ひろジーサン

神戸を拠点に、ときどき信州、たまにイタリア。    アートのある暮らしを考える お気楽アートサポーターです。 アートな話題にプラスして、サッカーと 料理を愛するジーサンの日常をお送りします。 http://www.paxrex.jp/

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最近の記事

すごいね! ルッカ・コミックス

 水曜日に始まったルッカ・コミックス。万聖節で祝日の金曜日から観客が一気に増えました。4km余りの城壁に囲まれた小さな街に、数万のファンが集まってコスプレを競い合う。その熱量は想像以上です。  城壁から入ってくる門の近くにあるチケットオフィスやインフォメーションで行列。ニンテンドーやバンダイ、NETFLIXやMARVELスタジオなど人気のブースでまた行列。どこもかしこも大賑わいです。子どもから大人までそぞろ歩きを楽しんで、美食のルッカ料理を味わって帰るのでしょうね。  戦

    • ルッカ・コミックス2024 始まる

       ヨーロッパ最大のアニメやコミックスのイベント、ルッカ・コミックスが10月30日に始まりました。朝早くからアパートの前の道路を思い思いに仮装したコスプレイヤーたちが、お目当てのブースへぞろぞろ向かっている。静かな街が一転にぎやかに変貌。3日までの5日間、人でごった返すそうです。  4~5日前から城壁の内部、チェントロの広場や公園にパビリオンや展示物の設営が始まっていました。でもこんなスローペースで間に合うのか、といぶかっていましたが、そこは『最後はなぜかうまくいくイタリア人

      • 身体→家→社会→宇宙

         大阪中之島美術館で開催されている、塩田千春の「つながり」をテーマにした個展が素晴らしい。赤いロープと赤いドレスが高い天井からいっぱいぶら下がった空間を、縫うように抜けていくと展示会場にたどり着く。塩田は他者とのつながりについて、35点余りの作品と映像でアプローチしている。  骨格標本や臓器の模型が赤や黒の糸で結ばれている。ミクスト・メディア作品『他者の自分』はちょっと怖い。けれども他者との「つながり」を考えるには、まず自分自身を知ることから始まるのだ。ベースに身体があり、

        • 記憶を追う。存在を追う。

           「生きることとは何か」、「存在とは何か」を問い続ける塩田千春。大阪出身、ベルリンを拠点に活動するアーティストの大規模個展が、大阪中之島美術館で開催中です。赤い糸、白い糸を使った圧巻のインスタレーションは鳥肌もの。言葉を失ってしまった感動を、さて文章化できるでしょうか。  室内を覆う白い糸の塊。高さ6m×幅12.9m×奥行き30.5mの大きなインスタレーション『巡る記憶』です。蚕の繭に入ったような、神経細胞ニューロンが張り巡らされた脳内のような不思議な懐かしさにあふれている

          キャラクターは現代の「もののけ」?

           「もののけ」とは人に憑りついて祟りをする、死霊、生霊、妖怪の類。昔は陰陽師が活躍し、僧侶が加持祈祷をして退散させたという。京都にはそんな文化の名残が街角に息づいている。村上隆は現代人の欲望や悩みに向き合い、多くのキャラクターを産み出し操り、現代人の心を揺さぶってきます。  1993年に誕生したDOB君をはじめ、お花(フラワー)やパンダ、カイカイとキキなど、村上のキャラクターたち。疫病やら戦争やら、困難が絶えないこんな時代に、いつも明るく可愛く笑っているキャラクターこそ妖し

          キャラクターは現代の「もののけ」?

          真夏に観る、もののけ京都

           京都市美術館の開館90周年記念『村上隆 もののけ 京都』展。やっと終了間際に観に行きました。しかも大型台風が近づいているタイミングで。入口で迎えてくれるのは「阿形(あぎょう)」と「吽形(うんぎょう)」の仁王像。展覧会場に仏敵(美の敵)が入り込まないよう守護してくれています。 「もののけ」も、「京都」も、日本画出身のアーティスト村上隆には親しみ深いテーマに違いない。最初の展示室には巨大な『洛中洛外図』。躍動するいろんな人物に混ざって、村上が生み出したキャラクターたちがそこか

          真夏に観る、もののけ京都

          キース・へリングが戦ったもの

          1958年にペンシルベニア州で生まれ、1990年エイズにより31歳で亡くなる。キース・へリングは1980年代のわずか10年ほどの活動期間だったが、NYを中心に世界のカルチャーシーンを牽引したスーパースターでした。彼がいちばん輝いていた時代を思い出させてくれる展覧会へ行ってきました。 彼の出世作はNYの地下鉄構内にあるポスター展示スペースの黒い空き枠に、チョークで描いたシリーズ。「アートはみんなのために」の信念で富裕層や知識人だけのものだった美術を、誰もが目にすることができる

          キース・へリングが戦ったもの

          ゴジラ、戦後の焼け跡に追い打ち

          戦争に敗れ焦土と化した東京。そこに追い打ちをかけるように出現した怪獣ゴジラ。キャッチコピーで「戦後、日本。 無(ゼロ)から負(マイナス)へ。」を掲げる新たな名作が生まれました。『ALWAYS 三丁目の夕日』や『永遠の0』を作った、山崎貴監督・脚本・VFXの『ゴジラ ー1.0』です。 心に深い傷を負った特攻帰りの元戦闘機乗り。戦後の混乱期を気丈に生きる女。東京湾に残された機雷処理を続ける元海軍軍人。連合軍占領下の過酷な時代を生き延びるため、焼け跡の掘立小屋でみんな必死にその日

          ゴジラ、戦後の焼け跡に追い打ち

          ナチスから美術品を取り戻せ

          第二次世界大戦末期のヨーロッパで、歴史的建造物や重要な美術品を保護する任務を託された特別チーム「モニュメンツ メン  The Monuments Men」。映画『ミケランジェロ プロジェクト』は、ナチスドイツが略奪したおびただしい量の美術品を取り戻す作戦を描く、戦闘シーンのない戦争映画です。 ルーズベルト大統領の特命で7人の美術専門家が集められ、危険な状況下で任務を遂行していく。激戦の爪痕が残る戦場を転々とめぐり、秘匿された美術品を探し出し、元の持ち主に戻す。ヘントの祭壇画

          ナチスから美術品を取り戻せ

          明日香村と王子動物園

          耳成山、畝傍山、天香久山の大和三山を眺める甘樫丘(あまかしのおか)は飛鳥の中心にある標高148mの緩やかな丘です。蘇我蝦夷と入鹿親子が築いた邸宅(宮殿?)があったところで、彼らが絶頂を極め、滅亡にむかう古代史の舞台。激しい権力闘争の場、明日香村はのどかな田園地帯です。 甘樫丘は思っていたより、細長く広い。万葉集、古事記、日本書紀にうたわれた40種の万葉植物が植えられている全長2.3kmの植物園路を散策。そして石舞台古墳へ向かう。ここは蘇我馬子の墓ではないか、と考えられている

          明日香村と王子動物園

          横尾忠則と言えば、Y字路 です

          2000年に故郷の西脇市から始まった、Y字路シリーズ。自分の過去に深く沈溺する内省的な表現から、場所を変え、表現手法を変え、変幻自在に多彩なバリエーションを生み出しながら、ライフワークとなっていく。 NYのワールドトレードセンターにジェット機が突入した日、TVニュースで大きな衝撃を受けた横尾。翌朝アトリエに入ると、書きかけの作品を見たらビルの瓦礫に見えたという。それ以上は描けなくなって、制作途中でありながらそこで完成とした。それが『暗夜光路 2001年9月11日』です。

          横尾忠則と言えば、Y字路 です

          Y字路、始まりは故郷の西脇

          すっかり横尾忠則の代表作になったY字路シリーズ。始まりは2000年、故郷の西脇市。思い出の場所をレンズ付きフィルムカメラ「写ルンです」でストロボ撮影し、それを現像したら、思いがけない画像が立ち現れたという。いま横尾忠則現代美術館で『横尾忠則 ワ―イ!★Y字路』が開催中です。 かつての通学路の見慣れた景色が、まるで異質な風景へと様変わりしていた。ストロボの光が届く中央の建物は白く現れ、左右に分かれた道は闇へと溶け込んでいく。この写真からインスピレーションを得た横尾さんは、市内

          Y字路、始まりは故郷の西脇

          奈良美智の立体作品を2点

          「粘土を握ってグニュグニュしていたら、おもしろいカタチが出来てきた」と奈良美智さんが語っていました。アルミニウムやブロンズを素材に、こねた粘土をどんと拡大して、白くウレタン塗装を施した彫刻作品。ひとつ目は角川武蔵野ミュージアムの『Peace Head』。高さ約2.5mです。 2Fの角カフェに面して広がる水盤のなかには、頭だけの少女が穏やかな表情で佇んでいます。裏側から見ると、作品名が示すように「PEACE 」の文字とピースマークが穴で刻まれている。ここには挑戦的な眼をして社

          奈良美智の立体作品を2点

          武蔵野でダリのアタマに潜り込む

          『サルバドール・ダリ 永遠の謎 Endless Enigma』という没入アート体験。角川武蔵野ミュージアムの1階グランドギャラリーで、ピンク・フロイドの楽曲が鳴り響く中、ダリのシュールで幻想的な世界に全身を委ねました。イマジネーションを刺激され、独特な世界に没入し妄想する幸せ。 32台のプロジェクターが周りの壁や床にシームレスにつなぎ合わせたイメージを映し出す。ぐにゃりと歪んだ時計や細長い脚の象。聖人や虎や女神の像。青空に浮かぶ深紅のバラ。テレビジョンに映し出された目。脈絡

          武蔵野でダリのアタマに潜り込む

          角川武蔵野ミュージアムを遊ぶ

          JR東所沢駅から歩いて10分ほど。異様な岩塊が見えてくる。隈研吾さんがデザインした角川武蔵野ミュージアムです。建築家が言うように、足元深くにある地層から冷え固まった古代のマグマが地表にせりあがったイメージ。約2万枚の石板で覆われた力強い建造物は、直角の面が一つもない。 中身はというと、知的好奇心を満たす楽しい仕掛けが散りばめられた複合文化施設。図書館・美術館・博物館などを「まぜまぜ」にして、角川が新しく提案するテーマパークです。本棚劇場、EJアニメミュージアム、エディットア

          角川武蔵野ミュージアムを遊ぶ

          麻布台でオラファー・エリアソンを観る

          麻布台ヒルズギャラリー開館記念は『オラファー・エリアソン展』。サブタイトルに「相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」とありますが、正直よくわからん。でもエリアソンの作品は好きで展覧会があるたびに足を運んでいます。話題のスポット見物も兼ねて『テート美術館展』以来のエリアソン。 ギャラリーに入る前にいちばん高層の森JPタワーへ。玄関の吹き抜け空間に吊り下げられた4点の彫刻作品が、まさに『相互に繋がりあう瞬間が協和する周期』。再生金属でできた11面体のピースが繋がりうねって、より複

          麻布台でオラファー・エリアソンを観る