読了:白夜行

こんな終わり方があるのか…

最後まで読んだ最初の感想はこれだった。

伏線のちりばめ方が、とても絶妙だった。

読者がきちんと気が付くように、さり気なく、でも不気味に、そこかしこに撒かれていた。

特に、雪穂の鍵の鈴なんて特にそうだと思った。

鞄に鍵を入れたまま、母親の発見を横で見ていたであろう雪穂を、想像するだけでぞっとした。

手口

動機や手口が明記されていないことも、この話の不気味さを際立たせていたように思う。

もうほとんど、バラしているようなものだった。

そこまで書かれていたが、よくあるミステリのように、誰かが関係者や犯人の前で、滔々と語るようなことがなかった。

自分の頭で整理して、腑に落ちるしかないという突き放され方はかっこよく見えた。

緻密さ

あんなに分厚いのに、飽きるどころか、のめり込んで、久々に読書で夜更かしをした。

ある方のレビューで、「無駄な部分が一切ない」と書かれていたが、本当にそうだった。

全てが必要で、全てが緻密に作用し合っていた。

読み終わってから気が付いたが、結局最後まで雪穂と桐原が直接会話を交わすシーンは出てこなかった。

奈美恵

奈美恵が亡くなるシーンが1番悲しかった。

まさか、と思った予想が外れて、はじめてここで読む手を止めた。

なんとなく、彼女のことを気に入っていた。

桐原といいタッグのようにも見えた。

あっけなく切り捨てた桐原を少し恨んだ。

桐原

最後のシーンで、最初、彼はツリーに刺さって死んだのかと思った。

実際の死因は鋏だったので反省した。

しかし、こんなに周到にしておいて、なぜ彼は危険を犯してまで、雪穂の店に現れたのか。

しっぽを掴まれていることに気が付いていないわけが無いはずなのに。

それほどまでに雪穂が大切だったのだろうか。

1度も振り向かなかったような人なのに。

雪穂

彼女は最後、エスカレーターを昇って行った。

そこで話は終わりだが、そのすぐ後にでも、彼女も桐原の後を追って命を絶つのではないかと思った。

なんせ、今まで運命共同体のように生きていたのだ。

しかし、彼女に限ってそれはない、というような気もした。

飄々と、彼がいなくなっても生きていきそうだ。

今までのように、色んな人を懐柔して、上手くいかなければ手を回し、服従させるように貶める。

この本でいちばん怖いのは間違いなく彼女だ。

幼少期の復讐をしたかったのならわかる。

しかし、何故それでは足りなかったのか。

成り上がりたかったのだろうか。

わからないこと

彼女の好きな人は、桐原だったのでは無いかと思っていた。

本当に一成が本命だったのだろうか。

だから江利子に酷いことをしたのか。

そして、都子と江利子は未遂で、なぜ美佳は最後まで傷付けたのか。

雪穂も亮司も子どもを作れそうにないのは過去の事件が原因なのか。

わからないことだらけだ。

雪穂が中道のゲームのデータをどのようにして盗んだのか。(差し替えた?)

絵里の電話に盗聴器を仕掛けたのは雪穂なのだろうか。

まとめる

事件の当時は、笹垣の言っていたように、きっと雪穂は傷付けられていたのだろう。

母親に売られ、桐原(父)に、もしくはもっと他の人にも襲われ、それを目撃した桐原(亮司)が桐原(父)を鋏で殺した。
発見したのは菊池の弟。

そこからの雪穂の動機は、高い地位につくことにあるように思われる。

まず亮司と協力して母を殺害した(鍋の味噌汁をこぼしたのは雪穂か、亮司か)。

寺崎を殺害したのは、雪穂の仇か、証拠隠滅か。

そして雪穂は礼子の家の養子となった。

亮司は事件に繋がる写真を持つ菊池を、雪穂は過去の噂を流した都子を懐柔するために、また手を組んで動いた。

次は、雪穂が高宮に取り入って、高宮の会社のデータを亮司へ売った。
それを使って亮司は一稼ぎした。

雪穂は亮司から情報を得て株を当てた。

最後まで、この2人がどうやって連絡を取り合っていたのかわからなかった

そして亮司は、栗原典子を利用して製薬会社のデータを盗んだ。

これだけでもずいぶんたくさんなのに、まだ2人は手を組んで礼子の殺害偽装もしたし、雪穂は高宮から離婚の慰謝料をぶん取った(はずだ)。



どれだけ書いても書ききれない。

2人はお互いをどのように思っていたのか。

読み終わっても頭から離れてくれない。

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