映画『私のように美しい娘』 (ネタバレ感想文 )ニンフォマニアックかと思った
私、ゴダール嫌いのトリュフォー好きと自称していますが、観てないトリュフォー作品がまだまだありまして、この映画もその一つ。
あいつ、早死にしたくせに多作なんだよ。
今回、トリュフォー生誕90周年上映で鑑賞するつもりが見逃して、そのアンコール上映でやっと鑑賞。本当に観る気あんのか?
上映は、短編映画『あこがれ』(1958年)と併映でした。
(この短編は以前観たことがある)
何故この2本立てなんだろうと思ったら、主演女優が一緒だったんですね。ベルナデット・ラフォンという女優さん。
観る前に情報を仕入れておけばよかった。観てる時は全然気づかなかった。
ついでに短編『あこがれ』について短く感想を言うと、エロい。
少年たちの視線で年上の綺麗なお姉さんを見ている体で、カメラ越しにムチムチプリプリの女体を見つめるトリュフォーの視点がエロい。
大胆な寄りのショットがエロいんすよ。
この寄りと移動撮影(当然オールロケ)は、いま観ると何でもないかもしれないけど、当時は斬新だったでしょう。「これがヌーヴェル・ヴァーグなんだ」と改めて思う。
で、『私のように美しい娘』 ですが、あんなに可愛らしかったお嬢さんが、14年経ったらすっかりアバズレですよ。アバズレって何語だ?
『ニンフォマニアック』(2013年)かと思った。
デンマークの鬼才 ラース・フォン・トリアーの2部作計6時間延々性描写を続けるあの壮大なブラックジョーク映画ね。
『ニンフォマニアック』は色情狂の女がヤリ三昧の半生を語る映画なんですよ。ほら、同じでしょ?
同じコメディーだしね。コメディーなのか?
いや、でもね、なんかこう、トリュフォーとか名匠と呼ばれる監督の映画って常に高尚な解釈が付きまとうけど、本人はそんな難しいこと考えてなかったと思うんですよね。
純粋にバカコメディーが撮りたかっただけじゃないかな?
多作だって前述しましたが、ジャンルも多様なんですよ。
てゆーか、この映画のジャンルは何?
何?最後、無理やり塔に登るのとか。『めまい』(1958年)なの?『めまい』なんでしょ、ヒッチコック好きなんだから。
そうは言いながら、『突然炎のごとく』(1962年)が女性解放運動の先駆けとして外国映画を観ないアメリカ人(の知識層)にも喝采を持って受け入れられたという話を聞いて気づきました。
トリュフォーには「女性の生きざま映画」というジャンルがある。
私が先日観た『アデルの恋の物語』(75年)もそうですし
ドヌーヴ『終電車』(80年)とか『隣の女』(82年)とか。
『隣の女』なんかファニー・アルダンとドパルデューがイチャイチャしてんだぜ。超面白い。
そう考えると本作も「女性の生きざま映画」というジャンルの一つに思えてきます。
実際、設定はラースっぽいけど、読後感は今村昌平的「したたかに生き抜く女」感がある。
ただ、トリュフォー研究には興味深い一作かもしれないけど、そもそも映画として面白いかぁ?
いやあ、正直言うとね、トリュフォーの(もしかするとフランス人の)笑いのセンスが分からないんですわ。
(2022.08.12 角川シネマ有楽町にて鑑賞 ★★★☆☆)