脳が現代社会に適応できないことで鬱になる〜スマホ脳を読んで
現生人類と非常によく似た動物が初めて姿を現したのが250万年前。
そこから50万年の時を経て、アウストラロピテクス属と呼ばれる先行する猿人が東アフリカで生まれ、そこから170万年の月日が経ち、脳の突然変異と呼ばれる「認知革命」が起きた。
「サピエンス全史〜ユヴァル・ノア・ハラリ著」より。
この歴史から見ても、人類誕生から、200万年の時を経て、他の動物と同じように、環境に適応するように進化してきたことが理解できる。
脳の進化は、それくらい時間がかかるのだ。
そこを踏まえて、現代の人類の脳と環境の変化を見ていくと、人類の脳は、約1万年前の狩猟採取民の時から、現代までほとんど変わっていないことが理解できる。
私たち現代人の脳は、文明社会の中に生きながら、狩猟採取民の頃のままで現代を生きているのだ。
脳は、過去・今・未来を区別できない。
今、生きている世界に、飢餓や感染症、殺される脅威などがなくても、脳は狩猟採取民の頃のまま、あらゆる環境の中で、私たち現代人に同じように不安や恐怖を与えている。
本日は、「スマホ脳〜アンデッシュ・ハンセン著」より、現代の環境に適応できない脳とうつ病の関係という内容でお伝えしていきます。
狩猟採取民時代の人類
スウェーデン社会庁のデータによると、2018年12月現在、16歳以上の100万人近くが抗うつ剤の処方を受けており、9人に1人がうつと診断されていると発表された。
なぜ、鬱で苦しむ若者が増えたのか。
それは、私たちの脳が未だ、この情報化社会において、狩猟採取民の時代のままの不安や恐怖を感じる仕組みだからです。
狩猟採取民時代の私たちには、日常にあらゆる脅威が存在していました。
当時は、50人から150人程度の集団で暮らし、住居も簡素で常に獲物を探して移動する、そんな生活でした。
オックスフォード大学の心理学者ロビン・ダンバーは、人間はおよそ150人と関係を築くことができると発表。(この数をダンバー数という)
なぜ、他人の名前を覚え、認知する必要があるかというと、自分の仲間か、それ以外かを見極めることで、「闘争か逃走か」を判断する基準を作るためと言われています。
この「闘争か逃走か」を瞬時に見極めるために、脳はストレスホルモンであるコルチゾールを分泌し、ノルアドレナリン活性を促します。
ロバート・サルポスキー(スタンフォード大学進化物生物学教授)はこう伝えています。
「地球上に存在した時間の99%、動物にとってストレスとは、恐怖の3分間だった。その3分が過ぎれば、自分が死んでいるか、敵が死んでいるかだ」
つまり、狩猟採取民時代の私たちにとって、ストレスとは、死ぬか生きるかの3分間のみだったということなのです。
現代人は人に出会いすぎる
世界で初めてソーシャルネットサービスを開始したFacebook。
総ユーザー数は20億人。
スマホのアプリをタッチし、Facebookを開くと、毎日、知らない人が画面をスクロールするたびに、顔をのぞかせ、その人たちの日常が映し出されます。
ホモ・サピエンスが、他のホモ属である、ホモ・エレクトスやホモ・デニソワ、ホモ・ネアンデールタールを根絶やしにし、ホモ・サピエンスだけを人類にした理由は
自分と違った外見、匂いを、不快におもい、自分と違う生き物は敵だとみなしてきたからです。
人間にダンバー数があるのも、この人物は自分に脅威を与えない人物かどうかを見極めるため存在している脳の機能。
狩猟採取民時代は、自分の味方か敵か、信頼できる人物かどうかを見極めることが生死を分けるポイントとなっていたのです。
現代、SNSを活用する多くの人が、毎日、知らない人の投稿を見るたびに、脳内で「この人は信頼できる人なのか」という判断を無意識に下し、
ストレスホルモンであるコルチゾールを分泌させ、「闘争か逃走か」を見極めるために、常に構えているような状態です。
その上で、ロバート・サルポスキー教授は現代人のストレスをこう述べています。
「我々、現代人はというと?それと同じストレスを30年ローンで組むのだ」
人類の歴史の中で、負の感情は脅威に結びつくことが多く、食べたり、眠ったり、交尾したりは先延ばしにできても、ライオンに襲われそうになったら、素早くその場から逃げないと死に至る。
「闘争か逃走か」を見極るたった3分のために、分泌されるコルチゾールを、日常生活で常に分泌させているから、現代人は鬱になるのです。
長期にわたって起こるストレスの代償
狩猟採取民の頃のストレスは、ライオンや敵となる他者に襲われた時の「闘争か逃走か」を見極める3分間のことでした。
でも、現代のストレスは、忙しい日々の予定を焦ってやりくりし、時間に終われる日々と共に、スマホ中毒に陥り、10分間に1度、スマホを見る習慣によって発生することがほとんどです。
明らかに狩猟採取民時代と今の現代では環境が異なります。
「もう、生きるか死ぬかの脅威に晒されることはないんだよ」と意識の自分は分かっていても、長きに渡り、その脅威に晒されてきた無意識部分の脳は、それを理解することができません。
脳は、現代の環境から発生するストレスを、生命を脅かされる脅威だと認識しているため、
コルチゾールが分泌されると、ストレス=危険と判断し、頭から毛布をかぶって隠れろ!と、ひどく気分を落ち込ませ、危険いっぱいの環境から私たちを遠ざけ、行動できないように引きこもらせようとするのです。
うつ病は、人類が強いストレスを感じた後、発生する病ですが、この病は、歴史上、感染症、殺される脅威などから身を守るための防衛の役目をしていました。
鬱になると、細菌やウイルスに対する防御態勢が整い、感染症にかかりにくくなるという研究が出ています。
狩猟採取民時代は、物質である『体』を守るのに必死で、『心』が生命を脅かすとは思っていなかったのでしょう。
脳は、必死に、ストレスに晒された私たちを守ろうとしている。
200万年の時を経て、人類の脳は、進化を遂げ、環境に適応してきた。
たった1万年でここまで環境が変わり、いますぐ現代に適応しようとしても、人類の脳の進化は、そんなに簡単に適応できないのです。
認知革命によって、意識が誕生した私たち人類は、自分の意思で、「命」を立つことができる生物であることを、無意識の脳は理解できていないのです。
鬱にならないためには?
進化生物学者、リチャード・ドーキンズは、このように述べています。
「ある意味、驚きだ。これほど異質な環境にいるのに人間が今以上の精神疾患にかかっていないなんて。」
現代人の日常には、ストレスホルモンのコルチゾールが分泌される瞬間が山ほどあります。
私たちは、何も学ばず、何も考えないで、与えられた環境の中でただ、流されるように生きていたら、
狩猟採取民時代の脳のバグによって、心に過度にストレスがかかり、自然とうつ病などの精神疾患に陥ってしまうのです。
本書では、脳にとって、この情報化社会という異質な環境の中、健康的に生きるために、必要なことは、「感情を言葉に表すことが大事」と伝えています。
日本にも古くから言葉には言霊があり、言葉に出したことが現実になるという教えがありますが、
言葉には、脳のバグを修正する役目があるため、時代遅れの欠陥だらけの脳を教育し、思考の癖を変化させる役割があるのです。
私は言霊のおかげで、人生が変わる瞬間を経験しました。
この経験で、自分の意思で生きることの大切さ、目に見えないものの大切さを理解することができました。
1万年前から変わらず、狩猟採取民生活をしていると思っている脳に言いたい。
「体」をいくら守っても、「心」が生死を判断するから、その行為は無駄だ。
私の父は、脳梗塞になり、右半身付随の体と自分で生きられない不自由な現実を目の当たりにして、鬱になり、自分で死を選んだ。
この1万年という歳月の人類の変化についていけず、どれだけの人が自ら命を絶ったのか。
斎藤一人さんは、こう言います。
「この脳にやられるんだよ。脳は何かにつけて怠けようとする。時々叱ってやらないといけないんだよ」
言葉には、魂が宿っている。
この時代遅れで欠陥だらけの脳は、常に不安に目を向け、私たちの心をネガティブな状態にし、ただ生き延びることだけを優先させる。
だから、思考の癖を自分の意思で変化させるのだ。
楽しい、嬉しい、幸せだと、常に日常生活、言葉に出すことで、脳は、不安を引き寄せるのをやめ、幸せな部分に目を向けるように変化する。
何もしなかったら、人は不幸になる生き物なのですよ。
愛ある言葉で、人生をより良く彩ってくださいね。
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