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文章が好きなら、きっと好きーnoteで出会い『LEE』で紹介された話
noteは、3年前に始めた。最初の一年は「マレーシア在住のヨガの先生」というだけで、顔も出してなかった。
続けていくうちに、互いに記事を読みあう人たちができた。井上さんもその一人だ。すっきりした無駄のない文章を書く人で、たぶん、私からフォローしたのだと思う。
ただ、noteはほとんどがハンドル名だ。顔も名前もどこに住んでるかも知らない人たちとのやり取りで、やめてしまったらそれっきりだし、ここから何かが生まれるとは思ってなかった。
(小説を書くなんて考えてなかったころの記事)↓
ーーー
小説『ジミー』のクラウドファンディングしたのは一年前。60万円を集めることを目標とした。
200人にPDFの生原稿を渡し、まずは読んでもらうことになった。
「一回読んだ人が、わざわざお金を払ってくださいますか?」
私はその提案に、不安を口にした。全くの無名の人の原稿を読んでもらうだけでも難しいのに、読み終えた人が本を購入するのかしら?
「無理だったら、またやればいいよ」
橘川幸夫さんは、なんでもないように言った。大丈夫だと思っているようだ。
うわわ、、と私は内心思った。
「無理だったら」が急にリアリティをもって聞こえたのだ。
「ジミー出版プロジェクトチーム」の方々と違い、恥ずかしいけど、私は、リアルでの友人はほとんどいなくて、影響力がないのだ。人付き合いは苦手分野だった。
ーーー
『ジミー』のプロジェクトチームは、クラファン用のサイトを作り、読者からの声を集め始めた。それはありがたかったけれど、もちろん当事者である私が一番、頑張らなくてはいけない。
困った私は、noteでお知らせすることにした。1000人以上のフォロワーはいる。
ただ…。ハンドル名しか知らない人たちに言って、聞いてもらえるだろうか?無料での記事を読みあってる関係なのに。
「有料だったら、エイミーさんのはいらない」
そう言われそうだと思う。
「初めて書いた小説なんて、期待できない」
きっと、そう思われる…。
でも仕方なかった。リアルは無理だし、他のsnsは、さらにフォロワーも少なくて100人いないぐらいだった。noteしか頼れない。
私はnoteの人たちに、呼びかけた。
「初めて書いた小説です、クラファンを応援してください」と。
緊張しながら、リターンボタンを押した。
最初、あまり反応がなかった。いいねだけ、少しづつつき始めた。読んでくれたのだろうか。
しばらくして、コメントがきた。それは増えてきた。
「驚きましたが、応援します!」「エイミーさんの本、楽しみです」
「ぜひ買いたいです」
「クラファン初めてだけど、参加します」
今までやり取りがなかった人からも、そんな暖かい言葉が届くようになった。ダイレクトメッセージで応援を表明してくれた人も何人もいた。
私は驚いていた。
素性も知らない人たちだと思ってたのに。
私のことも、なんにも知らないのに?
ーーー
さて、プロジェクトチームの作成したクラファンサイトでは、誤字脱字もそのままのPDF生原稿を読んだ人たちから、応援の声が上がってきていた。
「お名前つき」で感想を掲載するとしたにも関わらずそれは集まり、想いのこもった丁寧なものばかりだった。
「寂しいとき、泣きたいとき、疑いそうになるとき、私は何度も、この物語を読むと思います」
「その時の自分に、必死に生きていたね、と言ってあげたい、そんな気持ちになる物語」
そんな言葉が続いていた。やっぱり、文章のみでしか、私を知らない人たちからの声だった。
ああ、と思った。
私は、応援されていたことに気づいた。
初めてだった、こんなこと。
私は、こんな世界を知らなかった。
ーーー
さて、井上さんは、そのサイトで応援メッセージを読んでいた。そのとき「あ」っと思う。
20数名の応援コメントの名前に、見覚えがあった。職場の人がいたのだ。まったくの偶然だった。その話を聞いたとき、私もとても驚いた。
ーー
去年の9月、井上さんと新宿で初対面した。凛としてすてきな方で、すぐにFBでもつながった。
文章で出会い、偶然でつながり、やっと最後に、リアルで「本名」の彼女に会った。
不思議な話だ。
![](https://assets.st-note.com/img/1679122244213-nvhsOUrVUO.png?width=1200)
たかおみさん、しばたさん、千夏さん、キャサリン、珠子さん、百海さん、オガサワラユウさんと会う。石塚さんが企画してくださった。
その秋、彼女から連絡がくる。
「集英社の『LEE』で、読者ブロガーをしてます。本の特集で『ジミー』を紹介しました。大丈夫でしたか?」
全く予想外だった。
ーーー
『LEE』発売日、本屋さんに走った。雑誌コーナーで、もどかしくページをめくる。『ジミー』の表紙をみつける。彼女の文章があった。
「読み終えたあとは、涙が止まらず」
「忘れていたことや大切にしたかったことを思い出」した、と。
ああ、と思う。良かった。
彼女にとって『ジミー』は大事な作品になったのだ。
私は、彼女の期待にそうことができたのだ。
ーーー
私と井上さんの間には、なんの損得もなかった。
2年前、私はマレーシアに住んでいた。私の文章の「空気感」が好きだとフォローした彼女は、のちに、私と新宿であうなんて思ってもいなかっただろう。
私も彼女が『LEE』読者ブロガーだとは知らなかった。私の本のレビューを雑誌に載せてくださるなんて、まったく期待してなかった。
私たちは、文章を通してのリスペクト以外はなかったのだ。
ーーーー
『LEE』で紹介されたのは、もちろんありがたい。
だけど、本当に私が嬉しかったのは、彼女が『ジミー』を読んで「涙が止まらなかった」と知ったときだ。
私の文章が好きで、期待してくださった人が、思わず泣いてしまったという。
私は、そんな小説を書くことができた。
私は、今も、相変わらず有名でもないし、人付き合いもうまくない。だけど、私の文章を好きと言ってくれる人がいて、その人の心に響くような小説を書けた。
「涙が止まらず」って。
それほどのほめ言葉が、あるだろうか?
私は、自分を誇らしく思う。
ーーー
文章で出会うって特別だ。
顔よりも声よりも先に、その人の文章に出会い、それで好きになるなら、きっと、好きなのだと思う。
言葉は、理屈ではない。身体的なものだ。読むときに聞こえる声は、自分のものと区別がつかないのだから。
ーーー
私は、書いたもので、出会いたい。
立場や損得や駆け引きでなく、ただ好きだという気持ちだけで、何の見返りもなく応援してくださる方たち。なんとありがたいことだろう。
井上さんだけではない。『ジミー』を読みたいと言ってくださった人たち。読んで「よかった」と言ってくださる人たち。
そんな出会いって、あるのだ。
いま、やっとわかる。
書いていて、よかったこと。クラファンして、よかったこと。
本を出して、よかったこと。
人付き合いが苦手でも、ちゃんとしてなくても、他にたいしたことができなくても。
私は、こんなすてきな出会いができる。
私は、こんな風に、人と出会いたかった。
書くことは、希望だ。
こんな風に、出会えるのだから。
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