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Take-41:映画『CLOSE/クロース(2023)』は面白かったのか?

【この映画のキャッチコピー】
『永遠を壊したのは、僕』

【作品の舞台】
ベルギーのブリュッセル郊外

    色とりどりのダリアの咲く花畑のロケ地はルーカス・ドン監督の出身地であるベルギーと国境を接するオランダの北ブラバント州ズンデルトで撮影が行われてます。ズンデルトはゴッホの生誕の地でも有名な場所ですね。

映画『CLOSE/クロース』のワンシーン
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【原題】
『CLOSE』

     CLOSEは動詞だと「閉じる」ですが、形容詞になると「クロース=近い」という意味になります。「親友」は「close friend」とも表現され、仲良いの友人との距離感を表現したタイトルですね。また「CLOSE」には「危うい」という意味もありますがそのニュアンスも含まれてるかもしれません。名詞になると今度は「終わり・終末」の意味となります。こう見ると全ての意味が少しずつ含まれてるようにも思えてきますね。

映画『CLOSE/クロース』のワンシーン
映画.com

【上映時間:104分】


 皆さま、よき映画ライフをお過ごしでしょうか?   N市の野良猫、ペイザンヌです。

「映画の良し悪し」とは何ぞやと考えるとそれはスクリーンと自分との距離感なのではないかと時々考えます。

 そう思うとこの『CLOSE/クロース』という映画、「かなり自分に近しい映画だった」──そう思えた人が多かったんではないでしょうかね。日本でも多くの人に受け入れられたのが何よりの証。ボクもやはりその一人です。一昨年2023年の年間ベストでも4位に入れました。
 もちろん主人公の境遇、そして同性の親友に対する想い、その辺りは全く違うんだけれど……やはり近しいんですよね。幾度となく主人公の抱いている感情とピタリと重なり「あれ?  どこかで覚えがあるぞ、この感情……」と痛みを分かち合えたというか。

  何に対してってわけではないのですが、
「あれは自分のせいではないのか?」
「これも自分のせいではないのか?」
「何か謝らなければならぬことがあるんじゃないのか?」
 そんな誰もが持っている「原罪的感情」と言いますか、その辺りのかさぶたを常に撫でられていた気がします。

 ボクはこの映画を観てる間、常に「別の映像」が頭の片隅にぼんやり見えてました。目の前のスクリーンに映ってる映像とは全く別に、撮影現場で行われていたであろう監督と主演の少年たちのやり取りのイメージというのか。

 役者といえども主人公は少年です。
「これはどういうことなの?」
「君はね、今こういう感情なんだよ」
──とまあ、そんなやりとりが必ずあったはず。

 もし自分が演出家であれば、この少年に主人公の状況をどう説明するだろうか?──そんな自問自答を続けておりました。そして「そこで頭に浮かぶ言葉」こそが、この映画の核なんだと思いましたね。

 きっと劇場の観客席にはボクだけではなく、そんな「演出家」がたくさんいたのではないかと想像しております。

 まるで一昨年前に公開された是枝裕和監督の『怪物(2022)』の後日談のような場面からスタートする本作。『怪物』のあの少年たちがもう少し成長し、2人で花畑を走り抜けているようにも思えましたね。
    さらには、その後公開された『シチリア・サマー(2024)』においては本作『CLOSE/クロース』の主人公たちがさらに成長した後日談のようで、製作国は全く違えどまるで三部作のようでした。

   三本とも置かれた状況や周りの同性愛に対する目、また自分に正直になりさえすれば別の幸せもあったかも(あるかも)しれない──そんなラストでしたが、まだまだジェンダー問題においては発展途上であり、ひとりひとりの意識改革が必要ということなんでしょうね。

映画『怪物』のラストシーン
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映画『シチリア・サマー』のワンシーン
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 記憶が正しければ主人公は劇中三度ほどカメラ目線になった気がします。スクリーンの中からこちらを、自分をじっと見つめてくるのです。その度ドキリとさせられるというか。

映画『CLOSE/クロース』のワンシーン
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 ラストシーンにおいても「ひょっとしたらまたこちらを振り向くのではないか」──そう思ったその瞬間、見透かされたようにこちらを振り返り、また目が合います。

 これはもうフランソワ・トリュフォーの『大人は判ってくれない(1959)』のオマージュであることは間違いないでしょう。

映画『大人は判ってくれない』のラストシーン

    主人公を演じる少年が、まあ共性的というか、ボーイッシュ? いやガールッシュ? フト男の子にも女の子のようにも見える時があるんですよね。若い頃のシャーリー・マクレーンぽい感じにも見えてフト思い出したりしてましたな。彼の親友役といえば、こちらはバリー・コーガンが子供の頃など、こんな感じだったんちゃうか?──みたいな子でありました。

映画『CLOSE/のワンシーン』
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 映画は前半と後半にはっきり分かれており、前半は「コミュニケーションの中での孤独」そして後半は「失って初めてわかる孤独」といった異種の孤独を描いていた気がします。そんな中でも時おり主人公は本当に屈託のない笑顔を見せたりもするわけで。

 そんな姿を見てると「常に笑顔を絶やさない人なんかも、ひょっとしたらいろんな過去や、表情とは裏腹の違う内面があるのかもな」……なんて日常生活で触れ合う人たちのことなども少し頭をよぎりましたね。

   では、また次回に!

映画『CLOSE/クロース』のワンシーン
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