
短編小説💖四十九日
祖父の四十九日が行われる寺に車で向かうことになった。
寺の駐車場は広くないので、何人かに別れて相乗りすることになった。
私は姪と二人で向かうことになった。
普段からちょくちょく私のところに遊びに来ていたから、姪とは仲がよかった。
他の親族より遅れて寺に着いた私と姪は、一番後ろの列に並んですわった。
暫くすると、住職が現れ、四十九日の意義を簡単に述べたあと、お経をよみ始めた。
畳の上に正座していたから、慣れていない姪には特につらい。それだけでなく、みな当然のことながら、黙って住職のお経を聞いている。
暫くすると、場の雰囲気に馴染めない姪が、私に比較的大きな声でこう言った。
「愛ちゃん、こういうの嫌い。なんかオシッコ行きたくなっちゃった。おじさん、トイレに連れていってくれる?」
辺りから、クスクスっという失笑が聞こえた。
私は逃げるように、姪をトイレに連れていった。そして、数分後、またお経の聞こえる元の席に戻った。
暫くすると、また姪が私に話しかけた。
「ねぇ、ねぇ、おじさん、今日の朝のおさるのジョージ見た?🌠ジョージって面白いよね😄。特に今日は2番目のお話が面白かったよね🎵」
今度は、一瞬ではあるが、住職のお経をかき消すくらいの失笑があちこちから聞こえた。
「愛ちゃんね、また、オシッコしたくなっちゃったの。おじさん、トイレに連れていってくれる?」
この子は賢い。明らかにウソを言っている。確かにお経なんて、大人だってずっと聞いていても楽しいものではない。姪は、この場から逃げたいだけなのだろう。
「じゃあ、またトイレに行くか」
トイレから戻ると、すでにお経が終わっていた。みんな痺れた足を引きずるようにして、焼香をあげていた。
しばらくして、私と姪が焼香をあげる順番になった。
見よう見まねで焼香をあげたあと、私は住職に「すみませんでした」と小さな声で謝罪した。
それに答えて住職はこう言った。
「お嬢ちゃん、かわいいね。今日のジョージの2番目のお話は、確かに面白かったよね。おじいちゃんも天国で笑っているよ」
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