人だ。我が子ルナと話したいということは、ルナを対等な語り相手として考えているということだ。私は嬉しい気持ちとともに、少し恥ずかしい気持ちになった。我が子に羨望するのもおかしなことだが、確かにその時の私は、ルナを羨む気持ちを持った。
「ルナちゃん、遊んでいるところ悪かったね。ちょっとだけおじさんとお話してくれないか?」
「え?おじさん、ルナとお話してくれるの?」
無邪気にルナが言った。
「ルナ、『おじさん』じゃなくて『ジェイコブ博士』ですよ」
「いや~、おじさんで結構じゃよ。おじさんとお話しておくれ」
こんなに柔和な顔をしたジェイコブ博士を私はこのとき初めて見た。
「ルナちゃん、君は本当はこの先になにが書かれているのか、分かるんだろう?おじさんはルナちゃんの話を真面目に聞くよ。本当はこの続きを読むのが怖かったんだろ?違うかな?」
ルナは一瞬キョトンとした表情を浮かべたが、みるみる青ざめた表情になっていった。
「おじさん、なんで分かったの?そうなの。ルナはこの先になにが書いてあるのか、ちゃんとわかってたの。でもね、人が死んじゃうお話がいっぱい書いてあって『読めない』ってウソを言っちゃったの。ごめんなさい。おじさんはルナのこと、許してくれる?」
ルナは涙目になっていた。
「そりゃ、当然だよ、ルナちゃん。おじさんだって読むのがこわかったから。怒ってなんかいないよ。こわいお話だけど、つづきを読んでくれるかな?」
ルナはコクりと頷いた。
…つづく
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