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エッセイ | 贈り物 | 花を贈る
知り合いのお誕生に、花を贈ったことがある。
花の名前なんてほとんど知らないから、花屋さんにだいたいの予算を伝えておまかせして。
花が身近にあると心がなごむかな、と思って。
渡したとき「ありがとう」と言ってくれたから、なにもしないより良かったかなと。
その後、お互い引っ越したから、そのまま会っていない。別にケンカしたわけでも何でもないけど、もう会うこともないだろう。
あるとき、電車の中で、二人の若い女性が花束を持っているのを見かけたことがある。
「花束なんてさ、ただ嵩張るだけだし、花瓶とか用意しなくちゃならないから、迷惑以外のなにものでもないんだよね」
「そうだよね。電車で帰るのを分かっていて花束を渡すなんて、気が利かないよね」
そうなのか。確かに、車ならともかく、歩きとか電車だと持ち帰るのに邪魔だよなぁ。
花は喜ぶ人は喜ぶけど、迷惑に思う人がいるんだ!、と初めて知った瞬間だった。
私は綺麗な花をいただくと、嬉しいとしか思ったことがないけど、ちょっとした贈り物に菓子折りが好まれる理由がわかったような気がした。
菓子折りなら、気に入らなければ、回りの人に配ればいい。一気に食べる必要もない。
花の場合はどうか?
となり近所に花が欲しい!という人がすぐに見つかればよいけれど、引き取ってくれる人がいない場合、自分んちで花瓶に差すか、捨てるか。
「捨てる」っていうのは、いくら花が好きじゃない人でも、心がいたむだろうな。
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