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新規事業を成功に導く、SaaSビジネスの「勝ちパターン」

僕はこれまで大手600社以上のDX推進を支援してきました。

その知見を生かして、いまは「スタートアップを量産する会社」を経営しています。この1年で10以上の事業を生みだし、いくつかを法人化しました。

うまくいっているのはどれも、業界のDXを進めるSaaS事業。なかでも「建材業界」や「製造業」に特化したサービスを展開しています。

一見すると旧態依然で、変化が起こりにくそうな業界ですが、僕らは比較的スムーズにサービスを導入してもらえました。

それは、ある程度の「勝ちパターン」にしたがっているからなんです。

狙い目は「業界特化」のSaaSビジネス

まず、これから新しいSaaSビジネスを立ち上げるなら「Vertical=業界特化型」のSaaSビジネスをおすすめします。

チャットツールやバックオフィス業務など、業界や業種を問わず活用できるSaaSビジネスを「Horizontal SaaS」といいます。

これは市場としては大きいのですが、すでにほとんどの分野でプレイヤーが出揃っているため、新規参入するのは難易度が高いです。(SmartHR、freee、マネーフォワードなど)

一方で「その業界にしかない作業工程」や「業界ならではの下請け構造」は、まだ手がつけられていないことも多い。

つまり「各産業に特化した業務」をDXするサービスなら、新規参入で勝てる余地が残っているのです。

Horizontal SaaSに比べると市場としては小さいですが、的確にニーズを捉えて業界トップシェアを狙っていけば「高単価かつ売れる事業」をつくることができます。

基本の勝ちパターン:業務のDXから、業界のDXへ

SaaSビジネスの立ち上げには、理想的な「型」があります。

僕らは基本的に、以下の3つのステップに沿って事業のロードマップを考えています。

ステップ1:アナログ業務の排除(紙・属人化・Excelなど)
ステップ2:情報収集コストの削減・顧客情報のデータ化・営業支援
ステップ3:中間プロセスを排除する
(多重下請け構造の是正)

ステップが上がるほど、上位の変革が起こせる

「業務」から「業界」へ、徐々にDXの幅を広げていくイメージです。

いきなり業界の構造をガラッと変えようとすると、反発が起きてうまくいきません。まずはいちばん影響の小さい「アナログ業務の排除」を入り口にします。

しかし、ただデジタル化するだけでは価値を感じてもらいづらい。そこで「顧客情報のデータ化・営業支援」や「情報収集コストの削減」などの機能を組み合わせて事業を開発し、ツールの導入に漕ぎ着けます。

このとき、営業やマーケなどの「売上に直結する価値」を示すことができると、より受け入れてもらいやすいです。

そして最終的なゴールは、多重下請け構造をなくすこと。中間プロセスを排除し、業界構造そのものを変えることを目指して、事業をアップデートしていきます。

小さなことから「デジタル化すると便利になる」体験を積み重ねていくことで、徐々に関われる範囲を大きくしていくのが理想です。

ここからは上記の「3つのステップ」それぞれについて、基本的な考え方と代表的な事例を紹介します。

ステップ1:アナログ業務(紙・属人化・Excelなど)の排除

企業の業務プロセスを深掘りしていくと、紙やExcelなどで実施されている非効率な業務がいまだに残っていることが多いです。小さな組織ならまだしも、大きな組織でそういった業務があると、見逃せないコストになってきます。

▼ アナログな業務の例

  • ドキュメント共有(設計図面・契約書・見積書など)

  • 稟議・決裁(ハンコ含む)

  • 在庫管理・商品データ管理

  • 社内問い合わせ・マニュアル管理

  • 人事情報・キャリアデザイン・入退社手続き

  • MTG・議事録

  • 見積もり書や契約書の作成

特に、その業界の業務を進めるうえで重要なデータがアナログ管理されていると、大きな価値を出すチャンスです! (例:建材業界の紙カタログ、製造業界の図面データetc...)

【事例】SmartHR

この形の代表的な事例としては、SmartHR。言わずと知れた、人事労務の業務を効率化するサービスです。

これによって、従来は紙でいろいろと記入しなくてはいけなかったものが、スマホで一瞬でできるようになりました。毎年みんなが苦労する年末調整も、SmartHRをつかえば3分でおわります。

手間が減るだけではなく、まちがいを減らし、ペーパーレスで最新の情報を蓄積することができるようになっています。

ステップ2-1:情報収集コストを削減する

DXすべきアナログ業務の目星がついたら、ステップ2に移ります。

単なる「アナログ情報のデジタル化」だけではなかなか価値を感じてもらいにくく、お金を払ってツール導入してもらえるかは微妙です。

そこで、実利に繋がるような付加価値をつける必要があるのです。

方法のひとつは、デジタル情報を収集・整理して、顧客に提供すること。

大量の情報がデジタルで閲覧できるようになれば、たしかに便利です。しかし一方で「情報が多すぎて判断ができない」というデメリットも生まれます。

そこで、デジタル情報を集約・整理して、お客さんが求めている情報に変換して送り届けるサービスが必要になるのです。

顧客の情報と、商品・サービスの情報を一つに集約し、レビューやレコメンドなど「人の意思決定を支援する」機能を付加価値として提供する。

代表的な例としては、価格.com、じゃらんなどの旅行サイト、食べログ、キュレーションメディアなどがあります。

【事例】FORCAS

toBサービスの事例として「FORCAS」というサービスを紹介します。

FORCASは、データ分析に基づいて「成約確度の高い企業」を特定し、マーケティングと営業のリソースをターゲット企業に集中させるためのサービスです。

Web上に掲載されている会社情報などを収集・整理することで、営業の意思決定につながる価値を提供できるようになっています。

ステップ2-2:顧客情報のデータ化・営業支援

サービスに付加価値をつけるもう一つの方法は「営業の効率化」につなげることです。

営業に力を入れたくても「どの顧客情報が、どこにあるのかわからない」「紙で保存されていて、見つけ出すのに時間がかかる」と困っている会社は多いです。

顧客情報は、会社のなかでも特に重要な資産。これを有効活用できていないと、大きな機会損失を生んでしまいます。

そこで、顧客情報のデータ化と活用によって価値を生み出していきます。

まずはSFA(Sales Force Automation)やCRM(Customer Relationship Management)などのツールをベースに、顧客情報をデジタル化します。

そして、下記のように活用をしていきます。

・現在の進捗など、必要な情報を一目で把握することができる「顧客情報管理」
・必要な情報を紐づけて管理することができる「案件管理」
・商談の進捗が一目でわかる「商談管理」
・スマホで名刺を撮影するだけで、名刺情報がテキスト化され登録される「名刺デジタル化」
・蓄積された顧客や案件、営業活動データ、基幹システムの売上やWeb解析ができる「顧客情報分析」

出典:https://liskul.com/cti-crm-30930

ポイントは「顧客データをどのように活用すると、売上に繋がるのか?」という視点です

データはデータ単体では価値を生み出せません。データをどう活用して、価値に変換するか? それがいちばん重要なポイントなのです。

【事例】 KARTE

この領域では、Salesforceがいちばん有名だと思います。ただ、せっかくなので今回は、日本の企業をご紹介します。

PLAID社が提供している「KARTE」というサービスです。なかでも「KARTE Insight」は、顧客の過去からいままでの行動を時系列で見ることができます。さらに、その体験を動画で確認することも可能です。

これまでは、Web上で申し込みをしてくれた人が、なぜ購買まで至ったのかをデータで判断する方法がありませんでした。

しかし「KARTE Insight」を使えば、購買体験の文脈を直感的に知ることができます。気持ちの高まりやモチベーションの変化など、細かな機微に気づき、より顧客に寄り添ったサービスの設計、改善が可能になるのです。

ステップ3:中間プロセスを排除する

ここまでクリアすれば、サービスの導入には漕ぎ着けるはずです。導入後はサービスを改善しながら、徐々にDXできる範囲を広げていきます。

最終的なゴールは「中間プロセスを排除する」ことです。

SIer、建設、商社、人材のような業界では、発注元と最終受託会社のあいだに、下請け会社が何層もある「多重下請け構造」が常態化しています。

すると、このような課題が生まれます。

・最終的な価格が、商品の本来の価値以上に高額になる
・商品ができるスピードが遅くなる
・下請けへ伝言ゲームのように依頼をくり返すうちに、顧客からの要望とズレたものができてしまう
・下請け会社で働く人の賃金が低くなる

もちろん、すべての下請けが悪いというわけではありません。しかし、下請け構造によってこのような課題を抱えている場合には、DXによって中間プロセスをなくしたほうが、みんな幸せになれるはずです。

解決策としては、発注元(もしくは元請け)と最終受託会社をダイレクトにつなぐプラットフォームをつくること。

これがいちばん難しく、クリアすればいちばん効果の大きいDXの方法です。

いままでは「どの受託会社に依頼すればいいか?」という情報はブラックボックスになっていて、発注者が判断するのは難しい状態でした。

しかし、デジタル化した情報とプラットフォームがあれば、依頼する会社を発注者が自由に選ぶことができます。

すると介在価値のない「中抜き企業」のようなものは成立しなくなります。業界の構造が改善され、真に付加価値の高い企業だけが生き残っていく。DXによって、業界全体をアップデートできるのです。

【事例】クラウドワークス

クラウドワークスは、オンライン上で「在宅ワーカー」と「仕事発注者」のマッチング、業務の遂行、報酬の支払いまでを一括で行うサービスを提供しています。

これまで、企業が仕事を発注したいと思ったときには、専門の会社に発注し、さらにその下請けとして、個人の技術者に動いてもらうしかありませんでした。

それがクラウドワークスによって、中間プロセスをすっ飛ばし、個人に直接依頼できるようになったわけです。

以上が、SaaS事業を成功させるための3つのステップです。

今後はぜひ、記事に載せた以外のSaaS事例も調べてみてください。「このサービスはどの型を使って価値を出しているのか?」「これを自分の業界に転用するとしたらどうなるか?」を考えてみると、事業へのヒントを得られるはずです!

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