ノラ子猫あずかり日記 9   (猫小屋からの脱走)

保護猫として預かったノラ子猫達も、ここ数日2匹そろって寝床に入っているのが確認できた。

「2匹は仲が良いね。」
「寝床はココだと理解したみたいで安心だね。」

毎朝ビニル温室の扉を開けて、エサと水を与えるパターンを猫達も覚えてきたので、朝のエサやり時は2匹共揃って待っているようになった。

最近は、昼間に裏庭の日向で、2匹がじゃれ合っている姿をよく見かける。

時々ビニル温室の猫小屋に帰ってエサを食べ、また外に出て遊んでいる。

今回のノラ子猫の預かりは、地域猫として巣立ちさせるための一時預かりなので、昼間は干渉しないで猫達の自由にさせている。

◇◇◇◇◇◇◇◇

今日は晴れて天気が良いので、猫小屋の風通しと寝床の日向干しをすることにした。

ビニル温室の扉を開放して、発泡スチロールの猫小屋を取り出し、裏庭の日向に出して寝床の中を乾かす。

「寝床がカラッとしていると気持ち良いよねー。」

家の中には、病気の室内飼いネコがいるので、子猫達が家の中に入ってこないように、物置きの中を歩かせないようにしている。今日は特別で、寝床が乾くまでの間ビニル温室の扉を開放するので、子猫達は物置きの中を自由に歩き回れる。

2匹は、突然我が家にやってきた時と同じように、物置きの中を自由に歩き回っている。

「好奇心が旺盛だねー。」

この物置きは、リビング窓の外側にウッドデッキを作って、周囲を壁と屋根で囲ったDIY作品だ。
内壁は取付けていないため、屋根の梁が丸見えである。

2匹はこの梁の上を歩いている。

「どこから上がったんだろう。」
「高いところが好きだねー。」
「降りてこないと困るー!」

家族の心配をよそに2匹は鳴きながら歩き回っている。

やがて寝床も乾いたので、ビニル温室を元に戻し、エサと水を入れ替えていると、猫達は猫小屋へ帰ってきた。

「かしこいねー。」

少しつづ子猫達との距離が近くなって来たのを感じた。

◇◇◇◇◇◇◇◇

次の日だった、物置きの猫小屋の外側で、ガサゴソ音がする。
「何かいる!!」

リビングの窓越しで物置きの中を覗いて見ると、猫小屋の中から床マットがはみ出しているのが見えた。ビニル温室の扉は閉まっている。

「どうしたんだろう。」

窓をゆっくり開けて物置きに入り、周囲をぐるっと見渡して驚いた。
なんと捨てようと思っていたキャットハウスに、黒ブチの子猫が入っているではないか。

「え、何で?」

黒ブチ子猫の可愛いらしさに、驚きと笑いが混ざって、状況が一瞬理解できなかった。

ふたたび猫小屋からはみ出している床マットに目をやり状況を確認すると、どうやら内側からマットを押し出した事でビニル温室が持ち上がり、すき間が出来たのでそこから抜け出したんだろうと想像できた。
よく見ると、ビニル温室の下側は骨組みに固定してあるが、扉は固定していないので閉めても下側は柔らかく伸びる状態であるのに気がついた。

子猫は、外に出れたが猫小屋に戻れなくなり、寒くてキャットハウスを見つけて中に入っていた状況だったと理解した。


「チャックの開閉できて、下側が伸びないようにできない?」

そんなムリと思ったが、とりあえず扉下側に結束バンドを使って棒を固定する事にした。

「掛軸の下側のようになったのでチャックで閉めても、ビニルは伸びないよ。」

これで扉下側のビニルが伸びないので、猫小屋の内側から床マットを押し出す事ができなくなった。

「ビニル温室の弱点が分かったよ、教えてくれて有り難う。」

黒ブチ子猫に感謝して一件落着。

___ つづく ___


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