『シュレーディンガーの男』【第23話】~【エピローグ】
二〇二五年現在。二月九日(犯行より三年後)
「以上です」と佐山はアクリルの向こう側の針村に告げた。
「私は非人道的な罪を犯しました。ですが何度も言ったようにこのことを後悔はしとりません」
「佐山さん、差し入れを一箱もらいますよ」と針村はカートンの箱を開け、一本くわえた。電子タバコではない、久しぶりの紙煙草だった。後で誰かに注意されるかもしれなかったがもうどうでもよかった。
「その話を信じろと?」
「まさか。何度も言ってるように信じてほしいとは思っとらんですよ」
「……」
「