ペイザンヌ

日本映画学校(現・日本映画大学)卒業。X(旧Twitter)でのフォロワー数3300人を超えました、ありがとうございます。 ペイザンヌと申します。映画、そして面白い物語を愛する𓃠野良猫です。 新旧ジャンル問わずの映画の感想を書き続けております。 宜しくお願いいたします。

ペイザンヌ

日本映画学校(現・日本映画大学)卒業。X(旧Twitter)でのフォロワー数3300人を超えました、ありがとうございます。 ペイザンヌと申します。映画、そして面白い物語を愛する𓃠野良猫です。 新旧ジャンル問わずの映画の感想を書き続けております。 宜しくお願いいたします。

マガジン

  • 『シュレーディンガーの男』【小説】(全23話)

    【全23話】事件は起こり、また起こらなかった。蓋を開いて初めて二つの可能性が収束する── 「現在」と「三年後」で進行するタイムリープ型のミステリです。 実際にあった東中野少女監禁事件をベースにしております。

  • 『イシャータの受難』【小説】(全37話)

    猫を愛する人たちに読んでほしい猫目線、登場人物は猫のみの小説です。読み終わったあとに決して後悔させない自信のある──そしてとても思い入れのある作品です。よろしくお願いいたします🙇

  • 絵のない映画館【エッセイ】

    こちらは映画作品の感想ではなく「映画にまつわる個人的な体験や雑記」をエッセイ風に書いていこうかと思っております。 いろんな映画作品自体の感想は、 『あの映画は本当に面白かったのか?』 のタイトルで別マガジンにしておりますのでそちらもよろしくお願いいたします。

  • あの映画は本当に面白かったのか?【映画レビュー&エッセイ】

    新旧ジャンル問わず映画の感想及びエッセイです。 「キャッチコピー」「作品の舞台」「タイトルの考察」「本文」を柱としております。 キャストやスタッフ、あらすじなど、他で検索できるようなことはカットし、できる限り“パンフレット”のようにならぬよう、読みものとして──自分の内面で感じたことをメインに素直に書いていこうと思っております。 よろしくお願いいたします。

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Take-0:ご挨拶&プロフィール

 日本映画学校(現・日本映画大学)卒業。  ペイザンヌと申します。映画、そして映画のみに関わらず「面白いストーリー」全般をこよなく愛する野良猫です。 「映画」というものには本当にずいぶん助けられてきました。  もし映画というものがなかったら私などとっくの昔に死んでるか、はたまた犯罪者にでもなってたかもしれないとフト本気で思うこともありますw  また映画とは人との繋がりでもあります。面識のない人、年齢差のある人、時には性別も超えて、私の場合いつもその人の好きな映画の話をす

    • 『シュレーディンガーの男』【第23話】~【エピローグ】

      二〇二五年現在。二月九日(犯行より三年後) 「以上です」と佐山はアクリルの向こう側の針村に告げた。 「私は非人道的な罪を犯しました。ですが何度も言ったようにこのことを後悔はしとりません」 「佐山さん、差し入れを一箱もらいますよ」と針村はカートンの箱を開け、一本くわえた。電子タバコではない、久しぶりの紙煙草だった。後で誰かに注意されるかもしれなかったがもうどうでもよかった。 「その話を信じろと?」 「まさか。何度も言ってるように信じてほしいとは思っとらんですよ」 「……」 「

      • 『シュレーディンガーの男』【第22話】

        現在より三年前。二〇二二年 二月六日(犯行当日) 「会いたかったよ……嘘じゃない、本当に本当に会いたかったよ。滝谷英明くん」  自転車のチェーン錠で手足を縛り付けシーツで猿ぐつわを噛ませた滝谷を見下ろしながらそう言った佐山の言葉に偽りはなかった。  穂波を誘拐監禁した滝谷のアパートの場所は既にわかっていた。これから起こるはずであろう三年後の未来、娘の死体が発見され何度も報道された東中野にあるこの場所。妻の詩織と花束を手に実際にその現場に訪れたこともあったからだ。その時は自暴

        • 『シュレーディンガーの男』【第21話】

          二〇二五年現在。二月九日(犯行より三年後)   「佐山、面会だ」  静岡刑務所で初犯受刑者が行うのはチラシやはがきなどの印刷作業、及びモップなどの洋裁作業、金属作業などあるが佐山は主に受注の家具などを制作する木工作業だった。 「私にですか? どちらさんで」 「行けばわかる。少し佐山が抜けるぞ。誰か替わりの者!」  急な面会に少し驚いたが、面会室のドアを開けて佐山はさらに驚いた。アクリル板の向こうに座っていたのは針村だった。 「針村さん」 「さすがに少々痩せられたみたいですが、

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        Take-0:ご挨拶&プロフィール

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        • 『シュレーディンガーの男』【小説】(全23話)
          23本
        • 『イシャータの受難』【小説】(全37話)
          37本
        • 絵のない映画館【エッセイ】
          1本
        • あの映画は本当に面白かったのか?【映画レビュー&エッセイ】
          39本

        記事

          『シュレーディンガーの男』【第20話】 箱の中の猫

          「ねえ、ほなみちゃん……こんなにも大切に可愛がってるのに、どうして僕を裏切るようなことをするのかな? 今日は本当にお仕置きが必要かもしれないね……」  穂波は”ほなみちゃん”と呼ばれたその女の子を見ている。女の子は怯えていた。  ほなみ……? 穂波は「私」じゃないか。だけどこの娘は私ではない。私とまったく同じ姿かたちをしているがこの娘は私ではない。けれど……。 (やはり私だ)  穂波は感覚的にそれを理解していた。夢の中ではよくこういった矛盾現象が起こる。私が見ている夢のはずな

          『シュレーディンガーの男』【第20話】 箱の中の猫

          『シュレーディンガーの男』【第19話】

           二〇二五年現在。二月六日(犯行より三年後) 「浅野さん」  「佐山」ではなく母方の姓でそう呼ばれることに穂波はまだ馴染めていなかった。穂波の父親である佐山が起こしたあの事件から今日でちょうど三年、世間では当時「東中野大学生殺人」と称されマスコミを連日をにぎわせた。  事件の少し前から父の様子がおかしかったのを穂波は覚えていた。警察に事情聴取を受け何度も何度も繰り返して話したからだ。聴取といってもドラマでよく見るような怖いものでなく、自宅にやってきた婦警さんにあれこれ質問さ

          『シュレーディンガーの男』【第19話】

          『シュレーディンガーの男』【第18話】

           現在より三年前。二〇二〇年一月二十七日(犯行から十日前) 「引っ越す?」  詩織と穂波、両方が同じことを言って目を見開いた。 「引っ越すって、どこに引っ越すのよ?」 「え~、やだよそんなの! だって学校だって転校しなきゃなんないんでしょ?」 「まあ、そりゃ、なあ……」 「お母さん、やっぱお父さんヘンだよ。今日だってさ本当に学校まで迎えに来たんだよ。しかも軽トラで……私、恥ずかしくて明日友達に顔合わせらんないよ」 「転勤のあるサラリーマンじゃあるまいし。だいたい店はどうすん

          『シュレーディンガーの男』【第18話】

          『シュレーディンガーの男』【第17話】

           現在より三年前。二〇二二年一月二十七日(犯行から十日前)  佐山穂波の通う「桜第一中学校」──その正門の向かいにあるコンビニに入ると滝谷は特に何を買うでもなく他の客に混ざってぐるりと一周物色するような風を装っていた。店内の時計を見る。午後四時。前回「ほなみちゃん」が正門を出てきたのは四時十五分くらいだった。彼女のおおよその下校時間は毎日それくらいなのか、それもチェックしておきたい。微差こそあれど連日同じ場所に通う人間は、蝶が同じルートを毎回なぞって飛ぶよう、大抵が同じ時間

          『シュレーディンガーの男』【第17話】

          『シュレーディンガーの男』【第16話】

           現在より三年前。二〇二二年一月二十六日(犯行から十一日前)  競馬場での当選払い戻しは機械でもできるが、その場合百万円までとなる。それ以上は全て高額当選とみなされ有人窓口まで行き整理券を渡され、しばし待機しなければならない。  初めての体験だった。佐山の心臓は高鳴った。ひょっとすると向こうは全てお見通しで係に当選馬券を渡した瞬間、警察やガードマンに囲まれてしまうのではないかとドキドキしていた。決してインチキ行為をしたわけではないのだが、罪悪感がないわけでもなかった。  や

          『シュレーディンガーの男』【第16話】

          『シュレーディンガーの男』【第15話】

           二〇二五年現在。二月七日(犯行より三年後)   あの忌まわしい事件から三年が過ぎた。  佐山に懲役十六年の判決が下り、刑務所に収容された後、上尾の小料理店をこれ以上存続させる理由もなくなった。女手一人で営業するのも困難だろうし、殺人犯が営んでいた飲み屋に誰が好んで来たがるかも疑問だった。そうでなくともこのネット社会のご時世だ。風評被害、下手をすると嫌がらせに合うことは目に見えて明らかである。なにより娘の穂波にその悪意の矛先が向けられることだけは避けねばならなかった。転校も

          『シュレーディンガーの男』【第15話】

          『シュレーディンガーの男』【第14話】

           現在より三年前。二〇二二年一月二十六日(犯行から十一日前) 「自分は今、恐ろしいことを考えているのかもしれない」佐山は思っていた。それは「間違いでした」などでは決して許されないことだった。何か確証が欲しかった。娘の身に起こったあの未来が、自分が体験したはずのあの未来が、再び、必ず訪れるという確証が。 「いや……」  本当を言うのであれば訪れてほしくなどはない。訪れなければどれほどいいか。しかし起こるというのであれば、それに対し何らかの対策を早急に講じねばならないのも確かだ

          『シュレーディンガーの男』【第14話】

          『シュレーディンガーの男』【第13話】

           現在より三年前。二〇二二年一月二十五日(犯行から十二日前)  佐山は眠れなかった。この二〇二二年という時間に戻ってきて二日が過ぎた。確かに三日前までは──この「三日前までは」という日付け感覚が正しいのかすらわからず、また混乱してきた。佐山は枕もとのスタンドを点け、新聞を手に取るともう一度今日の日付けを確かめる。普通に考えて三日前というのは二〇二二年の一月二十三日のことだ。だが自分にとって三日前というのは二〇二五年。未来を指す。いまだ現実味がない。当然である。「そんなことが

          『シュレーディンガーの男』【第13話】

          『シュレーディンガーの男』【第12話】

          現在より三年前。二〇二二年一月二十三日(犯行から十四日前)  佐山は握りしめた新聞を詩織の顔の前に押し付けた。 「なんたい、こりゃ。こりゃいったい何の冗談かっ!」と叫ぶ。  二〇二二年……三年前? 穂波が生きていた頃の新聞。穂波が行方不明になる前の、「あいつ」に拐われる前の新聞?  こんなものを後生大事に取っておいたというのか。ただ自分を驚かすためだけに? それにしては冗談が過ぎる。いや、そんなはずはない。頭では佐山もわかっていた。まっさらで紙質も真新しい。古新聞のような

          『シュレーディンガーの男』【第12話】

          『シュレーディンガーの男』【第11話】

           現在より二年前。二〇二三年 一月二十二日(犯行から十五日前)    路肩停車中のウィンカー音が車内にカチカチと鳴り響く。その音に合わせ、ワイパーがフロントガラスに貼りつく雨をメトロノームのように右へ左へとかき分けていた。  滝谷は車の中でスマホを見ながら舌打ちをする。  メッセージのやりとりでようやく心を開かせたと思っていた中学三年の女の子からSNSをブロックされたのだ。  やはり「一度会ってみない?」と送ったのが警戒心を煽ったのかもしれない。焦ったのが良くなかったか。まあ

          『シュレーディンガーの男』【第11話】

          『シュレーディンガーの男』【第10話】 箱の中の男

           佐山はまた一人、この小さな部屋の中央に立つ。  娘が突然姿を消してから三年。何度こうしてこの場に立ち尽くしたことだろう。目の前には真新しいシーツがかけられたベッドがある。けれどそこにはもう人の流すわずかな寝汗すら滲むことはない。娘──穂波という主を失い、単なる長方体の無機物となり、それはそこに構えているだけ。だというのに──  まるで儀式のように毎日洗われたシーツは皺ひとつなくぴんと張られ、陽が沈む頃になると再びこの場に真っ白な空間をつくる。  びくびくと──いつ鳴るかわか

          『シュレーディンガーの男』【第10話】 箱の中の男

          『シュレーディンガーの男』【第9話】

           現在より三年前。二〇二二年二月十日(犯行から四日目) 「『今やったらまだ間に合うかもしれん』──」  あえて針村はそこで間をつくった。 「佐山さん、奥さんにそう言ったそうですね」  三度目の聴取である。午前中に佐山宅で妻の詩織からとった供述と佐山本人の当日の行動を照らし合わせる。  針村のその言葉に佐山は黒目だけを向けた。今まで不規則にもそもそと動かしていた体がほんの一瞬静止したのを針村は見逃さなかった。 「これは滝谷殺害当日から九日前、一月二十八日の火曜日のことです。こ

          『シュレーディンガーの男』【第9話】