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キャラクターは現代の「もののけ」?
「もののけ」とは人に憑りついて祟りをする、死霊、生霊、妖怪の類。昔は陰陽師が活躍し、僧侶が加持祈祷をして退散させたという。京都にはそんな文化の名残が街角に息づいている。村上隆は現代人の欲望や悩みに向き合い、多くのキャラクターを産み出し操り、現代人の心を揺さぶってきます。
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1993年に誕生したDOB君をはじめ、お花(フラワー)やパンダ、カイカイとキキなど、村上のキャラクターたち。疫病やら戦争やら、困難が絶えないこんな時代に、いつも明るく可愛く笑っているキャラクターこそ妖しく不気味な「もののけ」なのだ、と現代社会を強烈に皮肉っているのでしょう。
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村上は「日本のキャラクター文化が発展し、世界を席巻した理由は、敗戦国の悲哀を抱えた日本人の魂の震えが共感を呼んでいるのだ」と言う。難しいことは分かりませんが、いま世の中の根底に流れている不穏な兆しや死のにおいを、アーティストは敏感に捉えているのかもしれません。。
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びっしりとドクロで埋め尽くされた『鮮血を捧げよ』。「お花」をモチーフに人間の煩悩の数に由来する108点のトレーディングカード。「Murakami. Flowers Collectible Trading Card 2023」を絵画にした作品シリーズと比べながら見ていると、明と暗、生と死・・・表裏の関係のようで面白い。
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出口から庭園に向かうと、池に金色の巨大な作品が浮かんでいる。しかもルイ・ヴィトンのスーツケースの上に立っている。『金色のお花の親子』。ここは絶好の記念撮影スポットになっていました。まさに時代を象徴する消費社会のシンボル。このお花(Flower)は、トーゼン金色でなきゃあね。
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キャラクターは現代の「もののけ」。DOB君の本名は「ドボシテ ドボシテ オシャマンベ」だそうです。漫画『いなかっぺ大将』と由利徹のギャグを意味なく合体させた造語で、「DOB(ドブ)」はローマ字表記の最初の3文字に由来。「どうして?」と、笑顔で我々の心を揺さぶってくる。