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年間5万個売れるスイーツの商品開発について
こんにちは!
パティシエの鈴木です。文京区湯島でケーキ屋を経営しています。
久しぶりの更新となってしまいました。
今回は商品開発という観点から売れるスイーツとは何か、について書きたいと思います。
当店は文京区の湯島天神からすぐの場所にある洋菓子店です。
名物は「もなかマシュマロ」で、年間5万個を売り上げるヒット商品です。
当店の全体の売上の15%がもなかマシュマロなので、この商品がなかったらと思うとぞっとしますね(笑)
もなかマシュマロの開発に至った経緯はお店のホームページでも紹介しているので、ぜひ読んでみてください。
商品を開発するときは、絶対売れるものを作るぞ!と言う気持ちで構想に取りかかります。
予想通りヒットすることもあれば、全然パッとしないことも勿論あります。
もなかマシュマロを作ったときは、湯島に実店舗を出すタイミングでしたので、これを湯島名物にするんだ、という強い意気込みがありました。
ですが、意気込みがあればヒット商品を生み出せるというものでもありません。
商品開発に関しては、職人としての経験に加えてマーケティングの観点も必要です。
ありがたいことに、品川のホテルにいたときの総支配人がマーケティングのプロ中のプロでしたので、彼の考え方にずいぶん影響を受けました。
よく、彼から言われたことは、自己満足で商品開発をするな、ということです。
自分のやりたいことや、使ってみたい食材が「売れる」商品になるわけではないということです。
では、売れる商品とは?
珍しいもの、とびきり美味しいもの、写真映えするもの、流行ってるもの、これらの条件を満たせば売れる商品が開発できるものでしょうか?
自分が思う売れる商品とは、「顧客が欲しているもの」に尽きると思うのです。
そんなの当たり前じゃないか、と思われるでしょうが、この当たり前が意外と見落とされがちなんです。
具体的に言うと「顧客は誰なのか」が見落とされているな、と感じるシチュエーションが多々あるんですね。
当店の顧客は湯島天神に参拝に来られる方、そして近所にお住まいの方です。
この辺りのマンションの新築販売価格は億を超えますので、会社員の方でもある程度高い年収の方や、経営者が多い地域でもあります。
そういった地域柄や、神社への参拝客が当店の顧客と考えた時に、手土産やお土産に利用する頻度が高いだろうこと、そしてありきたりな焼き菓子よりは珍しいものを好むだろう、できれば湯島らしさがあると喜ばれるだろうと、顧客が欲するものを熟考して開発したスイーツが「もなかマシュマロ」です。
店舗の場所も重要で、当店は上野御徒町から見ると坂の上にあります。
上野御徒町エリアは松坂屋やパルコヤといった百貨店がひしめき合っていますが、
坂の上に住んでいる方がわざわざ往復30分かけて百貨店に手土産を買いに行くだろうか。
もし近くの店舗に手土産にできるような気の利いた商品があれば「買いたい」と思ってもらえるのではないか、と考えました。
もなかマシュマロは、そういった顧客のニーズにぴったりハマり、手土産や帰省時、内祝いなどに選ばれています。
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もし、当店の場所が湯島天神の参道でなく、顧客が湯島の方々でなければ、きっともなかマシュマロではない、何か別なスイーツを作っていたと思います。
もなかマシュマロはありがたいことに多くのお客様に受け入れていただいていますが、商品開発は常に続けています。
G7広島サミットが終わった後、すぐワーキングディナーで提供したデザートをテイクアウト用にアレンジして引き菓子を作りました。
G7広島サミットについてはこちら。
もなかマシュマロがパステルカラーの見た目に対して、G7商品は上品な焼き菓子のイメージです。
接待や重要な催し物の手土産にもふさわしいスイーツです。
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また近々発売する「お米」を使った新商品もあります。
なぜ米なのかというと、米は収穫物の中でも神々に献上されてきた食べ物で、米という漢字が八と十の組み合わせで、末広がりで縁起が良いとされています。
当店のコンセプト「縁起の良い」スイーツの原材料としてぴったりの食品です。
この商品も購入いただく顧客の顔を思い浮かべながら開発しました。
湯島天神もですが、近くにある神田明神に参拝に来られる方にも、きっと喜んでいただける縁起物の手土産になると思います。
こういった商品開発を続けて、一つの商品だけに頼らないことも長く経営を続けていく秘訣だと思っています。
長々書きましたが、気合を入れて作った商品が全然売れない時だってもちろんあります。
めちゃくちゃ美味しいと思っている商品が大して売れないこともあり、美味しければ売れるわけでもないんだな、と。
全部が全部ヒット商品になったら、そりゃ苦労しないですね。
アンテナを張り巡らせて、なるべく凝り固まらず、時代に合わせてうまく変化しながらやっていきたいと思います。
読んでいただきありがとうございました。
2024年9月9日
パティシエ 鈴木 崇志
こちらも経営しています。
オンラインショップ チーズケーキ専門店
パティスリーベル
オンラインショップ ガトーオペラ専門店
クインテットドペラ