橘夢(たちばな ゆめ)

橘夢(たちばな ゆめ)

最近の記事

鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No20

ガスを止められてしまって私達は、近くのビジネスホテルの大浴場に向かった。 宿泊者以外にも開放していたのでそこにいってみた。 広いお風呂もいいわねえと思った。しかし、ひとり千円かかる。ふたりで2千円だ。金欠の中で2千円は大出費。そこで次の日は、銭湯へ行った。 ひとり550円だが二人で1100円かかる。やはり出費は抑えたい。またシャンプーやボディソープも銭湯にはない。それもあって銭湯はちょっとないなと思った。 そこでガスが使えない我が家のお風呂でお水のシャワーを浴びた。真冬の水風

    • 鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No19

      今日、ガスが止められた。こんなことは、初めてだ。 お風呂に入れない。困った。銭湯に行こうかなとちょっと楽しんでいる自分も先程まではいた。しかしガス会社のお客様センターに電話をかけ、住所を言ってくださいと言われ、住所を言うと、同じ人にまた、住所を言わされたことに頭にきて、楽しい事ではないんだと気付いた。 パパにラインすると、ショックを受けたようだった。 パパもガスを止められるのは初めての経験らしい。 「参ったな。」とラインが返ってきた。 仕事はクビになるし、ガスは止められるし、

      • 鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No18

        昨日からバイトをしている。軽作業の仕事である。本来ならお正月明けからだったが、先延ばしにされた。 もうお金がない中、この先延ばしは、こたえた。 年末までもバイトをしていた。9月からだったので4カ月の間だったが、休みがちな私に優しい人達がいた。とても有難かった。 新しく始まったバイトも仕事内容は、似たようなものだったが、リーダーが違うとこうも雰囲気が変わるのか?嫌で嫌でしょうがない。 と、一週間のうち、3日休んでしまったらクビになってしまった。 本当に困る。自分のせいだけれども

        • 鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No17

          お客でキスをしてる最中にゲップをする人がいる。 信じられない。キスをしたまま、そのままゲップを吐き出すなんて! そんな人がこれまで何人もいた。普通なら、顔を背けてゲップを出すものでしょ!臭い息が上がってきたのを女性の口に吐き出すなんて論外です。 吉原の所属していたお店のホームページを覗いた。だいぶ知らない顔が並んでいる。 私を目の敵にするほのやさんは、在籍している。 やはりホームページを見ると「仕事するのは無理だな。」と思う。 私は負けたのか?そうかもしれない。ただどんなに

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No16

          私は、自己啓発本的な本を好んで読む。読んでいる時だけ、作者のマジックにかかり、とても前向きになれる。 私は記憶力が乏しいので、読んでも、右から左に受け流してしまうのだが。 時計を質に入れた帰り、パパと久しぶりにケンカをした。 パパが怒鳴った。何度も怒鳴った。私も怒鳴った。パパは無人の交番に走った。私は、パパに鍵を投げつけて帰った。 パパは18禁のゲームの話をすると激怒する。そんなに触れられたくない大事なものなのか? 私の物を質に入れて、申し訳なく思わないのか? 私は、パパに

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No16

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No15

          新聞が来ない生活。 昨日も今日も明日も新聞が届かない。 あまりの貧困さに新聞も断ってしまった。 新聞が溜まる恐怖は、無くなったが、色々な情報も途絶えてしまった。つまらなくなってしまった。 パソコンのカチャカチャ叩く音、せわしく鳴るカチャカチャカチャ。 パパが18禁のエロゲーで女の子と会話している。 どんなに「やめて」と言ったことか。 私が吉原にいる頃からやっているからもう4~5年、いや、それ以上になる。 なんでAV女優が出て来る18禁ゲームを好んでやるのか? 何度も「やめて

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No15

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No14

          明け方まで起きていたら、突如ラジオの音らしきものが聞こえてきた。 音楽やおしゃべりする声が聞こえてきた。 幻聴?のようだ。寝ないから聞こえてきたのだろうか。 まだ聞こえてくる。 パソコンに近づいて耳をすますが、パソコンではない。 ステレオから?いや、ステレオは、壊れているから聞こえるはずもない。なんだか怖い。 バイトを始めてから2ヶ月が経とうとしている。 本に携わる仕事だ。大好きな本に接するのは、実に気持ちがいい。でもこのバイトも期間限定なので、ずっとは、続けられない。 仕

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No14

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No13

          懐 神経科の待合室の窓の外を眺めた。 スカイブルーの空と、もくもくの白い雲。夏の空だ。 小学生の頃、家族旅行で行った海。その頃のワクワクが蘇ってきた。 楽しみが待っているような、海に行けるんだというような、そんな高ぶる気持ちが押し寄せてきた。 また行きたいな。 でも現実は、ため込んだ請求書を選んで支払いして、それでいっぱいいっぱいの懐具合。 海に行ける余裕なんて全然ない。 コロナで不要不急の外出は、ダメだから丁度いいのか、なんだかな。

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No13

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No12

          パパ パパが裸足で家を出ていった。 止める私を突き飛ばして出ていった。 もうやめようか。 この結婚。 昔感じた失恋の時の、心を締め付ける思いをこの年になって感じている。 また失恋したんだね、私。 私は見る目がなかったのかな。私が悪いのか。

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No12

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No11

          不快 なぜこんなに不快に感じるのだろう。 やきもち?プライドを傷つけられたから? 何なのだろう。 パパが9年前、会社勤めをしていた時、おっぱいパブに行ったことがあると聞かされた。おっぱいパブとは、上半身裸の女性達が接客するお店だ。 酷い、酷すぎると思った。 やはり風俗が好きな人なんだろうと思った。 聞かされた昨日の夜は、ひとり泣いた。 裏切りじゃないか。 そんな人だから、私が風俗に身を置いていても平然としていられるのか。 やはりそういう人だったのか。 私の描いていたパパの像

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No11

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No10

          私が吉原の門を叩いたのは、43歳の時だった。 ちょうど美魔女という言葉が流行っていた頃だった。 息子の大学合格が決まり、そしてパパがだいぶ弱っていた頃。 美魔女という中年が流行っているなら、吉原にもそういうのがあるのでは…と思った。 パパがいよいよ調子が悪くなった時に、吉原に面接に行き、働くことになった。 高級店とは知らず、そういうランクがあるのも知らなかった。右も左も分からず、飛び込んだ。必死だった。

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No10

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No9

          自己啓発本を読もうとするのだが、ちょっと読むと嫌になってしまう。 新聞を読もうとしても、いっぱいいっぱいになって読めない。 ただ、その中で、伊集院静氏のミチノク先生だけは、何とか読めている。 漱石さんもターナーの絵を観て感動したとあった。私もだ。 漱石さんと共通のもので感動していたことに嬉しく思った。 私も漱石さんまでとは、言わないけど、文章書きが上手くならないものだろうか? 私には、語彙力もなければ、考えることの出来る頭も持ち合わせていない。 私みたいな人間は、どうすればい

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No9

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No8

          パパ仕事に就く パパは、週に2日だけ仕事をすることになった。 パパは、真面目に仕事をしている。 仕事も速いらしい。速く終わってしまい、時々暇してしまうとのことだ。 私は…というと、相変わらず家にいる。 仕事を探している時もあれば、寝てばかりの日もある。 神経科の先生には、「鬱ですね。」と言われた。 「何かきっかけがあるの?」と先生。 私は首を横に振った。 「お金がなくて」とか「仕事に就けなくて」とは、言いたくなかった。 もっと私にでも出来そうな仕事は、ないものだろうか?や

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No8

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No7

          また。 また仕事をサボってしまった。もうダメだろう。 パパの態度が冷たくなった。 私は、やっぱりダメだ。 社会不適合者なのだ。 良くしてくれた会社の堀さん、ごめんなさい。 私もパパも病気なんだ。 今日は、午前中寝ているパパ。 怠けているわけではない。 体が、心が、睡眠を欲しているのだ。 こんなんで仕事が出来るはずがない。 私たち二人は、どうすれば良いのか? とにかくだるくて眠い。 仕事を辞めてしまった。 ちょうど1ヶ月の命だった。 ダメな私。 あとで後悔しそうだなと思う

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No7

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No6

          愛さん 高級店にいた時に良くしてくれた姐さんに愛さんがいた。姐さんといっても私より年下だ。 愛さんは、井川遥によく似美人さんで、本当に色っぽい人だった。 とても世話焼きでお店の中でも女の子やお客さんに人気のある人だった。 彼女は、福島出身で田舎の親御さんの話をよくしていた。 40歳になる彼もいる。 彼女の彼氏さんは、妻子持ちで、愛さんは、彼氏さんが離婚するのを待っていた。私は、それは叶わぬ夢なのでは…と思っていた。 私がお店を辞めた1年後位に愛さんもお店を変わったと言って

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No6

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No5

          アルバイト 物流会社の夜勤の募集に応募した。通った。事務兼軽作業をする。パソコンは、使える振りをした。 仕事が始まる前日、そんなに嫌じゃない、むしろワクワクしている自分にちょっと驚いた。 吉原の仕事の時は、未来を感じられなかった。今日は、明るい未来を考えることが出来る。 事務の仕事をして思うのは、私の記憶力のなさを痛感すること、教わることを片っ端から忘れていく。 今日と明日はお休み。お金が無くても何だか楽しい。 パパと二人の時間が持てるのが嬉しい。来月請求書の山が押し寄

          鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No5