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これでいいのだ。
フランスに移住して5年になるが、
今まで日本人ということで
嫌な思いをしたことがない。
むしろ、日本に対して好印象だと思う。
それはきっと、これまでの長い歴史の中で
フランスに住んでいた、もしくは、
旅行に来た日本の人達のおかげかもしれない。
日本人は、控えめで礼儀正しく、
禅(ZENはフランス語になっている)の心を持ち、
そして、日本は安全で清潔で、
電車やバスは正確に運行する、
〈きちんとした〉国。
たしかに、スタバの席を荷物でキープできたり、
ノートパソコンをテーブルに置いたままで
トイレに行ける国は珍しいし、
子供の頃、10円玉を道で拾って
交番に届けた、という話を
フランス人にすると驚かれる。
そうは言っても、フランスにも
いいなと思うところがたくさんある。
パリは都会といえども、
どこかゆったりしているのも
好きなところのひとつだ。
パリに来てすぐのことだ。
スーパーのレジで
ポイントカードを作りたいと言うと
申し込み用紙を渡され、
その場で書くように言われた。
私の後ろにはたくさんの人が待っている。
焦った私を察してか、
「ゆっくり書いていいんですよ」とレジの女性。
住所やら電話番号やら、メールアドレスやら
やはり慌て気味で一通り書き終わり、
待っている人達の様子を見ると
誰もイライラしていない。
そういえば、
お客さんがレジの人と長話をしていても、
小切手(未だにフランスでは小切手を使う)を
出すのに時間がかかっても、
小銭をあるったけ出して、ゆっくり数えてても
みんな普通に待っている。
郵便局やパン屋さんで並んでいる人達も
本を読んだり、スマホを見たりして
のんびり待っている。
メトロで走って飛び乗る人も
ほとんど見ない。
たくさんの人が行き交うパリでさえ
こんなふうなので、
たまに東京に帰ると、
人の歩く速さや、
コンビニのレジの人の
テキパキすぎる動きと早口に、
私はついて行けなくなる時がある。
レジの順番は一番で
全然待っていないのに、
「お待たせいたしました」と
言われると困ってしまうのだ。
ここ数日、パリは暖かくなり、
夕方、外でワインやビールを飲んで
くつろいでいる人達が多くなった。
カフェが開いていないので、
太陽の下で早めのアペリティフを
楽しんでいるのだ。
でも、あともう少しで18時。
あんまりのんびりしているので
罰金のことが心配になってしまうが、
きっとこの人達の呼吸は
浅くないんだろうなと思う。
そう、これでいいのだ :)
※2021年2月24日現在、フランスは18時以降は外出禁止で罰金が課せられる。