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くちびるつんと尖らせたのんが最高に素晴らしい。映画『私をくいとめて』ネタバレ感想文

祝「A LONG VACATION」40周年。ついでに祝・吉住「The W」優勝。
この映画を鑑賞した日の午前、偶然同じネタをテレビで見てたよ。

私は『勝手にふるえてろ』で勝手にふるえて以来、大九明子ファンです。
「女性の生き様」を描く監督だと思っています。「生き様」って言うとイマヘイ『にっぽん昆虫記』みたいだな。訂正。「今どき大人女子の生き方」を描く作家。ドラマ「捨ててよ、安達さん」も面白かったしね。

彼女が主に描くのは、30-40歳代の「若さだけでは押し切れなくなった年齢の女性」だと思うんです。
男はそれがドラマにならないんですよね。「もう若くねえな」と思うのは、せいぜい四十肩とか胃がもたれるとか。そんな健康面の話、CMにしかならんわ。

映画序盤、「おひとり様」を楽しむ模様は手持ちカメラが多用されます。
しかし、帰宅してからは落ち着いた静謐なカメラワークで「孤独」が表現されます。
実に映画的です。
あと、大久明子でいつも思うんですけど、靴(足元)で人生を垣間見せるのが巧い。
商談で外出する女性上司がヒールに履き替えるシーンとか、あんなの男には撮れない。

そして、温泉ひとり旅で「黒い感情」を露わにしてから、のんのアップが増えるような気がします。

この時ののんが圧巻で、「いい女優なんだ」って本気で思うから。マジで。
おひとり様を楽しむ「仮面」が剥がれたというか、蓋をしていた感情の箱が開いたというか、うまく表現できないんですが、熱演とは少し違う特別な空気を感じたんです。
それから後はもう、アップで捉えるのんの喜怒哀楽が楽しくって。いつまででも見ていられる。正直、ストーリーはもう少し早く切り上げてもよかった気もしますが、のんの顔はいつまででも見ていたかった。
あと、中村倫也の声はいつまでも聞いていたい。なんなら俺、中村倫也みたいな声になりたい。てゆーか、中村倫也に抱かれたい(<何を言い出してるんだ?)

話の本筋は恋に不器用な女性が一人の男性と親しくなるまでの『アメリ』パターンなんですが、単なるガール・ミーツ・ボーイの物語でもないのです。
女性の視点で、先輩(臼田あさ美)、上司(片桐はいり)、親友(橋本愛)という他の女性の生き様を垣間見る物語でもあるのです。
実はこれがキモなんじゃないかな?
つまり、「男女の関係」でも「女同士の友情」でもなく、立場の異なる同性と「少しだけ分かり合う」ことで何かが動いていく。
これが「今どき大人女子の生き方」のポイントなのかもしれません。
(たぶんこれと真逆の旧世代の価値観のぶつかり合いが、山田真帆のクダリだと思うのです)

個人的な余談
のんの親友が橋本愛だなんて、泣いちゃうじゃん。ユイちゃん(「あまちゃん」の橋本愛の役名ね)岩手から一歩も出られなかったんだぜ。それがイタリアにいるんだぜ。感慨深い。

さらに個人的な余談
既存曲の映画使用っていろんな権利関係が複雑で難しいらしいんだけど、これ本当にオリジナル「君は天然色」なのかな?それとも完コピなのかな?
それはさておき、大瀧詠一サブスク解禁してほしいな。日本で最初にCD出した人なんだから、生きてれば真っ先にデジタル音源化したと思うんだよな。

(2020.12.20 テアトル新宿にて鑑賞 ★★★★☆)

監督:大九明子/2020年 日(2020年12月18日公開)

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