小説 | 天才少女ルナの物語⑤
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オリバー博士の見解
最初に返信があったのはオリバー博士だった。
「ソフィアさん、私が見たところほぼ完璧な現代語訳だと推察します。ただ、何箇所か即断できかねる所があります。たとえば、これは類例のない古典語ですから、動詞の変化が人称に依るものか、あるいは時制に依るものなのか、断定できません。もしかしたら、ドイツ語のように、過去時制に人称変化が上乗せされた形なのかもしれません」
ソフィアは先を読みつづけた。
「まだ私も繰り返して読んだわけではありませんが、現代英語と同じようなSVO型の言語ならば、ルナちゃんの読みは正確である、と言えるのですが、今のところ膠着語あるいは抱合語として読める余地もあります。いずれにしろ、ルナちゃんは、大きく外した読み方をしているわけではありません。もう少し精査・検証する時間を与えてくださいませんか?」
ジェイコブ博士の見解
オリバー博士の返信から一週間後、ジェイコブ博士からの返信があった。
「これは本当にソフィアさんのルナちゃんが最初に読み解いたのでしょうか?これはすごいですよ。私ならば、初見でここまで読み解くには、少なくとも三年はかかることでしょう。もちろん、細かなところでは整合性のとれていない箇所がありますが、あながち間違っているとは言えません。しかし、なにぶんテキストが短すぎます。もう少し先の文章を読む必要があるでしょうね。時間をとって私もオークニーへ行きます」
二人の信頼できる博士の意見を聞く限り、ルナの読解はおそらく完璧に近いものなのだろう。
私は今さらながら、我が子ルナの秀でた言語能力を喜ばしく思った。しかし、それと同時に、なぜ特別な言語教育を授けていないルナに、このような才能があるのか、不思議に思い始めていた。
…つづく
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