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目詰まりした感性を洗われる夜
会社を辞めて5ヶ月が経とうとしている。
昨夜は前職の1歳年上の先輩とサシ飲みへ向かった。
思い返すと退職前、先輩は送別会も行ってくれていて、書いてきてくれた手紙をその場で僕に向けて読んでくれた。そこにはこう書かれていた。
つらくなったらいつでも話を聞くから、これからは友達として。
それから月日が経ちコロナ禍もあり、ようやく会える日が来た。
事前のLINEでは誰か呼ぶ?と仰る先輩。僕からすると少し緊張感のあるという中で提案してくれている。本当に気を遣う方だと再確認する。
僕はサシ飲みを提案させてもらった。そこに第三者が入ることで、変なノリのくだりやボケかましにツッコミなど不要なのだ。ただただ僕はその先輩が今何を考えて過ごされているのかを知りたいだけだ。なんだか仕事して寝る、仕事して寝る、そんな繰り返しの日々で本もろくに読んでないような日常を繰り返していた僕には必要だと思ったのだ。
話したことといえば他愛もないことだ。
それでも先輩がどういう角度で見ているのかと、エピソード一つにしても何を感じているのかを言葉を一つ一つ選びながら語ってくれているだけで聞いていて満たされた。僕よりも遥かに繊細で純度が高い人間性を改めて感じ、僕の中の目詰まりした感性を洗われて、不純物が取り除かれていく。僕はこれを求めてこの人と会いたかったんだと判った。
次第に理屈的ではなく感覚的なことをどのように伝えるかのラリーに発展し、双方にメタファーで理解していることを返す。後半からは「それそれ!」「そうそう!」とラリーが盛り上がっていく。先輩に刺さるように少しカーブをかけたメタファーは外れる。僕はまだまだ修行が足りない。それも見透かされているようにまっすぐまっすぐ届けることを目的とするラリーを楽しめばいいだけだった。
楽しい時間の終わりにはお会計を多めに出してくれる先輩。
これからは友達となったはずなんだけどな。ちょっと会社の話をしすぎたのかな。気持ちは確かに先輩後輩の感覚になっていたな。会社を辞めてもやっぱり関係性は変わらない。
次会うときは、僕の方がもっと満たせる側になれるように。
洗ってもらったこの感性を日常に目詰まりさせないように。