HSS型HSP気質の自分を支える本。愛読書とおすすめ
これまで、自分の心を守るために
フィクションには"優しい世界"を求めている
という話をしてきました。
前回は心が疲れているときに観ると元気の出る映画の話でした。今回は書籍…のつもりで、色々と振り返ってみたのですが。
今まで読んだ本の中でこれが好き!というものを選んでみたときに、何が自分の心に刺さったのかを言語化するのが少し難しかったんですね。
本の場合、読むのにそれなりの時間と労力が必要です。
2時間観るだけ(というと語弊がありますが)の映画のように、明るくてハッピーな気分になれるものを単純にセレクトするわけにはいきません。
タイパなんて少し寂しい言葉が持て囃されるこの現代社会で、ぜひ読んでほしい(=時間をかけるに値すると自分が考えている)本を提示することは、少なくない勇気がいります。
なぜその本が好きなのか、どこに魅せられたのか。
単純に「面白かった」だけじゃない何かを考えたとき。
自分の好きな本には自分にとっての理想がある、ということに気付きました。
HSPな自分が求める優しい世界とは
これまで散々、自分の心を守るためにせめてフィクションの世界は優しくあってほしい、という話をしてきました。
では優しい世界とはなんでしょう。
悪人が出てこないこと、暴力がないこと、理不尽がないこと。
優しい世界と聞くと、だいたいのイメージはこんなところかと思います。
でも、ストーリーを盛り上げるためには暴力はともかく、悪役は必要。明確な悪役はいなくとも、抗えない過酷な運命に立ち向かい、困難を乗り越えて成長するのが主人公ですよね。
ハリーポッターしかり、十二国記しかり。
自分もまたそんな物語を夢中になって読んできました。
じゃあ"優しい世界"ってなんだろう。
自分はどんな世界を期待しているんだろう。自分にとって理不尽とはなんだろう。
そう考えたとき。
自分は、せめてフィクションでは努力や誠意を踏み躙られたくない、つまり
努力や誠意が報われる世界であってほしいと願っているのだと気付きました。
努力が報われる世界なら嬉しいし、努力が報われなくとも諦めない主人公には強い憧れを抱きます。
そんな自分が、今までの人生でベストは何かと聞かれたならば。
私は迷わずこの作品を挙げます。
獣の奏者(闘蛇編・王獣編)
『精霊の守り人』シリーズで有名な上橋菜穂子氏の長編ファンタジーです。
守り人・旅人シリーズはもちろん素晴らしかったし『鹿の王』もよかったですが、自分にとってのベストは『獣の奏者』。しかも最初に出た闘蛇編・王獣編の2冊です。
後から追加で出版された探求編・完結編については、自分はない方が物語の広がりがあると感じました。(作者としては当初2冊で完結していたものを、担当者さんから是非続編を!と泣きつかれて…という経緯が記されていました。もちろん後半の2冊も面白かったのですが、自分はない方が好みです。)
この作品、主人公は結構過酷な人生を歩みます。
フィクションには優しい世界を求めていると散々主張してきた自分が、なぜこんな過酷なストーリーに心打たれたのか。
それはおそらく、永遠に分かり合えない他者を分かろうと努力し続ける主人公の姿に感銘を受けたから。
毎日無意識に神経をすり減らしているHSPタイプの人はきっと、何も言わないでも労り合える世界を理想としていると思います。
でもそれは現実では不可能なこと。分かり合うためには努力が必要だし、努力したとて完全に分かり合えることはありません。
そしてそのことにしょっちゅう絶望して疲れてしまうのがHSPあるあるだと思います。(違ったらすみません。自分だけかも)
そんな、疲れて嫌になって投げ出したくなるような(でも社会で生きていく以上逃げられない)現実に、淡々と向き合っていく主人公の芯の強さに憧れるんだろうな。
あとは表現力の凄さ。
同じ日本語を使っているはずなのに。こんな簡単な言葉で、たった数行で。ここまで視覚・嗅覚に訴える情景を描けるのかと圧倒されました。
特に冒頭。たった数行で浮かび上がる情景。
これから迎えるであろう波乱を予感させる遠雷をバックに、母の確かな愛とささやかでも温かい子供時代をしっかりと伝えながら、その行間には否応なしに幸せの終焉が漂います。
なぜこれほどの情報を、僅かな文字数で表すことが出来るのか。五感全てに訴えるような文章に、何度読んでも鳥肌が立つ…。
冒頭で理不尽に母を奪われた少女は、その波瀾万丈な人生の中で、決して人に馴れず、馴れ合ってもいけない生き物に惹かれていきます。
人と獣。
言葉も通じない、全くの異質な存在。
それでも主人公は理解しようと努力を研究を重ね、やがて寄り添って生きるように。
しかしやはり人は人、獣は獣です。
獣としての本能の前に、人として決断しなければならない時がやってきて。
築かれた絆はあっけなく砕け散ります。
それでも。
やはり異質なものと分かった上で、それでも寄り添って生きようとする主人公。
決して届かないあちらに手を伸ばし続ける彼女に。応えようとする大きな存在に。
自分のこれまでの努力なんてちっぽけなものだなぁと圧倒されました。
大きな何かに触れてしまった、そんな気がする壮大な物語。
どうせわかってもらえないといじける度に。
自分は一体どれだけの努力をした?そもそも分かり合えないことが当たり前なんだ、と思わせてくれる作品です。
間違いなく人生のベスト。
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さて、次は「皆が努力していて、その努力が報われる」世界。
誰かの笑顔のために頑張る人ばかり登場する、HSPさんにとって天国のような物語です。
魔道具師ダリヤはうつむかない
小説投稿サイト、小説家になろう発。
なろうを読む方なら絶対に知ってる有名作。ついに2024夏アニメに登場しましたね。
というか、作者の甘岸久弥氏はこれが処女作って本当ですか!?こんな才能、隠してちゃダメですよ!!
こちらも確かな文章力でしっかり読ませてくれる作品。ラノベとは思えません。というか十二国記のように、文庫版を出版してほしい。。だってラノベの単行本って高いし絵が邪魔だから…
いや、なろうで読めるんですよ。ありがたい(そしてあり得ない)ことに無料で。
でもやっぱり好きな本は手元に置きたいじゃないですか。そして書籍版で描かれる父さんの思い、数ページだけど絶対に見逃せないじゃないですか。
そしてスピンオフというか、アナザーストーリーというか、親友ルチアサイドの話も気になるじゃないですか。
というかこんな素敵な作品に対価を払わないことが申し訳ないじゃないですか。
だから買います。電子書籍じゃなくて本で欲しい派。
でも、ほんと個人的な意見なのですが、いい大人なので絵がついてるの買い辛いんです。
あと、せっかく仕事に邁進する自立した女性の物語なのに、絵が幼いのが納得いかない。
いや、ルチアは童顔って設定だからわかるけどさ。表紙絵の双子18歳って…。12歳くらいに見えるよ。
ダリヤさんの方がアニメ化するときも、主人公が10代じゃないから視聴者に受け入れられるかどうか心配…みたいな話があったのですが、自分はアニメに詳しくないのでよくわからないんですけど、大人の女性が主人公だと受けが悪いものなんですかね?
せっかく素敵な作品なのにわざわざ幼くしないといけないのなら、勿体ない気がしてしまいます。(個人的感想ね)
おっと、だいぶ話がずれてしまいました。
さて、この作品がHSPさんにとって心地いいものである理由ですが
①みんな誰かの笑顔のために仕事をしている。
②高潔な人物ばかりで理想の上司がたくさんいる
③努力は報われ、誠意は誠意で返される
④完璧な人間はいない。失敗も後悔もあるけど、それを乗り越えて前を向くストーリー
ですかね。
まず①ですが、これは最高ですよね。
それぞれが天職といえる仕事と出会い、自分の仕事に誇りとやり甲斐を持っています。誰かの笑顔のために動き、その思いがぶれない。
また自分の仕事が好きで大切だから、他人の仕事にも敬意を払います。
もうこの段階で理想すぎる。そしてそんな彼女達を支える理解ある上司達。②です。
この作品、ラノベにしては珍しく中高年の活躍が華々しい。50代現役のイケオジがわんさか出てくるし、なんならベルニージ様は70代で現役の騎士に復帰します。かっこよすぎる。
騎士が多く登場するからかな。③みんな高潔で誠意には誠意を返してくれます。かっこよすぎる。
で、そんな酸いも甘いも知り尽くした人生の先輩達にも苦い過去はあるわけで。
あの時こうすれば。なぜあんなことを言ってしまったんだ…なんて、生きていれば誰しも必ずありますよね。
もう取り返せない過去を悔やみ、それでも歩まねばならなかった人生。そこにそっと寄り添う主人公の控えめな優しさ。
④過去から未来へ、再び前を向けるようになるストーリーに涙し、爽やかな読後感に明日も頑張ろうと自然と思えるようになります。
主人公もヒーローも20代ですが、周りの大人達と比べるとまだまだ成長途中。一生懸命働いて学んで、悩んで。
完璧な人間なんていません。みんな努力して、一生懸命もがいています。もう共感しかありません。
いや完璧じゃないですか。
優しい世界はここにあった。
この作品、異世界転生ものづくりファンタジーと銘打たれていますが、立派なヒューマンドラマです。(なお飯テロあり。)
漫画やアニメも良いですが、本作の魅力は文章にあると思うので、読書好きでまだ未読の方がいらしたら是非おすすめしたい本です。
ふぅ、長くなってしまいました。
なんかうまくまとまらなかったけど、こんなわけでHSPな自分が大好きな本についてでしたー。
最後まで読んでくれた方いたら本当にありがとうございます!
なにかいいことがありますように⭐︎
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