橘夢(たちばな ゆめ)

橘夢(たちばな ゆめ)

最近の記事

鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No16

私は、自己啓発本的な本を好んで読む。読んでいる時だけ、作者のマジックにかかり、とても前向きになれる。 私は記憶力が乏しいので、読んでも、右から左に受け流してしまうのだが。 時計を質に入れた帰り、パパと久しぶりにケンカをした。 パパが怒鳴った。何度も怒鳴った。私も怒鳴った。パパは無人の交番に走った。私は、パパに鍵を投げつけて帰った。 パパは18禁のゲームの話をすると激怒する。そんなに触れられたくない大事なものなのか? 私の物を質に入れて、申し訳なく思わないのか? 私は、パパに

    • 鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No15

      新聞が来ない生活。 昨日も今日も明日も新聞が届かない。 あまりの貧困さに新聞も断ってしまった。 新聞が溜まる恐怖は、無くなったが、色々な情報も途絶えてしまった。つまらなくなってしまった。 パソコンのカチャカチャ叩く音、せわしく鳴るカチャカチャカチャ。 パパが18禁のエロゲーで女の子と会話している。 どんなに「やめて」と言ったことか。 私が吉原にいる頃からやっているからもう4~5年、いや、それ以上になる。 なんでAV女優が出て来る18禁ゲームを好んでやるのか? 何度も「やめて

      • 鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No14

        明け方まで起きていたら、突如ラジオの音らしきものが聞こえてきた。 音楽やおしゃべりする声が聞こえてきた。 幻聴?のようだ。寝ないから聞こえてきたのだろうか。 まだ聞こえてくる。 パソコンに近づいて耳をすますが、パソコンではない。 ステレオから?いや、ステレオは、壊れているから聞こえるはずもない。なんだか怖い。 バイトを始めてから2ヶ月が経とうとしている。 本に携わる仕事だ。大好きな本に接するのは、実に気持ちがいい。でもこのバイトも期間限定なので、ずっとは、続けられない。 仕

        • 鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No13

          懐 神経科の待合室の窓の外を眺めた。 スカイブルーの空と、もくもくの白い雲。夏の空だ。 小学生の頃、家族旅行で行った海。その頃のワクワクが蘇ってきた。 楽しみが待っているような、海に行けるんだというような、そんな高ぶる気持ちが押し寄せてきた。 また行きたいな。 でも現実は、ため込んだ請求書を選んで支払いして、それでいっぱいいっぱいの懐具合。 海に行ける余裕なんて全然ない。 コロナで不要不急の外出は、ダメだから丁度いいのか、なんだかな。

        鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No16

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No12

          パパ パパが裸足で家を出ていった。 止める私を突き飛ばして出ていった。 もうやめようか。 この結婚。 昔感じた失恋の時の、心を締め付ける思いをこの年になって感じている。 また失恋したんだね、私。 私は見る目がなかったのかな。私が悪いのか。

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No12

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No11

          不快 なぜこんなに不快に感じるのだろう。 やきもち?プライドを傷つけられたから? 何なのだろう。 パパが9年前、会社勤めをしていた時、おっぱいパブに行ったことがあると聞かされた。おっぱいパブとは、上半身裸の女性達が接客するお店だ。 酷い、酷すぎると思った。 やはり風俗が好きな人なんだろうと思った。 聞かされた昨日の夜は、ひとり泣いた。 裏切りじゃないか。 そんな人だから、私が風俗に身を置いていても平然としていられるのか。 やはりそういう人だったのか。 私の描いていたパパの像

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No11

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No10

          私が吉原の門を叩いたのは、43歳の時だった。 ちょうど美魔女という言葉が流行っていた頃だった。 息子の大学合格が決まり、そしてパパがだいぶ弱っていた頃。 美魔女という中年が流行っているなら、吉原にもそういうのがあるのでは…と思った。 パパがいよいよ調子が悪くなった時に、吉原に面接に行き、働くことになった。 高級店とは知らず、そういうランクがあるのも知らなかった。右も左も分からず、飛び込んだ。必死だった。

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No10

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No9

          自己啓発本を読もうとするのだが、ちょっと読むと嫌になってしまう。 新聞を読もうとしても、いっぱいいっぱいになって読めない。 ただ、その中で、伊集院静氏のミチノク先生だけは、何とか読めている。 漱石さんもターナーの絵を観て感動したとあった。私もだ。 漱石さんと共通のもので感動していたことに嬉しく思った。 私も漱石さんまでとは、言わないけど、文章書きが上手くならないものだろうか? 私には、語彙力もなければ、考えることの出来る頭も持ち合わせていない。 私みたいな人間は、どうすればい

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No9

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No8

          パパ仕事に就く パパは、週に2日だけ仕事をすることになった。 パパは、真面目に仕事をしている。 仕事も速いらしい。速く終わってしまい、時々暇してしまうとのことだ。 私は…というと、相変わらず家にいる。 仕事を探している時もあれば、寝てばかりの日もある。 神経科の先生には、「鬱ですね。」と言われた。 「何かきっかけがあるの?」と先生。 私は首を横に振った。 「お金がなくて」とか「仕事に就けなくて」とは、言いたくなかった。 もっと私にでも出来そうな仕事は、ないものだろうか?や

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No8

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No7

          また。 また仕事をサボってしまった。もうダメだろう。 パパの態度が冷たくなった。 私は、やっぱりダメだ。 社会不適合者なのだ。 良くしてくれた会社の堀さん、ごめんなさい。 私もパパも病気なんだ。 今日は、午前中寝ているパパ。 怠けているわけではない。 体が、心が、睡眠を欲しているのだ。 こんなんで仕事が出来るはずがない。 私たち二人は、どうすれば良いのか? とにかくだるくて眠い。 仕事を辞めてしまった。 ちょうど1ヶ月の命だった。 ダメな私。 あとで後悔しそうだなと思う

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No7

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No6

          愛さん 高級店にいた時に良くしてくれた姐さんに愛さんがいた。姐さんといっても私より年下だ。 愛さんは、井川遥によく似美人さんで、本当に色っぽい人だった。 とても世話焼きでお店の中でも女の子やお客さんに人気のある人だった。 彼女は、福島出身で田舎の親御さんの話をよくしていた。 40歳になる彼もいる。 彼女の彼氏さんは、妻子持ちで、愛さんは、彼氏さんが離婚するのを待っていた。私は、それは叶わぬ夢なのでは…と思っていた。 私がお店を辞めた1年後位に愛さんもお店を変わったと言って

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No6

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No5

          アルバイト 物流会社の夜勤の募集に応募した。通った。事務兼軽作業をする。パソコンは、使える振りをした。 仕事が始まる前日、そんなに嫌じゃない、むしろワクワクしている自分にちょっと驚いた。 吉原の仕事の時は、未来を感じられなかった。今日は、明るい未来を考えることが出来る。 事務の仕事をして思うのは、私の記憶力のなさを痛感すること、教わることを片っ端から忘れていく。 今日と明日はお休み。お金が無くても何だか楽しい。 パパと二人の時間が持てるのが嬉しい。来月請求書の山が押し寄

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No5

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No4

          嫌な客 嫌な客は、多々いるが、その中で最も嫌なのが、不潔な客。 あえてお風呂に入ってこない客がいる。 それも3~4日入ってない感じ。髪の毛もベットリ。 最悪なのが、ぺニスが悪臭を放っている。恥垢もベットリ。速尺速ベッドのお店なので、それを洗わずに口に含まなくてはならない。涙が出そうになる。 姐さんによっては、そういう客には、容赦なく風呂に入れて清潔にしてからにすることがあるが、そういう客というのは、あえて汚く来るので、まず最初のお風呂を拒むことが多いにしてある。 本

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No4

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No3

          嫌な客 嫌な客で思い出すのが、口が臭い客だ。 客の6~7割は、口が臭い。本人たちは、分かっているのだろうか? そういう口臭のキツイ人に限って、濃厚なキスを求めてくる。 口臭のせいで、奥さんや彼女がキスをしてくれなくなっているのか?それでキスを強要してくるのだろうか? どうしてもそう考えてしまう。 いわゆる普通の… ここのところ、いわゆる普通の仕事の面接にいきはじめた。 介護の仕事、警備の仕事等あまり難しいことを要されなさそうな仕事を選んだのに、ことごとく落とされてしまう

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No3

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No2

          誰かに助けを求めても誰も助けてくれなかった。 兄姉もしかり、国や都や区もしかり、誰も助けてくれない。 自分たちで何とかしなければならない。 統合失調症とうつ病の夫婦の奮闘をお話しします。 うつ病と統合失調症の夫婦、どうすりゃいいのよ! #創作大賞2024 #エッセイ部門

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No2

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No1

          働けど働けど楽にならず、 もっと仕事をしなければならないのかと暗い気持ちになる。 私は、あなたの笑顔のために頑張る。パパ、あなたと息子のりくの為に頑張る。 ターナーの絵のような夕暮れの空を見て。 高校生の時、ターナーの絵を観て感動した。あの頃の気持ちと今の気持ちとでは、感動も違うのだろうかとふと思った。年月を経て、気持ちは、くすんでしまったのではないだろうか。 持っていた指輪を売った帰り道。なんだろう、この喪失感は。片思いにも似た、でもそうじゃない、失恋にも似た、でも

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No1