【対峙力】人間関係のストレスマネジメント
人間関係にストレスを感じる人は多いと思う。自分もその一人だ。
今回は、「人間関係に対するストレスマネジメント」について書き記しておく。
この記事を読んでくれた人が、これまでの人づきあいを見直したり、今後のための人づきあいを考えるきっかけになればと思う。
心理学におけるストレスとは?
そもそもストレスとは何か?心理学では、ストレスを「ストレッサー」と「ストレス反応」の2つを含んだ概念として考えられている。
一般的な感覚で「ストレス」という言葉を使う時は、「ストレス反応」のことを指しているのだろう。
ストレスは、自分にとって悪いものと思っている人がいるかもしれないが、実は自分の状態が危険であることを知らせてくれる重要なサインなのである。
ストレスのメカニズム
ストレスのメカニズムについて、Lazarus & Folkman(1984)は「ストレス相互作用モデル」を提唱している。「ストレス相互作用モデル」では、以下のような因果関係によって、ストレスを捉えている。
「ストレッサー」は、出来事と言い換えることができる。
評価は、その出来事に対する「解釈」だ。
ストレス反応は、先ほど説明した通り、その出来事に対する解釈によって生じた反応である。
出典:Lazarus, R. S., & Folkman, S. (1984). Stress, appraisal, and coping. New York: Springer.
人間関係におけるストレスを考えてみる
人間関係のストレスは、心理学で「対人ストレス」と言う。
ストレス相互作用モデルで、対人ストレスを考えてみる。
まず、誰かとの出来事について思い出してみる。嬉しかった出来事、腹が立った出来事、悲しかった出来事、楽しかった出来事など、いろいろな出来事があるかと思う。その中でも自分にとってネガティブな出来事(ネガティブ・ライフイベントと言う)は、ストレス反応を生じさせる出来事になる可能性がある。
次に、思い出したネガティブな出来事をどのように解釈したのかを振り返る。例えば、対人ストレスとして「失恋」を体験した場合を振り返る。この時、告白しなければよかった、友人関係に戻りたいといった解釈をする人がいるだろう。
最後に、思い出したネガティブな出来事について解釈した結果、自分が抱いた感情状態を見つめ直す。先ほどの例に挙げた「失恋」を体験した場合は、告白しなければよかった、友人関係に戻りたいといった解釈を結果,後悔,孤独感といったストレス反応が生じるかもしれない。
ストレッサーとなる相手を対峙する
ある人のストレッサーが「他者」である場合は、その人は、人間関係にストレスを感じていると言える。ストレスを感じていても、対処すれば問題ない。
自分は対人ストレスに対処する時、「人間関係は、相手に反応するものではなく、対峙するものである」と考えることにしている。
以下には、人間関係のストレス対処法について紹介する。
人間関係のストレス対処法
合気道
合気道は、相手から肉体的な攻撃を受けるという状況において、自分の重心を定めて、冷静さを保ち、相手の攻撃的なエネルギーを利用して、自分も相手も傷つけずに、その攻撃的なエネルギーを調和する武道だ。
以下の書籍では、合気道の技術によって人間関係のストレスに対処する方法が書かれている。以下に、その方法を紹介する。
2人1組で身体を使いながら、相手とパートナーシップを作る意識を高め、恐怖や不安といったストレスの生じる状況における対処法を身につける訓練だそうだ。
この訓練は、ジョージ・レオナルドという人が提唱している。
訓練の中では、いくつかのシナリオを設定する。それぞれのシナリオで、自分と相手との関係性がどのような形で現れるのかを観察する。その後、当事者間で話し合うそうだ。
訓練では、「攻撃者側」と「攻撃を受ける側」の役を用意する。攻撃者側は「対人ストレスを生じさせる人」とみなす。
それぞれのシナリオでは、組になった者同士が順番に「攻撃者側」と「攻撃を受ける側」の役を演じて、どんな風に感じたのかを話し合う。
以上が合気道の考え方を身につけて、人間関係のストレスに対処する方法だ。
文章にするとわかりづらいため、合気道の動画をいくつか見てもらえると、訓練の意図が理解できると思う。
対人ストレス記録法
対人ストレス記録法は、ストレスに感じる人間関係を意識し、それを記録する方法です。
上記の内容を記録することで、自分が気づかなかったことに気づく可能性を高める。その結果、ストレスが生じた状況をたどり、その時の自分の解釈や感情状態を振り返ることで対処法の手がかりを得ることができる。
ソーシャルスキル
ソーシャルスキルの詳しい内容については,以下の記事が参考になります。
人づきあいは技術である。ソーシャルスキルの考え方では、人間関係を技術的に捉えている。だからこそ、人間関係に悩む人の性格については問題視しない。人間関係の悩みは、性格論ではなく、技術論で考えるのだ。
人間関係は練習次第で円滑にすることができる。人間関係を技術論で捉えれば、自分にとってストレスフルな人間関係に対して戦略的に対処することができる。
先ほど、ネガティブな出来事の例として「失恋」を挙げた。「性格論」で考えると、例えば、失恋した人の性格が悪いから振られたという解釈が成り立つ。しかし、失恋した人の性格が本当に悪かったのか?自分の性格が悪くて振られたんだと思いこんでいるだけではないだろうか。
ソーシャルスキルの考え方では、失恋によってストレスを感じた場合、失恋に対する「見方」や「解釈」の仕方を問題にする。この「見方」や「解釈」の仕方は思考スキル、つまりは「考え方」を意味するのだ。
考え方は学習できるし、変えられる。
失恋という出来事を体験した場合は、どのように解釈しているかを考え直そう。
自分の性格が悪いせいで振られた。
自分がモテないから振られた。
自分に魅力がないから振られた。
上記のような思考になっている場合、自分にとって非合理的な考え方(認知の歪み)になっている。それに気がつけば合理的な思考に変えてみる。自分の「認知の歪み」に気づけば,思考を改善することができる。
あなたのストレスを癒せるのはあなただけ
Lazarus & Folkman(1984)の「ストレス相互作用モデル」を振り返ろう。
ストレス相互作用モデルでは、自分に起こった出来事は変えられないが、「解釈」は変えられる。この解釈に対して、思考スキルを発揮する。つまり、自分にとってストレスとなる人間関係は考え方次第ということだ。
自分の体験に対して、どのように意味づけていくかが大事であり、そこでの思考法が、その後の自分自身を成長させるのだと思う。
人間関係におけるストレスは、あなたの考え方次第で対処することができる。まずは、そのことを知ってほしい。それから、自分自身で対処する方法を身につけてほしい。
「人間関係=ストレス源」ではないはず。「人間関係は考え方次第で薬にも毒にもなるのかもしれない。
人間関係に対する思考や行動のレパートリー(選択肢)を増やして戦略的に対処すれば,人間関係のストレスも上手に対処できるはずだ。人間関係は受け身で反応するよりかは自ら目標を持って対処していくことが求められるのだろう。人間関係に対する積極的な見方が、相手への理解を深め、ストレッサーとなる相手とのコミュニケーションに先手を打つことができる。