詩の作り方 | 弱強五歩格をカスタマイズしようとしたが...
「弱強五歩格」とは、シェイクスピアのソネットに登場するものである。ひと月前に記事にしたことがある。
前に書いた時と同じ例を挙げる。
If mu-sic be the food of love, play on.
詩の一行に並ぶ単語を音節に分けたとき、「弱・強・弱・強・弱・強・弱・強・弱・強」というアクセントになるものを弱強五歩格という。
弱く読む音節と強く読む音節がペアで「一歩」で、一行が「五歩」だから、「弱強五歩格」という(つまり、一行は全部で10音節)。
ソネットには、様々なバリエイションがあるが、シェイクスピアのソネットでは、「弱強五歩格」が十四行つづく。
この弱強五歩格は、ソネットだけでなく、シェイクスピアの作品のほとんどに使われていて、耳心地が良い。
日本のシェイクスピアとも言われる近松門左衛門の作品は、ほとんど「五七調」「七五調」で作られている。たまに、字余りのときもあるけれど。
近松とシェイクスピアとは、確かに似ている。同じ劇作家、音へのこだわりなど。
⚠️シェイクスピアの生没年は、
1564~1616(覚え方には「人殺しいろいろ」という語呂合わせがある)で、
近松門左衛門が1653~1725。
日本語話者である私は、「五七」「七五」ならば、わりあい作ることができるけれども、「弱強」の繰り返しを英語で作るのはなかなか難しい。
基本的に、英語では母音にアクセントがあり、ひとつの単語の中にアクセントを置く場所は一ヵ所だ。だから、最初の音節にアクセントがあるとしたら、「強弱」となり、次に来る単語の第一音節にアクセントがなければならない。
三音節の単語で最初にアクセントがあるならば、「強-弱-弱」となってしまうから使うことができない。
必然的に「弱強五歩格」のソネットで使われる単語は、一音節か、二音節、あるいは「弱-強-弱」の三音節の単語になる。四音節以上の単語は使えない。
これはなかなかきつい縛りで、シェイクスピアの偉大さを改めて知った、というか、シェイクスピアという天才しか出来ないのではないか?
弱強五歩格に加えて、韻を踏むことまで考慮に入れると、「(シェイクスピアの)ソネット」のルールは相当強い縛りである*。
*⚠️だから、ソネット・ルールを遵守するために、文法規則が犠牲にされることもあり得る。
私は、自分の頭だけで考えるには、限界があるから、シェイクスピアのソネットから、「弱-強-弱」とか「強-弱-強」のフレーズを拾い集めて一般化しよう!、なんて思った。しかし、意味のある「弱強五歩格」を作るのは相当難しい。
シェイクスピアのソネットを知ってから、辞書を見ながら、「by way of~」とか「in search of~」みたいな「弱-強-弱」のフレーズを集めてみようかな、と思い始めた。
面白いけど相当面倒くさい。こういうのこそ、AIを使えば、ソネットに使えるフレーズをデータベース化できるのではないか?
…というかもうすでにあるかもしれないが。
「ソネットを作る」より、「ソネットを鑑賞する」の方がいいのかな、とも思うが、いつか新しいシェイクスピア流のソネットを作ってみたい。文法もソネットのルールも守りつつ、意味のあるソネットを。
けれど、完璧なソネットを作っても、それが人の心をうつような詩になるとは限らないが…。
(参考)シェイクスピア・ソネットのひな型
シェイクスピアのソネットは、十四行から成り立つ。そして、すべての行の音節が「弱強」の組み合わせが五回。
十四行のソネットの連(普通の文章の「段落」に相当するもの)は、4つ。
四行の連が3つ、最後の連が二行。
「4×3+2=14」ということです。
四行の連の最後の音節は、抽象的に書けば「A-B-A-B」のように、互い違いに韻を踏む。
それぞれの連では、異なる組み合わせのパターンにする*。
(*⚠️同じ音の韻を別の連でも使っても良いが、「組み合わせ方」はすべての連で異なるものを使う)
そして、最後の二行は、教訓めいたこと(結論みたいなこと)でしめくくられる。
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