インドにあるビリヤニのバリエーションを調べていたら30種類以上あったのでひたすら紹介して羅列していく
ビリヤニを炊くたびにますますビリヤニがわからなくなる。わからなくなった時は一度インドに帰ろう。
今回はインドにある料理の中でビリヤニと名のつくものをひたすら調べてみた。(気づいたら30種類にもなっていた。)
ビリヤニの親戚やビリヤニ的な料理も世界中にたくさんあるけどそれは一旦置いておいて、今回はインド国内でのビリヤニのバリエーションにフォーカスしている。
一口にビリヤニと言っても必ずバスマティライスを使うとは限らない。今回は登場しないが中には芋や麺を使ったビリヤニもあって、米を使わなくてもビリヤニと呼ばれたりする。ビリヤニとは一体なんなのか?その追求の旅はまだ始まったばかりだ。
今回はこのビリヤニマップをもとにインドにあるビリヤニを調査し、羅列していく。アルファベット順に並べてみた。
インドのいろいろなビリヤニ30種類
Achari Biryani アチャールビリヤニ
アチャーリービリヤニというのがある。マスタードシード、フェヌグリークシード、カロンジ、コリアンダー、ベイリーフ、クミンシードなどを使ったアチャールマサラと青唐辛子で即席アチャールっぽいものを作り、それをビリヤニに使うビリヤニ。
後述のデリーのビリヤニには青唐辛子のアチャールを使うのが定番のようなので、何か関係があるのだと思う。
Ambur biryani アンブールビリヤニ
アンブールビリヤニ。Amburはチェンナイから180kmほど離れた街の名前である。隣町のVaniyambadiとまとめられることも多い。カルナータカのムガル大守の元でシェフをやっていた人が開いたお店が正統とされる。バスマティで作られることもあるが基本は短粒のシーラガサンバで食べられる。
肉の強い香りが特徴で、同じムガル直系であるアワディビリヤニとも近いものがある。ダルチャやパチャディと一緒に食べられることが多い。
パラパラじゃなくてもこういうしっとりビリヤニもうまい。
Awadhi biryani アワディービリヤニ
アワディービリヤニは、かつてムガル帝国の首都があったラクナウのビリヤニのため、ラクナウビリヤニとも呼ばれる。
ハイデラバーディビリヤニとも共通して、両者とも長時間ダムして作られるがアワディビリヤニは少しスパイス感が弱く繊細な香りとされる。
バスマティライス使用。
Beary Biryani バーリービリヤニ
バーリービリヤニ。Bearyというのはカルナータカ沿岸部の都市、マンガロールに住むムスリムのこと。
グリーンマサラ、ココナッツミルクとカシューナッツのペーストなどを使用し、ミーンポリチャットゥのようにバナナの葉で全体を覆って蒸しあげるビリヤニ。
Bhatkali Biryani バトカリビリヤニ
バトカリビリヤニ。カルナータカ沿岸部のbhatkalというところに住むムスリムのビリヤニ。マンガロール近くの湾岸エリアで作られるパラッとしたビリヤニのことを指す。具材はチキンが主体らしい。
ヨーグルトを使わず玉ねぎと青唐辛子ペーストでマリネする。
Bombay Biryani ボンベイビリヤニ
ボンベイビリヤニ。既成ミックススパイスのボンベイビリヤニマサラを使っているお店は地味に多いような気がする。フライした肉とじゃがいもが乗っかっているのが大きな特徴だがいまいちキャラが薄い。コルカタビリヤニとキャラ被りしている気もするけど、ドライプラムによって酸味と甘みが加えられているのが大きな特徴である。お米はバスマティライス。
ボンベイビリヤニはイラン人移民の影響を受けているという。
Chettinad Biryani チェティナードビリヤニ
チェティナード料理で有名なチェティナード地方のビリヤニ。タミルナードゥのチェティヤール商人のコミュニティで作られているビリヤニ。ジーラカサンバで作られ、ヤギグレイビーのNenju elumbu kuzhambuやチキンカレーの一種Podi kozhiと一緒に食べられる。
層を分けずグレイビーと米を一緒に炊き上げるタイプ。
Degh Ki biryani/Akhni Biryani of Parbhani デーグ・キ・ビリヤニ
デーグ・キ・ビリヤニは鍋(デーグ)で炊いたビリヤニってことですね。西インドマハラシュトラのParbhaniの結婚式でのみ提供されるビリヤニ。バスマティではなく、短粒米で炊かれる。厚切りベーコンのような形の肉が特徴的。
Delhi Biryani デリービリヤニ
デリービリヤニ。インド三大ビリヤニタウンとされるのはハイデラバード、ラクナウ、デリー。ムガルの王たちが政治の中心をデリーに移してから発展したそう。寺院やモスクなど人が集まるような場所の周りには必ずビリヤニ屋がある。
ビリヤニ太郎さんのブログによるとパーボイルド米であるセーラ米の使用、グレイビーと肉の着色、青唐辛子アチャールの使用が特徴だそう。
Donne Biryani ドンネビリヤニ
ドンネビリヤニはバンガロールの代表的なジーラガサンバライスを使用したビリヤニで、ドンネとは乾燥させた椰子の葉っぱで作られたカップのこと。このドンネで提供されることからその名前がついている。
Shivaji Military Hotelが有名。(ノンベジレストラン)
Doodh ki Biryani ドゥード・キ・ビリヤニ
ドゥード・キ・ビリヤニは名前の通り牛乳で炊いたビリヤニ。ハイデラバーどのビリヤニの一種なのだが典型的なハイデラバーディとは対照的にあっさりと淡い味わいに仕上げる。
Dindigul biryani(Dindigul Thalappakatti biriyani) ディンディッグルビリヤニ
ディンディッグルビリヤニ。ディンディッグルはタミルナードゥにある都市でビリヤニが有名。Dindigul Thalappakatti biriyaniというインド国内外に100近くの支店を持つレストランチェーンが生まれた場所でもある。Thalappakattiというのは創始者が頭にかぶっているものの名前に由来する。
バスマティではなく、短粒米のシーラガサンバライスが使われる。
Hyderabadi Biryani ハイデラバーディビリヤニ
ハイデラバーディビリヤニは、もはやビリヤニの代名詞と言っても過言ではないようなビリヤニだ。マリネした生肉から炊き込んで作るカッチビリヤニが有名だが、実際にはその歴史は浅く戦後にイラン移民によってプロモーションされたものらしい。
ハイデラバードの有名な食堂のビリヤニは特に明記していない場合ほとんどはパッキ式である。大抵ピーナッツと青唐辛子のグレイビーであるミルチカサーランとヨーグルトソースのライタ(ダヒチャトニー)が添えられる。
Jodhpuri Kabuli (Jodhpuri Biryani) ジョードプリビリヤニ
ベジタリアンが多いラージャスターン州Jhodpurのビリヤニは野菜だけで作られていて、ドライフルーツがトッピングされている。プラオって紹介されているけどビリヤニ。
Kampuri Biryani(Assamese Biryani) カンプリビリヤニ
ムスリムのいるとこビリヤニありということでアッサム州Kampurのビリヤニ。アッサムビリヤニとも。豆やじゃがいも、ピーマンやにんじんなどの野菜がふんだんに使われているビリヤニ。カラフルに仕上げる。
Kalyani Biryani カリヤニビリヤニ
カリヤニビリヤニはハイデラーバードで食べられる、水牛(バッファロー)の肉を使ったビリヤニ。牛肉のこともある。
チキンやマトンの方が人気が高く、ヒンドゥーの人たちにとっては牛肉はタブーなのでチープなものとして扱われているらしい…。バッファローの肉は部位にもよるがしっかり調理すれば十分おいしい。
Kashimiri Biryani カシミーリービリヤニ
ムガル皇帝の避暑地だったカシミールも当然ビリヤニの文化が残っている。カシミールスタイルのビリヤニはドライフルーツやナッツ、ミルクやギーなどで甘いプラオのように仕上げられる。ヒングが入れられるのが特徴的。
Kataki Biryani カタッキビリヤニ
オディシャ州Currack(カタック)で有名なビリヤニ。ペルシア料理の伝統を受け継ぐ。マトンは半分加熱した後、米と合わせてダムで炊き上げられる。オディシャらしくレーズンやドライナッツなどを加えて甘めに仕上げられることも。
Kolhapuri Biryani コラプリビリヤニ
西インドのKoljapurといえば激辛のノンベジ料理で有名。肉とココナッツの入った肉入りのグレイビーを作ってビリヤニに仕立てたもの。
Kolkata Biryani コルカタビリヤニ
コルカタのビリヤニはうまい。アワディビリヤニが変化したのがコルカタビリヤニと呼ばれるビリヤニ。じゃがいもと茹で卵がゴロンと入り、比較的薄味でミルキーな仕上がりのため付け合わせはない。スパイスミックスとしてはメースやホワイトペッパーを多用するのが特徴的で、クリームやコヤ(煮詰めたミルク)などの乳製品も入れて炊き込む。ケウラウォーターやmeeta attarなどで独特な香りがつけられている。
王国を失ったナワブが肉を買う余裕がなくシェフがジャガイモを加えて補ったというのは俗説で、新大陸からの珍しい野菜が王の元に献上されて使用されたということらしい。
Malabar biryani マラバールビリヤニ
マラバールビリヤニはマラバール地方一体に広がるビリヤニの総称なのでそれだけで多くのバリエーションがあり、たとえばKannnurとKozhikodeでは全く別物の可能性が高い。米は短粒のカイマライスを使用し、具材と米を別々に調理した後に合わせてダムする。
Thalassery biryaniはMalabar biryaniの一種と考えられる。チリパウダーをあまり使わないので米に色がつかない。
Memoni/Kutchi biryani メモニビリヤニ
グジャラート州の中にパキスタンのシンド州から移住した人たちのコミュニティがあり、その人たちがMemonと呼ばれている。その人たちのビリヤニだからメモニビリヤニ。シンディービリヤニとも似ているがこちらの方が激辛に仕上げられ、トマトの量が少なく、着色料が少ないナチュラルな色の仕上がりになっている。
Shanのmemoni biryani masalaを使わないレシピがあまり出てこなかった。そんなにチリが多いわけではないし、いきなり着色している…。定義がよくわからなかった。
Mughal Biryani ムガルビリヤニ/ムグライビリヤニ
ムガル帝国の厨房が発祥のビリヤニという料理に対してムガルビリヤニっていうのは何かおかしいような気もするがそういうレシピが存在する。デリーによくみられるタイプのビリヤニで、デリービリヤニと同一視されることもある。
Muradabadi Biryani ムラダバーディビリヤニ
ハイデラバード以外にカッチスタイルがあったのか。ラクナウが発祥とされているけど、ムラダバードの名前を冠したビリヤニ。
Murshidabadi Mahi Biryani ムルシダバーディ・マヒ・ビリヤニ
かつてベンガルやビハール、オディシャ一体を支配していたムルシダバードのフィッシュビリヤニ。mahiはペルシャ語で「魚」の意味。
ビリヤニは歴史の遺産なのだな。
Mutanjan Biryani ムタンジャンビリヤニ(肉入りデザートビリヤニ)
デザートビリヤニというジャンルがあるわけではないが、実質デザートのように甘いビリヤニというのも存在する。ザルダと呼ばれる甘いビリヤニのようなものがパキスタンにあるが、これはもっとすごい。マトンと米が入ったデザートビリヤニである。
骨なし肉をバターミルクとクリームでマリネして、米と共に炊き上げて甘く仕上げる。なんでそこで砂糖入れちゃうの?
Rampuri Degi Biryani ランプリ・デギ・ビリヤニ
Rampuriというの北部ウッラルプラデーシュの街の名前で、18世紀頃から刃物の生産で有名であり、ナイフのことがRampuriと呼ばれることがある。ナイフは関係なく、Rampuriのビリヤニ。
赤く着色すると細長い人参の入った中央アジアのポロのようにも見えるけど、そういうところにも由来しているんだろうか。
Rawther Biryani ローサービリヤニ
ケーララ州、タミルナドゥ州のパラッカド地区、コインバトール地区のRawther ムスリム・コミュニティで有名なビリヤニ。ジーラカサンバライスを使っている。
kaicharとmelon halwaという付け合わせと共に食べられるという記述がよくあるのだが、グレイビーソースのようなものだろうか。
Sindhi Biryaniシンディビリヤニ
これもアワディビリヤニとルーツは同じと言われるが、シンディービリヤニはパキスタンのシンド州から移り住んできた人々のビリヤニ。パキスタンにあるstudent biryaniというビリヤニチェーンのビリヤニはまさにこのスタイル。
プラムの一種であるアルブハラを入れたり、レイヤーを作るときに生トマトを入れてダムするのも一つの特徴。
Tahari/Tehri テハリ
テハリはバングラデシュ料理としてのテハリが有名だが、今回はアワド料理のテハリ。両方ともイスラムの影響が強い料理だがアワドのテハリはベジタブルテハリらしい。じゃがいもがゴロっと入った米料理。
元々は外国から来たはずのビリヤニという文化がインドの各地域に広まって受け入れられ、また各都市でオリジナルのマイナーチェンジがたくさん生まれた。基本的にムスリムのあるところにビリヤニあり。これらの全てのビリヤニは何らかのつながりを持っているはずなので系譜図を描いてみたら面白そう。
全てはただのマイナーチェンジのようにも思えるのだが、各文化として当の人たちにとってははっきりと区別されているものであり、単なる「ビリヤニ」の一言で塗りつぶせるものではないなと思いこの記事を書いた。
インド国外にもビリヤニやビリヤニの親戚のような料理が山ほどあるんだけどそれは次回の課題にしよう。
参考:
ブログはこちら。
ビリヤニに欠かせないバスマティライスについてはこちら。
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