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小説 | 天才少女ルナの物語⑧


前話はこちら(↓)


 私はルナとジェイコブ博士の会話をずっとそばで聞いていた。ルナが実は最初から出土品の文字をすべて解読していたことに驚くと同時に、ジェイコブ博士も解読に成功していたことにも驚いた。

 ルナのことを天才と呼ぶならば、ジェイコブ博士は秀才だ。
 ルナは古代語の読み方や記述文法も何も知らない。なのに、直感で古代語を読み解いた。
 ジェイコブ博士は、ルナのような天才ではない。少ない手がかりが与えられれば、理論的な裏付けをすることが得意であった。
 あえて二人を数学者にたとえるならば、ルナラマヌジャンで、ジェイコブ博士ハーディーといった感じだろうか?
 私は不遜にもそんなことを思いながら、二人の会話を聞いていた。


https://wired.jp/2016/10/21/ramanujyan/


「ルナちゃん、大丈夫かい?」
ジェイコブ博士はルナの手を握りながら言葉をかけた。

「おじさん、ありがとう。おじさんが手をつないでいてくれるから、もう少し先までお話できそうよ」
ルナは言葉とは裏腹に、少し怖じ気づいた声色でこたえた。

「ルナちゃん、無理しなくてもいいんだよ。つづきはおじさんも何が書いてあるのか、考えてみたい気もするから」
ジェイコブ博士がニコリと微笑みながらルナに言った。

「ジェイコブ博士、ルナといっしょに休憩しませんか?博士もお疲れでしょうし」
私はルナの話が気になりながらも、この先の解読がなにか恐ろしい結末になるような予感がしていた。

「ソフィアさん、お気遣いありがとう。お言葉に甘えて、ルナちゃんとあなたといっしょに一休みしようかの。ソフィアさんともお話したいことがあるし」

 私たち3人は、いっしょに一休みすることにした。

 その時、オリバー博士からメールが届いた。


「ソフィアさん、ルナちゃんの解読を元に私も解読していたのだが、私もオークニーへ飛ぶことにしました。おそらくこの出土品の先には、現代に生きる私たちへの予言が書かれているはずだ。これから、そちらへ向かいます。できればルナちゃんのお話を聞きたい」


 私は直感した。オリバー博士も、ジェイコブ博士と同様に、ルナの解読を元に独自の解読をしたのだろう。
 いったい、この出土品の文字はなにを伝えているのだろう?
 期待とともに、私はこの先に書いてあるであろう私たちの未来について、大きな不安を持ち始めたのだった。


…つづく

第9話はこちら(↓)


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山根あきら | 妄想哲学者
記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします