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私の映画鑑賞録2021(ネタバレ感想文)

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2021年新作映画のマイベストは『トムボーイ』。いや、日本公開が今年だっただけで本当は2011年の映画だけど。
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2020年12月の記事一覧

まるで溝口みたいなサディスティック映画。『風の中の牝鷄』ネタバレ感想文

小津作品の中で「失敗作」として有名な(?)、1948年(昭和23年)作品。 小津安二郎45歳頃。復員して2作目だとか。面白かったですけどね。 ああ、でも修復はしてほしいな。早稲田松竹で観たんだけど、音が酷いったらありゃしない。 当時不評だったそうですよ。 佐藤忠男によれば「敗戦の苦しみと未来への希望を描くありきたりの戦後風俗映画」が当時多く、小津ですらそんなものを撮ったのかという失望感があったとかなかったとか。 後に再評価もされていないんですよね。 だって、まさか小津がこ

アメリカンな浪花節映画。小津安二郎『非常線の女』ネタバレ感想文

1933年(昭和8年)、小津安二郎30歳頃の無声映画。 まだ小津スタイルは確立していないけど、本質的な何かは小津っぽい。 小津がアメリカ映画好きだったことは知っていましたが、その影響を(分かりやすく)受けた作品を実際に目にしたのは初めてかもしれない。 まさかのギャング映画。ギャングというか愚連隊? 原案の「ゼームス槇」なる人物は小津安二郎の別名だそうなので、小津はノリノリでこの話を書いたのだと思われます。まさか小津映画で拳銃が出てくるとは思わなかった。ま、ノリノリだったか

くちびるつんと尖らせたのんが最高に素晴らしい。映画『私をくいとめて』ネタバレ感想文

祝「A LONG VACATION」40周年。ついでに祝・吉住「The W」優勝。 この映画を鑑賞した日の午前、偶然同じネタをテレビで見てたよ。 私は『勝手にふるえてろ』で勝手にふるえて以来、大九明子ファンです。 「女性の生き様」を描く監督だと思っています。「生き様」って言うとイマヘイ『にっぽん昆虫記』みたいだな。訂正。「今どき大人女子の生き方」を描く作家。ドラマ「捨ててよ、安達さん」も面白かったしね。 彼女が主に描くのは、30-40歳代の「若さだけでは押し切れなくなった

痛いのイヤ。苦しいのキライ。フィンランド映画『ブレスレス』ネタバレ感想文

『惑星ソラリス』は亡妻を想うSF映画ですが、これは亡妻を想うSM映画。 痛いの嫌い。苦しいの嫌い。匂いもあんまり好きじゃない。聖水とかムリ。女性の素肌が好きだから全身ボンテージとかあり得ない。だって若い頃、タイトルだけで『白い肌の異常な夜』(テレ東放映)を観ちゃったくらい素肌好きだもん。 つまり私、この映画の主人公というかM男の気持ちが全く理解できないんですよ。まるで他人事で観ていました。 映像は、冒頭からワクワクするほど、スタイリッシュで魅力的です。 被写体を素直に正