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痛いのイヤ。苦しいのキライ。フィンランド映画『ブレスレス』ネタバレ感想文

『惑星ソラリス』は亡妻を想うSF映画ですが、これは亡妻を想うSM映画。

痛いの嫌い。苦しいの嫌い。匂いもあんまり好きじゃない。聖水とかムリ。女性の素肌が好きだから全身ボンテージとかあり得ない。だって若い頃、タイトルだけで『白い肌の異常な夜』(テレ東放映)を観ちゃったくらい素肌好きだもん。

つまり私、この映画の主人公というかM男の気持ちが全く理解できないんですよ。まるで他人事で観ていました。

映像は、冒頭からワクワクするほど、スタイリッシュで魅力的です。
被写体を素直に正面から捉えることがほとんどないんですよね。
画面の左右、奥行き、様々なパターンを使って、面白い画面(えづら)を魅せてくれる。
まるで「分かりやすい映像」を意図的に排除しているようです。
おそらく映画自体も同様なのでしょう。
登場人物が、その心情を素直に吐露することは皆無に近い。

映像は面白い。設定も面白い。でもそれ以上に話が転がらない。正直、話が失速していく印象が否めない。

「歯を抜きたい」とまで言い出す女の心情をもっと丁寧に描くか、あるいは逆に男視点に徹底して「女の考えてることがまるで分からない(でもフッとその背後にある感情が垣間見れる)」って方が面白かったと思うんですけどね。

やっぱりこの手の話は、男と女の立場が逆転しないといけないんですよ。
『白い肌の異常な夜』然り。
SM物なら、ポランスキー『毛皮のヴィーナス』然り、若松孝二『胎児が密猟する時』然り。
(2021.12.13 ヒューマントラストシネマ渋谷にて鑑賞 ★★★)

監督:ユッカペッカ・ヴァルケアパー/2019年 フィンランド(日本公開2020年12月11日)

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