Take-32:映画『鬼太郎誕生/ゲゲゲの謎(2023)』は面白かったのか?
【映画のキャッチコピー】
『初めて明かされる、鬼太郎の父たちの物語』
【作品の舞台】
舞台設定は昭和31年(1956年)。
水木しげるの貸し本漫画『墓場鬼太郎』がスタートしたのが昭和35年(1960)。
本作『ゲゲゲの謎』はその4年前の設定になっております。
「戦後の混乱期から立ち上がっていく中で、弱いものはどんどん削ぎ落とされていくっていう、ある種恐ろしかった時代」と監督は舞台挨拶で言ってるみたいですね。
また、水木がSL降り立ったモデルは愛知県の定光駅と言われております。
未公開シーンで水木が駅を降り、昭和風ノスタルジックな飲み屋街を歩くシーンや「神隠しが増えている」などといったことをタクシーの運転手から聞くシーンもあるらしく、いずれ特典や完全版などで再現してほしいものですね。
【タイトルについて】
もともとが1933〜1955年に民謡の『子育て幽霊』を脚色した『ハカバキタロー(墓場奇太郎)』(原作:伊藤正美、作画:辰巳恵洋)という紙芝居であり、さらにそれを題材にして1954(昭和29年)に水木しげる先生が描くこととなります。
少年マガジンで『墓場鬼太郎』が正式連載となるのが昭和42年(1967)で──その1年後、TVアニメ化の際に『ゲゲゲの鬼太郎』へ。
「ゲゲゲ」の由来は、原作者水木しげる先生が幼いころに自分の名前を「しげる」と言えずに「ゲゲル」「ゲゲ」と言っていたことから着想されたものといわれております。
【上映時間】104分
皆様、よき映画ライフをお過ごしでしょうか?
𓃠N市の野良猫、ペイザンヌです。
さて『鬼太郎誕生/ゲゲゲの謎』が、早くも4/29(月)からアマプラで無料配信スタートということで今回はこちらを取り上げてみました。
ペイザンヌはこちらも当然劇場で……いや、実をいうと当初、スルーするつもりだったのです。
時は遡り昨年クリスマス前……この『鬼太郎誕生』が公開され一ヶ月ほど過ぎた頃でしょうか。
基本どれだけ周りが騒ごうと自分が興味がわかぬ時はスルーしてしまうペイザンヌ、なのですが……
いや〜ひっさびさに口コミに負けましたね。
「え、そんなにオモロイのか?」とw
絶賛が多い中、少々書きづらいこともあったので感想書けなかったんですが、自分は劇場で観た際もちろん面白かったんスけど「絶賛」まではいかなかったんですよ。
いわゆる口コミにより自分で“ハードルを上げすぎてしまった”のかもしれません。
ただ、もしも何の前情報なく、それこそ鬼太郎の父が主人公であるということすら知らずに観ていた場合……ちょっとぶったまげてたと思っております。
原作漫画である初期の鬼太郎──貸し本時代の『墓場鬼太郎』の第一話へと繋がる本作。なのでラストは既に決まってるわけで……
鬼太郎の父を包帯で巻かれたミイラ男みたいにしなきゃならない。母親もちょっと不気味で妖怪じみた姿にしなければならない
作り手側もそりゃ頭を悩ませつつ、また楽しく「こうしたら面白いんじゃね?」「こうしたらどう」などと、あーだこーだ、いろいろ考えたんだろうなと(実際、かなり難航したそうです)。まあ、うまいこと繋げたもんだな〜と思いましたね。
決めては鬼太郎の父はそんなに強くなくてもいいのではないか?弱いながらも妻を探すことが胸を打つのではないか──ということで物語がピタリとハマったとあります。
ただ難癖を付けるわけではないんですが「完成され過ぎてる」ことがまた逆に引っかかりました。感情に訴えかけてくる──というよりも、なんだろな、どことなく“美しい数式”のような脚本だな──という感覚に陥ったのも確かだったというか(これはこれである意味、“絶賛”ということなので勘違いされぬよう)。ホンットにあくまで個人的な感覚ですけどね😅
多少粗削りであれど訴えかけてくるパワーのある脚本──などとはまた違う種類の気がしたということですね。
個人的ついでにいうと、鑑賞中の心の動き方が、昨年公開されたピクサーの『マイ・エレメント(2023)』の時ととても似ておりました。
というのも、ピクサーもそうですが、まあ作る側はプロ中のプロなので、ストーリー運びは当然、楽しませた後に感動させるのもうまいわけで。そう、あれも凄く良かったん……ですが
「うまいこと感動にもっていくよう、操作されてる気が……」と観てる途中どこかハッと感じ取ってしまう瞬間があったんすよね。
もともとピクサーはめちゃめちゃ好きなのですが『マイ・エレメント』はちょっとこれまでとは違う「あれ?」てのを感じたのも確かなんですよね。良い悪いとかでなく、どちらかといえば「ディズニー・プリンセス」のお話ぽくなってきてるな……という違和感ですね。
うん、ひねくれてますねw
まあ自分の場合、「自分ならどうするだろう?」「こうしたらもっとええんちゃうか」という、どちらかといえば作り手側の気持ちで観てることが多いからかもしれません。これはもう映画学校に通ってる頃からの癖みたいなものなんですよね。
基本、劇場で観てる間の「心の揺れ」で良し悪しを推し量るのですが、ズガンとくる「揺れ」にまでは至らなかったというか。ただ何度も言いますが、とても面白かったし、よくできてるな……とは本当に思いました。
裏を返せば日本のアニメもいよいよあの「ピクサー」に近づいてきてるのでは──と少し思ったほどです。
唯一、夜の墓場で水木とゲゲ郎が酒を酌み交わす場面──あのシーンだけは彼らの台詞、やり取りに心が揺れたのをハッキリ覚えております😊
どの層に向けられて作ったのか──というのは曖昧ではありますが、本作は逆に「子供に見せるにはちょっとためらわれるかも……」というのもありましたね。事実本作はR-12指定ですし、本来であれば子供たちのものである漫画・アニメなのにその辺は少し理不尽だなとも少し思ったり😅
横溝正史風ミステリという触れ込みも大きかったですが、一番怪しくない人物が実は……とか、死んでしまったものが実は……という、むしろ推理小説の曙によく使われていた手法・トリック・展開なので、あくまで「風」という感じで万人に見やすく作られてる感じかな、と。なので斬新さというよりは物語的には王道というかオーソドックス寄りともいえます。
しかしゲゲ郎のキャラにはマジで惚れたというか……これは女子たちも飛びつくよなと😳
なので物語うんぬんというよりはやはり“その人物を追って、見ていたくなる“」「キャラ映画」というカテゴリが一番しっくりくるのかもしれませんね。
まあラストがラストなのでアレですが──続き、彼の活躍をもう少し続編などで見たかったよね……いや、キャッチコピー的に言えば「お主の活躍する未来、この目でもっと見てみとうなった」ってとこですかw──そんなことなど帰り道につらつら考えてましたからね。
もっとも“さらに前日譚”を作る──という手もありますけど😅
いや待てよ……もしも自分が作り手ならどうするだろう……と考えてみたところ
(だったら「鬼太郎」を成長させりゃいいんじゃね?)
──という手があることにも気付きましたね。
鬼太郎がゲゲ郎くらいまで成長した時の話を作ればいいじゃんと。
だとすれば、もう少し近未来の話をにもできるし、SFと妖怪というものをうまく組み合わせられるし……面白そうじゃね?🤔──と。
なんかコレは来るような気がしますぜ。
もし制作陣の方でコレを読んでらっしゃる方がいたら、ぜひ考えてみてほしいところw
あ、そうそう、ポスターにもあるこの台詞というかキャッチコピー、
「お主の生きる未来、この目で、見てみとうなった」
これ、この間ようやくというか、フト気付いたんですけど🙄
「この目で」……
「目」……?
((((;゚Д゚))))ああああ〜!
そういうことか、だから「目玉」なのかぁ!──とw
これ皆さん気付いてました?😂
ボクは全然気づいてませんでした😂
そうかぁ、そういうことだったのかぁ。
いや〜後づけとはいえ、うまい台詞を考えたもんだなぁと、ちょっと感心しちゃいましたわ🤔
さて『ゲゲゲの謎』、コレを観た後、TVで深夜放映されてた『墓場鬼太郎』も改めて配信で全話見ました。ボクは人間のために妖怪退治する鬼太郎より、コッチの雰囲気の方が個人的には好きなんですよね♪
ヒヒヒと笑う座敷わらし的な不気味さ…人間の味方というわけでもなく逆に陥れることもあるし😂
まさに「試験もなんにもない〜♪」て感じの雰囲気がね😁
考えてみると『ゲゲゲの鬼太郎』って『ルパン三世』と同じく、かなりの頻度で新シリーズが作られ、放映されてますからね。「常にそばにいた」感はありますよね🤭
猫娘のビジュアル、萌え化問題などもありましたが……個人的にはあれも嫌いじゃありません、いや、むしろ好きかもw
ちなみにまあ詳しい方には釈迦に説法、モノノケに霊毛ちゃんちゃんこですが──
『ゲゲゲの鬼太郎』の一番新しいシリーズ、シーズン6の【第14話】『まくら返しと幻の夢』の回には映画版とは趣の異なる、お目々クッキリ“イケメンのゲゲ郎”(=目玉オヤジの若い頃)が登場しております。
声はもちろん野沢雅子さんでしたが、なんか『ドラゴンボール』で悟飯を助ける時の孫悟空みたいでしたね😂
今回、劇場版の『ゲゲゲの謎』でこのイケメン顔だったらあそこまでヒットしたかどうか、わからないところであります😏
ゲゲ郎さんの目をちゃんと『θ』にしたスタッフの皆様に拍手👏
興味があれば、このエピソードだけでも見てみてはいかがでしょう☺️
ちなみにこちらのエピソードを監督した古賀豪さん、脚本の吉野弘幸さん──そう、彼らこそ本作『鬼太郎誕生/ゲゲゲの謎』の監督・脚本のコンビなんですよね。
水木しげる生誕100周年、そして「鬼太郎の父親を出すこと」が決まっていたため、このエピソードに関わったこのコンビが選ばれたそうであります。
では、また次回に!