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悪文に学ぶ分かりやすい文章の書き方




(1) 典型的な悪文


 この記事では、いわゆる「悪文」を読むことにより、「良い文章とはなにか?」を考えてみようと思う。
 典型的な悪文の見本は、次の記事(↓)に書いてある。

 以上の記事(上の2つの記事)を読んで考えてみると、「文の構造」が悪いということに尽きる。ここで私が想起したのは、英文翻訳における「関係代名詞」の処理法のことである。

 たとえば、次のような英文をどう訳すだろうか?

There's no man that I know who deserves your love. 

 英文としてはごく普通の文だが、この一文の中には、2つの関係代名詞が使われている。thatの先行詞 も whoの先行詞 も、ともに「man」である(これを関係代名詞二重制限という)。
 関係代名詞節を括弧でくくって、文章の構造を表すと次のとおり。

There's no [man (that I know) ](who deserves your love). 

「that I know」が先行詞「man」を修飾するから、
「man that I know」は「私の知る男」と訳せる。

次に、「who deserves your love」(あなたの愛に値する)は、「man that I know」にかかるから、
全体をそのまま訳してみると、
「あなたの愛に値する私の知る男」となる。

[直訳]
あなたの愛に値する私の知る男はいない

これはこれで間違いのない和訳なのだが、元々の英文を忘れて和訳した文を読むと、意味がぼやける。

「あなたの愛に値する」の部分が、「男」ではなく、「私」を修飾しているかのようにも読めてしまう。

だから、元々の英文には「man」は1度しか登場していないが、誤解のないように訳すならば、2度繰り返すほうが分かりやすい。こんな感じ。

私が知る男の中で、あなたの愛に値する男はいない

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