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一語の宇宙 | 被爆者 | hibakusha

 hibakusha。「被爆者」のこと。
 今年のノーベル平和賞は、皆さんご存知の通り、日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)が選ばれた。

 「一語の宇宙」は、英単語に関するエッセイなので、「hibukusha」という単語にこだわってみたい。


 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241012/k10014608041000.html


(1) "hibakusha" という英単語


 日本人なら、「被爆者」と聞けば意味をすぐ理解できるが、日本語を母語としない外国人には、どれくらい通じるのだろう?

 日本の報道では、「被爆者」という言葉は、「hibakusha」という英語になったと言われている。
 そこで私の手元にある高校生が使うレベルの英和辞典をひいてみたが、「hibakusha」という英単語は掲載されていなかった。
 
 研究社の分厚い「リーダーズ英和辞典」には「hibakusha」という単語を見つけることができた。


国連による「hibakusha」の説明には、次のように書かれている。

The "hibakusha" are the surviving victims of the atomic bombs which fell on Hiroshima and Nagasaki. While these individuals survived the immediate effects of the blasts, the hibakusha have suffered from the effects of radiation sickness, loss of family and friends, and discrimination.

前掲記事より引用

 日本語の「被爆者」が英語の「hibakuha」になると、「hibakushas」という複数形の「S」をつけるのではなく、「the hibakusha」というように集合名詞として扱われることが多いようだ。使い方は「police」「 family」「audience」という英単語と似ている。

 「hibakusha」はもともと日本語だから、複数形の「S」をつけると、不自然に響くのかもしれない。

 また、被爆者をそのまま「hibakusha」というよりも、「atomic bomb suvivor」
や「victim of the atomic bombs」と訳したほうが、英語を母語とする人には分かりやすいだろう。

 私が思うに、複数形の「hibakushas」という形があまり見られないのは、まだ「hibakusha」という英単語が十分に「英語化」していないからだろう。


(2) "honcho" という英単語


 「リーダー」あるいは「ボス」を意味する「honcho」という英単語がある。この英単語は、だいたいの辞書に掲載されているが、複数形はそのままSをつけて「honchos」となる。

 honchoは日本語の「班長」が語源で英語になった単語だが、おそらくhonchoのほうがhibakushaよりも英語として定着しているのだろう。
 英語を母語とする者にとって、日本語という外来語が外来語のように響く間は、英語の複数形をつくるSをつけることは、ためらわれると思われる。


(3) (参考) ドイツ語の「Futon」という単語について


https://orangerosen.blog.ss-blog.jp/2011-01-12


https://kotobank.jp/dejaword/Futon


https://oshiete.goo.ne.jp/qa/275125.html


 英語に外来語(日本語など)の名詞が流入する場合、流入した直後は、その名詞は集合名詞的に扱われる(ことが多いようだ)。外来語に英語の複数形の「S」をつけることには、違和感が持たれるからだろう。

 基本的に英語の名詞には「性」という文法カテゴリーはないが、ドイツ語の名詞はすべて「男性名詞」「女性名詞」「中性名詞」のいずれかに分類される。外来語とて、その例外ではない。

 ドイツ語の場合、法律などで「名詞の性」が決められるわけではないので、いずれかの性に分類されるまで「揺れる期間」がある。

 日本語の「布団」がドイツ語の男性名詞の「Futon」(der Futon)になるまでには、男性名詞か女性名詞か、あるいは中性名詞になるかという揺れる期間があった。

 どうやって決まるのかというキチンとしたルールはないが、たとえば「Futon」(布団)と類似した意味を持つドイツ語単語の性になったり、つづり的(スペリング的)に「男性名詞っぽい」「女性名詞っぽい」「中性名詞っぽい」ということで、自然に定まっていくことが多いようだ。


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