鳴かず飛ばずの吉原女(よしわらめ)No16
私は、自己啓発本的な本を好んで読む。読んでいる時だけ、作者のマジックにかかり、とても前向きになれる。
私は記憶力が乏しいので、読んでも、右から左に受け流してしまうのだが。
時計を質に入れた帰り、パパと久しぶりにケンカをした。
パパが怒鳴った。何度も怒鳴った。私も怒鳴った。パパは無人の交番に走った。私は、パパに鍵を投げつけて帰った。
パパは18禁のゲームの話をすると激怒する。そんなに触れられたくない大事なものなのか?
私の物を質に入れて、申し訳なく思わないのか?
私は、パパに「私は、専業主婦になりたいの。」と言って結婚したのだ。
それなのにずっと仕事をしてきた。
もちろんパパがうつ病なのだから、しょうがないとしても、もう少し謙虚になってもいいのでは?
私が吉原で稼いでいた時は、不自由なく出来たでしょうよ。アイドルの追っかけも出来たじゃないか。
今、パパもバイトをするようになり、それでも生活は厳しい事を思えば、あの頃は良かったでしょ?
その良かったのと引き換えに、私は、魂を売っていたのだ。
そうしてまでも家族を守りたかった。それだけのことをした人間によく怒鳴られるものだ。
パパにとって私は、何?
パパにとって18禁ゲームは、何?
どっちが大事なのか、よく考えてほしいと思うのだ。
18禁ゲームをやる前にやらなければならないことがあるはずなのに。
以前、パパは、指輪を売った帰りに「貴金属には、執着しないのね。」と言ったことがあった。
物凄く憤慨したと同時に悲しかった。
「うん。執着しないよ。」とやっとのことで言った。そんなはずはないのだ。自分の大切な物なのに執着しないわけがなかった。
「私の指環がなくなる…」悲しかった。
指環だけじゃない。鞄も時計も靴もネックレスも洋服もみんな惜しい。
普通ではいられない。平常心では、ないのだ。
パパは、そういうことを悪いと思わないのか?
そんな思いしてまでも家族を守りたいのだ。
そこまで思っても、パパには伝わらないのか?
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