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童話 | 秋雨の夜✨
10月の雨が降る夜のことです。
前の日とはうってかわって、寒さを覚えた夜のことでした。
しとしとと降る雨音が聞こえる中、私は布団に入って寝ようとしていました。
布団をかけて寝るのは、ずいぶん久しぶりのことでした。もう掛け布団を使って寝ることなど無いと思うくらいの暑い日がつづいていましたから。
私は目を瞑りました。
目を閉じるとすぐに、いまだに覚醒しているのか、それとももう既に眠りに落ちているのか判然としない領域に足を踏み入れていたのでした。
目蓋の裏には、夜空に輝く数多の星が見えました。こんなに星がたくさん見えるのに、なぜ雨が滴る音も同時に聞こえてくるのか、とても不思議でした。
ポタ…ポタ…
明らかに私の体に水滴のような冷ややかさを感じたのでした。
私は夜空を見上げました。雲ひとつない。空に浮かぶのは、星々だけです。私の感じた冷ややかなものの正体は、いったい何だったのでしょう?
「これはな~に?何で雨なんか降っていないのに、私は濡れてしまうの?」
私はひとりごとを言いました。
「ボクだって泣くことくらいあるさ。どんなに他人から『いつも輝いている』って言われたって、悲しくなることはあるのさ」
そんな声が満天の星空の至るところから聞こえてきたのでした。
「そう。そうだったんだね。いつも君たちは光に満ちているから、君たちにも悲しみがあるなんて、ちっとも気がつかなかったよ」
私は彼らに語りかけたのでした。
「わかってくれたかい?人間の君よ。やっと生きている人間に僕たちの声が届いて嬉しいよ。だって僕たち星は、かつては君と同じ人間だったのだから…」
私はその時、目を覚ましました。
私は雨漏りのする部屋に眠っていたのでした。
本当ならね、「雨漏りしていてヤバい」とあたふたするところなんでしょうけどね。その時の私は、故人とお話することが出来た喜びのほうが遥かに大きくて、雨漏りのする部屋で眠ることができた自分に誇らしささえ感じていたのでした。
おしまい
この作品は「毎週ショートショートnote」のお題を拝見して、インスピレーションを与えられました。
しかしながら、「410字程度」というお約束を守ることができませんでした。ほぼ倍の長さになりました。
このまま消去しようと思っていましたが、やはり投稿しておきたいという気持ちが大きくなりました。
お手数をおかけして申し訳ありません。
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